第52話 学院の同級生
*** パトリック・ブレイスフォード 視点
風の噂で、アンディが結婚する事を聞いた。
相手は以前婚約した、クリスタル嬢なのだろう。
僕は父と一緒に冒険者になった。
最初は戦いに慣れなくて、おっかなびっくりだったけど、三年も経つと慣れたものだ。
元王城の騎士、父の剣術と僕の魔法で魔物を倒す。
周辺の森に僕らの敵はいない。
「近々、アンディ殿下が結婚されるらしい…お前は以前殿下とクラスメートだったのだよな。あの時は、学院を辞める事になって済まなかった」
父が赤ら顔で頭を下げる。
未だに気にして謝ってくるんだよね。
もう三年も経つというのに。
「父上、もうその事は気にしていませんよ」
僕と父は、冒険者ギルド内の食堂で、夕食を食べていた。
当時は確かに父を恨んでいたが、もうその気持ちはない。
あのまま、何事もなく学院生活をしていたら今はどうなっていただろうか。
無かったことを考えても仕方がないことなのだけど。
「あの、パトリック・ブレイスフォード様」
食事も終わり帰ろうとしていた時、ギルドの受付嬢が僕に声を掛けてきた。
声を掛けられるなんて珍しい。
何の用だろう?
「王城から、お手紙を預かっています。ご確認ください」
「どうも…ありがとうございます」
王城から手紙?
次の日の朝、僕は王城へ来ていた。
「思っていたよりも広いな」
騎士に案内されながら、僕は呟く。
王城の中は広くてまるで迷路のようだ。
階段を登り、奥へ奥へと進む。
「呼び出してすまなかったね」
案内された部屋に入ると、聞きなれた声がした。
彼は椅子に座っていて、足を組んで座っている。
「アンディ…殿下」
群青色の髪と水色の瞳は懐かしい。
アンディって本当に王子だったんだなと改めて思った。
「久しぶりパトリック。少し背が伸びたんじゃないか?
突然だが、君さえよければ俺の側近にならないか?」
「は?」
「少し、講習を受けてもらう事になるけど…」
「ちょ、ちょっと待て。僕は魔法学院を卒業すらしていないんだよ?しかも今は冒険者で…一応貴族だけど教養もないし…」
アンディの側近にならないかって冗談だろ?
王子の側近なんて、願ったりかなったりだけど。
「知ってる。出来れば気の置ける人が良いなと思ってさ。パトリックは全く知らない人じゃ無いからな」
アンディの顔は真剣だった。
「パトリック、お久しぶりですね」
見知った長い銀髪が人目を引く。
白いローブを着た深い緑色の瞳の少女が、笑顔で部屋に入ってきた。
「ベル、朝のお祈りは終わったのかい?」
「君は…クリスタル嬢?」
「ええ、私お邪魔だったかしら」
三年経って、クリスタル嬢はますますキレイになったな。
以前からクラスの中で目立ってはいたけれど。
白いローブを着ている所為か、神々しく見える。
「あら、どうしたのパトリック。口を開けて…」
「い、いえ。なんでもありません」
「パトリック、お前まさかベルに惚れたんじゃないだろうな?さっきから何だかおかしいぞ」
「そんな事あるわけないだろう…クリスタル嬢が、綺麗になっていて少し驚いただけだ」
まるで女神さまのようだ。
何故、今まで気が付かなかったのだろう?
学院の時には全く意識していなかったのだが。
「パトリック、顔が赤いわ。熱でもあるんじゃないかしら」
「失敗したな。王城に呼ぶべきじゃなかったか…」
ああ、でもクリスタル嬢はアンディと結婚するんだっけ。
僕の恋は一瞬にして…終わった。
僕はアンディの側近になる事が決定した。
父上に報告すると、かなり驚いていたが喜んでくれた。
王城に勤めて分かった事だが、クリスタル嬢は王城でも人気らしい。
聖女という滅多にない職種。
それにくわえて、彼女の美貌。
100年に一度現れるかどうかという逸材なのだそうだ。
しばらくして、アンディからとある貴族女性を紹介された。
仕事や女性を紹介とか…アンディは親切すぎるだろ。




