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#1-1:必ず戻る

初めまして。

本作は、戦乱の世に転生した主人公の話。

なぜ、転生したのか?誰が転生させたのか?そして、家族の秘密とは?

そんな部分にも目を向けていただけると、筆者としては、ありがたい限りです!

長編となりますが、お付き合い・応援くだされば、幸いです!


どうということもない一生だった。


五体満足。健康で、普通に暮らしていけるだけのお金もあった。


唯一の失敗と言えば、この世界に合わせることができなかったことだろう。


家門は、代々続く武術の家系。

その家系の中でも、天才と称された。


けれど、それを生かす機会は、俺に巡ってこなかった。


所詮、武術。核兵器には敵わない。

されど、武術。核兵器なんかより、ロマンがある。


戦がなければ、兵法も使えない。

この世は、俺にとってはいささか、平和すぎたのだ。


異世界転生。

その淡い夢を持ち続けて、もう15年になるだろうか。

気づけば、二十歳(はたち)のボッチ。

妹がいたが、二人とも行方知れず。

父も母も、何年か前に死んだ。


二十歳(はたち)というのは、世迷言をのたうち回れる年齢(とし)じゃないらしい。

全く、世知辛い世の中だ。


二十年。

それが俺の寿命のようだ。

短かったが、悔いはない。

心配してくれる者もいないのだ。

心地よい暗がりに身を委ねる。

「須佐 恭弥よ。後は頼んだぞ……」

薄れゆく意識の中、そんな声が聞こえたような気がした。


「……対象の資格を確認……「運命を背負いし者」の所持を確認……」

「……特殊条件の解放により、「スサノオノミコト」の加護を解放できることを確認……」

「……前世の記憶、および、この空間での記憶を対象から消去……対象を転生させます……」


(……ここは、どこだ)

意識の底から這い上がる感触は、到底、心地よい目覚めとは言えなかった。

脳髄を熱く焼けた鉄の棒でかき回されるような、そんな痛みに必死に耐える。

視界を埋め尽くすのは、泥と血にまみれた陰惨な戦野の光景だった。


伯志文はく・しぶん』。

空白の記憶を埋めるように、見知らぬ記号が脳裏に刻み込まれていく。

赤ん坊として、この戦乱の世に生まれ、武術の鍛錬や兵法の修得に励み、父と母を亡くした、その十五年間の記憶が甦ってくる。

かつて(えい)国で名を馳せた名家、伯家の嫡男で、今は、衛国軍の末端に籍を置く、ただの一兵卒。

残された家族は、二人の妹のみ。


痛みはなくなった。

けれど、ほんの少しだけ、魂が身体に定着しないような、そんな奇妙な浮遊感がある。


「ふぅ……落ち着くんだ。状況を整理しよう」


ここは、東の大国、()国との国境線。

状況は芳しくない。

衛国は敗北し、撤退の最中(さなか)

周囲では、魯国の重装歩兵たちが、散り散りになった衛国の敗残兵を、獲物を狩る野獣のように猛追している。


錆びた鉄のような臭いと、降り続く雨に湿った土の匂いが交互に鼻を刺激する。

「撤退するのが優先だ。ここで、俺ができることは何もない……」


「ガハハッ! 逃げ惑え、衛国の虫けらめ!」

鼓膜を震わせる野卑な咆哮が近づいてくる。

魯国兵の隊長格と思われる男が、重い鉄兜を揺らし、その巨躯を戦車のように押し出した。


「死に晒せぇぇええ!」

振り上げられた大剣が、鈍い光を放ちながら、頭上へと振り下ろされる。


思考よりも先に、身体が動いた。

最小限の動きで、重心を落とし、懐へと潜り込む。

振り下ろされた剣の膂力を、身体の回転で斜め上方へと受け流し、その勢いを利用して、腰の粗末な剣を下から掬い上げる。


「馬鹿なッ……!!」


水が、高きから低きへと流れるかのような、必然的で、無駄のない軌道。

それは、魯国兵の脇腹—―鎧の継ぎ目という、針の穴を通すような隙間へと、吸い込まれるように突き刺さっていく。


ドスッ!

乾いた音がする。命が潰える音だった。

男は自らの巨体に身を任せるように、前のめりに崩れ落ちていった。


「なッ……」「どうする……」

たかが一兵卒。

粗末な剣を携えた無名の男が、自分たちの隊長を一撃で屠った。

その異様な光景が、彼らを躊躇させていた。


速戦即決。

それができない者は、戦場では愚者となる。


音もなく、地を蹴る。

一閃。二閃。三閃。

戦闘。

そう呼ぶには、一方的かつ短時間の事だった。

数分で、その作業は終わった。

剣を鞘に納めた時、周囲には二十名の魯国兵が、一様に天を仰いで、倒れていた。


泥濘の戦場を後にして、帰路を辿っていく。


目立つつもりはなかった。

ただ、どこの誰がその「所業」を目にしていたのか。

一兵卒の武は、瞬く間に、軍内を駆け巡り、ついに王都に座す総大将の知るところとなった。


王都の関門は、巨大だった。

その高さに驚嘆するというより、その威容に圧倒された。

一体、関門に、どれだけの費用をつぎ込めば、こうなるのか。

防衛機能という意味での関門としては、全くと言っていいほどの出来のように思えた。


「伯志文か?」

王都の門兵が、俺の出した木札を見て、尋ねてくる。


俺が頷くと、門兵は、「ついてこい」とでも言うように、踵を返して歩いていく。


辿り着いたのは、戦火の喧騒から一時的に離れた王都の軍議場だった。

「入れ。袁興(えんこう)様が御待ちだ」

門兵はそう告げると、去っていった。

(見られていたのか……穏便に、迅速に済まそう。所詮は二十人。「運が良かった」。これで通すべきだ……)


重厚な幕舎の帳をくぐる。


そこには、衛国総大将—―袁興が、椅子に深く腰掛けていた。

太った腹を揺らし、脂ぎった顔で配下を睨み据えている。


袁興が志文に気づくまで、しばらくの間があった。

それが意図的であるということは、わかっていた。

袁興とはそういう男なのだ。


「おお、来たか。いつ来たのだ?」

袁興が、まるで、今、気づいたとでもいうように、鼻で笑うような侮蔑の視線を投げかける。

「さて……伯志文。武勇は認めるが、一兵卒が軍の秩序を乱すような行為は以後、許さん。身の程をわきまえよ」

袁興は、志文の沈黙を恐怖と受け取ったのか、満足げに続けた。


「そうだな、褒美は取らせてやる。金子を与えよう。そして、貴様の妹二人を、私の侍女として迎え入れるという栄誉を授ける。伯家再興の足がかりとせよ。……感謝するのだ!」


ゆっくりとした足取りで前に進み出る。

それに合わせるかのように、幕舎の空気がゆっくりと張りつめていく。


「……私には、過分な褒章でございます。その褒章、謹んで辞退させていただきます」

自分でも驚くほど、静かで冷たい声が出た。

別にどうということはない。

たった二人の妹なのだ。

引き渡す理由など、どこにもなかった。


袁興の顔が、怒りでどす黒い赤色に染まっていく。

ただの一兵卒。

それも、落ちぶれた名家の生き残りに、衆人の前で恥をかかされた。

それが許せなかった。


「……伯志文!貴様、この袁興の温情を無にするというのか!貴様はただの一兵卒だ!虫けら以下なのだ! 貴様のような不遜な輩、この衛国には不要なのだ!立場を弁えよ!」


袁興の言葉に、答える必要はなかった。

ただ、感情のない一礼を返し、静かにその場を後にする。

袁興が何かを喚いていたが、意に介する気はなかった。


その日の夜。

王都のはずれにひっそりと佇む、伯家の粗末な屋敷に「招集令」がもたらされた。


「伯 志文。貴様を東部戦線、龍牙関りゅうがかんへの緊急徴発兵に任ずる。魯国軍の総攻撃は、既に開始されている。刻限までに合流せよ」


龍牙関。

衛国東部に位置する、魯国との国境沿いの関門。

魯国の五万の重装歩兵を相手に、残兵が最後の抵抗を続けている場所だった。

兵站は断たれ、これ以上の援軍の望みもない場所。


そこに送り込まれる。

袁興による、体裁の整った「死刑宣告」であった。


志文は、戦支度を整えていた。


妹たちを起こしてしまったようだ。

古びた屋敷の中で、揺らめく蝋燭の炎が二人の顔に深い陰影を落としている。


「お兄様……龍牙関は、地獄だと聞きました。兵站は絶たれ、魯国の猛攻が止まらないと……」

今年で十二歳になる月華(げっか)は、ゆっくりと言葉を発した。

泣くまいと必死に堪えているのが、嫌でもわかる。

「勝敗はどちらでも構いません……生きて戻ってきてくだされば、私たちはそれで十分です。私たちには、お兄様しかいないのですから……」

「心配するな」

月華を力強く抱き寄せる。

心地よい温もりが志文の心に広がっていく。


まだ八歳の末妹・雪華(せっか)は、志文の腰にしがみつき、さっきから、泣きじゃくっていた。

「お兄さま、行っちゃダメです! 雪華を置いていかないで!」

まだあどけなさの残る顔。

無垢な瞳に小さな手。

それらすべてが愛おしかった。


「必ず戻る」

志文は、もう一度、妹たちを強く抱きしめると、屋敷を後にした。


志文にとって、そして、長らく変わることのなかった天下にとって、変革をもたらした最初の戦となるのであった。

【お読みいただきありがとうございます!】

次話は、「鼓舞」です!


~これからも、応援・お付き合い頂ければ、幸いです!~

—―—―—―—―【他作品もよろしければ!】

更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!


―――

・「一生を病室で終えた俺、呪いが解けて、天下獲る~貧村に捨てられたけど、"最強"に魔改造します~ 」

「天下を獲る。その果て無き夢を、本気で信じた者だけが見れる景色、それが「天下」だ」


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—――・『奴は元々、最強だった~戦乱を生きた英雄、現代で覇者になる~』

「何が始まりで、何が終わりだったのかはわからなかった。けれど、何かが俺を変えようとして、俺は何かを変えようとしたのだ」


理不尽な運命を、圧倒的な力で覆す!

【戦×無双×成り上がり×天下統一】—―それぞれの思惑が渦巻く世界。その先に待ち受けるのは!?

⇧※本作です。これからも、応援・お付き合いのほど、よろしくお願いいたします!

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