第51話 結婚の報告 2
***アンディ・ロードス・ウッドストック 視点
「ずいぶん時間が掛かっているな。一緒に行けば良かったか」
俺は馬車の中でベルを待っていた。
ベルがセレナに結婚の報告をすると言って、洋服店に入ってから一時間は経っている。
セレナの家は女性物の洋服店で、割と繁盛しているらしい。
客が一人、二人、入っては出て…を何度か見掛ける。
ベルは直ぐ戻ってくると言っていたので、馬車で待っていたのだが。
あまりの遅いので、様子を見てこようか…と思い腰を上げたところ。
「お待たせしてごめんなさい」
馬車のドアが開いて、ベルが戻ってきた。
「あれ?」
よく見ると彼女のドレスが変わっていた。
茶色の渋めのドレスから、可愛らしいピンク色のドレスへ。
ふわふわしていて、普段のベルが着ないような華やかな色のドレスだ。
長い銀色の髪に、大きめの青いリボンが付けられていた。
普段の大人っぽい色のドレスも良いけど、可愛らしいデザインのも良いな。
めっちゃ可愛い。
「来る時と、何だか雰囲気変わったよね。さらに可愛らしくなったというか…まるで花の妖精みたいだ」
「お、大げさなんだから…」
ベルの頬が赤く染まる。
俺は堪らなくなり、思わず彼女を抱きしめていた。
「あの…殿下よろしいでしょうか」
御者に声を掛けられハッとする。
思わず、我を忘れていた。
「ああ、すまない。待たせてしまっていたな。馬車を出してくれ」
次は教会だ。
シスターマリーに報告に行くのだったな。
「へえーそうなんだ。そのドレスをセレナのお母さんにプレゼントされたのか」
ベルが少し羨ましくなった。
俺には友人と呼べる人がほとんどいないからな。
唯一、クラスで仲良くなったのはパトリックくらいだったが。
あの事件の後、パトリックは学院を辞めてしまった。
風の噂によると、父のピエールが責任を感じて、騎士を辞め冒険者になったらしい。
騎士をしていたから、苦労はしないだろうが。
元気でいるだろうか?
俺が王子と分かった途端、周りの反応も随分変わってしまった。
変わらなかったのは、ベルとセレナ、パトリックだけだった。
「なあに?考え事?」
「うん…パトリックの事を思い出してた」
「懐かしいね。彼も結婚式に招待したいわね」
「でも、今どこにいるのだろう」
パトリックの父が冒険者なら探し出せるかもしれない。
冒険者ギルドへ問い合わせて訊いてみるか。
しばらくすると、教会に着いた。
今度は俺も一緒に行く事にする。
「あらあら、久しぶりねー」
マリーはベルに抱き着いた。
「結婚する事は訊いたわ。少し、心配してたのよ?早く決まって良かったじゃないの」
周りにいた、シスターや神父が騒めいている。
「ご結婚されるのですか。おめでとうございます!」
「まだ、細かい事は決まっていないのですけどね」
ここにも、ベルの友人がいるらしく話しかけられていた。
三年間、教会に通っていたのだもんな。
俺も剣の学校を辞めずに、剣術を極めていれば…他に親しい友達が出来ただろうか?
一瞬そのような考えがよぎったが、頭を横に振った。
俺は自分の意思で、魔法学院へ行く事に決めたのだから。
後悔はしていない。




