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君のいる風景

おつきさまほしい

作者: 蒲公英
掲載日:2010/09/18

大学時代のサークル仲間からメールがあった。

―修也が結婚するらしい。ひやかしパーティーを開催する。

見なかったことにして、携帯を閉じる。


相手には会ったことがある。

仲間内の飲み会に、何回か顔を出していた。

とりたてて美人じゃないけど、とてもいいこ。

あのこが来た時は修也は二次会をパスして、家まで送っていくんだ。

いつもよりも優しい顔をして、あのこの肩をかばうように帰る。

あたしはいつも、グラス片手にそれを見送るだけ。


あたしと修也はとても話が合った。

音楽も映画も本も好きなものは全部一緒で、だからあたしと修也は

いつでも同じ方向を見ているものだと思っていたんだ。

大学を卒業しても、ずっと。


ご機嫌な時には子供みたいな顔をして笑う。

いいね、その笑顔がずっと見ていられるなんて。

照れた時にはぶっきらぼうになる。

いいね、その横顔を覗き込めるなんて。


ふざけて腕を組んだり、冗談めかして口説いたり、あたしにはそれが精一杯で

修也がいつか、やっぱり冗談のように応えてくれるんじゃないかと

子供みたいなご機嫌な笑顔で、こっちを向いてくれるんじゃないかと

口に出したら友達でもいられなくなるから。

もう、それを願うことも終わる。


裸の街路樹ごしに見上げると、枝が突き刺さってひび割れた満月。

手を差し伸べても、けして届かない凍てた月が白い。

おつきさまほしいと泣く子みたいに駄々をこねてみたい。


おつきさまほしい。

修也が欲しい。

おつきさまほしい。

修也が欲しい。


下を向いたらこぼれそうな涙が、目の上で凍ってしまえばいい。


おつきさまほしい。

修也が欲しい。


大きく深呼吸をして、肺に冷たい空気を満たす。

携帯のフラップを開けて、見なかったはずのメールを呼び出し、返信をする。

―もちろん、出席。シアワセな顔をみてやりましょう。

読んでくださって、ありがとうございます。

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