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幼女になった落第聖女ですが、騎士団で女神と呼ばれています〜騎士公爵様がお探しの最愛はすぐ側に〜  作者: 海空里和
第三章 騎士団の小さな女神

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騎士団の小さな女神⑤

「みんな!」


 料理人たちと一緒に救護室へ駆けこむ。


「あ~、リーサちゃんだあ」


 ベッドに横たわる騎士たちが笑顔で迎えてくれるも、その顔色は悪い。


「――っ、聖水を持ってきたわ! 飲んで!」


 わたしは急いで料理人たちと一緒に聖水を騎士たちに手渡していく。


「ありがとう~、俺たちの女神が来てくれたからもう大丈夫だな~」


 辛いはずなのに、冗談交じりで笑ってくれる騎士たちに胸が痛んだ。

 聖水を口にした騎士たちの顔色に赤みがさしていくが、まだ身体は辛そうだ。


「ああ、リーサちゃんのジャムパンが食べたいなあ」


 一人の騎士がぽつりとこぼす。すると、俺も俺もと他の騎士たちが続いた。


「待ってて!」


 それを聞いたわたしは、厨房へと走った。


(パンは夕食用に用意してあるものを温め直して……ジャムならすぐに作れるから)


 厨房に着いたわたしは急いでパンをオーブンに放り込む。お父様製のオーブンは焦がすことなくあっという間にリベイクできるから安心だ。


 わたしは果実が置かれている貯蔵庫を確認する。


(クレイブさんが仕入れてくれたオレンジの残りとレモン……酸味が強いからはちみつを入れれば……うん!)


 わたしはオレンジとレモンを手にすると、作業台に運んだ。大きな鍋に放り込み、手袋をはずす。そしてあっという間にジャムに――


「リーサ! 料理人たちから聞いた! ぼくも手伝うよ…………!?」

「テオ!?」


 急いでいたわたしは、すっかり立ち入り禁止の看板を入口に置くのを忘れていた。テオが目を瞬き、混乱した様子で近付いてくる。


「え? 今の何? 魔法……じゃないよね? だってリーサが触れた途端――」


 見られたからには言い逃れはできない。わたしは踏み台から飛び降りると、テオに向かって頭を下げた。


「わたしの能力なの……! 黙っていてごめんなさい! 気持ち悪いよね。でも、みんなに害はないから! それだけはわたしの命をかけて保証する!」

「……頭を上げてよ、リーサ」


 テオの優しい声に頭を上げれば、あどけない笑顔と目が合う。


「びっくりしたけどさ、全然気持ち悪くなんてないよ。そっかあ、リーサの仕事が早い秘密は能力かあ」


 目をパチパチさせるわたしをテオが覗き込む。


「でもジャムがあんなに美味しいのは、リーサが研究して努力してきたからだろ? ぼくも料理人だからわかる」

「テオ……」


 そうなのだ。果実に触れるとジャムにしてしまうおかしなこの能力を、わたしは活かせるように試行錯誤してきた。すべては優しいブルーベル領民の人たちのために。みんなはわたしの能力をすごいと言って気味悪がらなかった。そして今、目の前にいるテオも認めてくれた。


(王都にもいるんだ)


 領地に引きこもるわたしは、まだ広い世界を知らないだけかもしれない。嬉しいだけでは表現できない気持ちがわたしの中で渦巻く。


「リーサがそう言うってことは、気持ち悪いって言われたことがあるってことだよな」

「うん……社交界で――」


 そう言いかけてわたしは口を噤んだ。それはアリッサの噂だ。


「テオ……お願い。このことは黙っていてほしいの」


 きっとクレイブさんや料理人さんたちは、テオと同じ反応をしてくれるかもしれない。でも騎士は……騎士たちの中には貴族も大勢いる。ましてや魔物討伐のエリート部隊なのだから。

 震えるわたしに、テオはにかっと笑った。


「うん、いいよ。リーサがぼくと結婚してくれるなら」

「えっ?」


 テオのとんでもない条件に、わたしは困惑してしまう。テオはそんなわたしの表情を見ると、ふっと笑みをこぼした。


「……冗談だよ。でもリーサを脅してでも自分のものにしたいと思ってる。それくらい本気なんだって知ってほしい」

「どうしてわたしなの……? まだ子どもだよ?」


 テオがわたしにこだわる理由がわからない。戸惑うわたしにテオがわたしの手に触れる。


「ぼくの夢の実現にはリーサが必要だって言ったろ? 能力のことを知ってしまったら、ますます手に入れたくなったよ」

「……結婚は好きな人とするものじゃないの?」


 わたしの両親は恋愛結婚だ。聖女だったお母様にお父様が猛アタックして結ばれた。貴族は政略結婚が多いと聞いていたけど、わたしは恋愛結婚に憧れている。両親ならきっと認めてくれるし、わたしもそんな人に出会いたいと思っていた。


「ふふ、リーサはしっかりしているのに、そんなところは夢見る子どもなんだね」


 クスクスと笑うテオは、やっぱりわたしが好きなんじゃなくて、この能力がほしいだけなんだ。必要としてくれるのは嬉しいけど、結婚は違うと思う。

 キッと睨んで手を振り払ったわたしを、テオがニコニコと見下ろす。


「リーサは良い子だし、ぼくたち結婚しても上手くやっていけると思う。それじゃダメなの?」

「わたしは好きな人と結婚したいの!」

「驚いた……その年で結婚したいくらい好きな人がいるの?」

「――っ!」


 すぐに浮かんだのはライアン様の顔で。わたしはカッと顔を赤くした。


「そっか……。じゃあ、その人がダメだったらぼくのところに来てよ」

「なんでそこまで……」


 にっこり笑って自身の顔を指差すテオを見れば、彼は笑顔を崩さずに言った。


「言っただろ? ぼくはリーサのこと真剣に欲しいと思ってるって」

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