第49話 婚前・・・
「結婚?そんな事すっかり忘れていたよ。婚約したことに満足しちゃって」
「ええええ?」
「うそうそ、冗談だってば」
今夜も私の部屋で、アンディと二人まったりと過ごしていた。
「一番上の兄はまだ結婚していないんだよな。まあ、お相手が他国の王女だからっていうのもあるんだろうけど…俺とベルは何の制約も無いんだから、いつでもいいんじゃないのかな?父上と相談してみるよ」
私の膝の上で寝転ぶアンディ。
寛ぎすぎじゃないかしら。
今日は珍しくお菓子に手を伸ばしていない。
どういった風の吹き回しかな?
不思議に思って首を傾げていると。
「俺がクッキー食べていないのがそんなに不思議?」
思っていることが筒抜けだったみたい。
「だっていつも食べている姿しか見ていないし。甘い物大好きだもんね」
「そりゃ、そうかもしれないけど…たまにはベルにくっ付きたい時もあるんだよ」
アンディは頬を染めて、顔を反らした。
「可愛い」
「か、可愛いのはベルじゃないか。ってもう…」
彼は私に抱き着いて耳元で囁いた。
「ベルは可愛くて、綺麗で優しくて…俺、大好きだよ」
「なっ?」
ドキン!
優しい声色で、囁かれキュンとする。
胸の鼓動が早くなった。
私はそっと、アンディの白い頬に唇を付ける。
彼の事がとても愛おしい。
「私も大好きよ。愛してる」
「ベル…」
私たちは唇を重ね合った。
何度も、何度も。
息をするのも忘れてしまうくらい、長いキスをして―――。
ホーホー。
時刻はすっかり真夜中になっていた。
暗闇の中、カーテン越しに月の光が届く。
燭台の火もいつの間にか消えていた。
「えっと…」
多分、自然の成り行きだったのだろう。
私とアンディは、ベッドの上で重なり合っていた。
「ベル、大丈夫?俺、初めてだったから…痛くなかった?あれ?ろうそくの灯がいつの間にか消えてる…」
「うん。大丈夫よ」
隣で寝ているアンディは、改めて男性なんだなと思う。
キスから先は、全然想像していなかったのだけど。
まさか、致してしまうなんて思ってもいなかった。
「このままここで泊まって良い?というか、眠いから寝させて?」
「別に構わないけど…」
力強い腕で、後ろからぎゅっと抱き寄せられる。
「大好き」
「もう、さっきからそればっかりね」
「だって好きなんだもん。」
そういえば、婚約しているけど結婚前にしちゃって良かったのだろうか?
王族の詳しい事情は分からないけれど。
朝になり、侍女にアンディが見つかった時は凄く驚かれた。
湯あみをさせてもらい…少し遅れて職場に顔を出した。
*
私は今朝、オルデガさんに遅れた理由を話していた。
「婚前行為ですか…ダメに決まっているでしょう。アンディ殿下は仮にも王族なのですから。でもしてしまった事は仕方ありませんね。結婚を早めにやってもらえるように、王に進言したほうがいいでしょうね」
オルデガさんに呆れられてしまった。
そりゃそうよね。
結婚していないのに、妊娠していたらおかしな感じだものね。
「もちろん、結婚式まではしっかりと働いてもらいますよ。それまではしっかりとわたくしをサポートしてくださいね」
最近、オルデガさんが一人でポーションを作っていると聞いたばかりだったわ。
オルデガさんの私を見る目が怖い。
彼も必死なのよね。
数日後。
私とアンディは謁見の間に呼ばれ、王様の前にいた。
謁見の間は、王様に会いに来た貴族が大勢いる。
「アンディ、今回呼んだのは…分かっておるな?話はオルデガから聞いておる」
「はい」
「ふう、致し方ないのう。結婚式は半年後に行うとしよう。あまり派手には出来んが良いな?」
「ありがとうございます」
首を垂れ、私は王様とアンディの話を聞いていた。
結婚式は半年後に決まったわ。
「「おおっ!」」
周囲がどよめく。
「アンディ殿下がご結婚されると!」
「これは大変だ!」
「おめでたいな」
少し気になるのは、未だ王子の中では誰も婚姻をしていないと聞いたのだけど。
心配し過ぎかしら?




