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第45話 王妃様とお茶会 1

「王都フィルナンド建国は、今から200年以上前と言われています」


 王城の一室に臨時で作られた教室。

 広い部屋に簡易的に黒板が設置されて、私とアンディは魔法学院の勉強をしている。

 一か月近く魔法学院をお休みしたので、授業が遅れている為だ。


 今、私たちは王国の歴史を勉強している。

 講師は、何故か担任のラン先生が担当していた。

 紺色の地味なパンツスーツに、金縁の眼鏡。

 黒髪をお団子にして結ってある。


 王城に来てもいつもと変わらない恰好だった。


「折角の学院のお休みなのに、先生はお休みになれないのですね」

「心配しなくても大丈夫よ。十分なお給金は頂いているわ。臨時収入で助かっているの」


 ラン先生が、黒板に文字を書いていく。


「流石に一か月分を教えるのは難しいので、簡単に要点だけ書いたものを後でお渡ししますね。目を通してもらえばいいかと思います」


 私は最初の三日は教会でお仕事をしていたため、残り四日だけ授業に参加する事になった。

 アンディは初日からきっちりと勉強をしていたようだけど。


 その間だけ、王城に泊まることになっている。


「終わったー。勉強時間、長すぎるよな。座り過ぎて腰が痛い」


 アンディは椅子に座ったまま、背中を伸ばした。


「さっき眠たそうだったわね」


 昼ごはんの後に、授業を聞いていると眠くなる。

 半眼でうつらうつらしていた彼が凄く可愛かったわ。


「あれは、仕方ない事だろ。お腹いっぱいになると眠くなるんだよ」


 普段の授業の時でも眠くなるものね。

 座学ばかりなので仕方のない事なのだけど。

 たまには、体を動かす事もないと飽きてしまうわよね。


 そんな心の声が聞こえたのか――――。


「次の時間は、体を動かしてみましょうか」


 次の時間は外で運動をする事になった。

 気分転換になって良いかもしれないわ。





「やあ、お久しぶりだね」


 動きやすい軽装に着替えて、集合場所の中庭に着くと白いシャツを着た空色の髪の男性が微笑みかけてきた。

 てっきり、次の時間もラン先生が指導すると思っていたのだけど。


「ルベリオス兄?どうしてここに?」

「ラン先生とはちょっとした知り合いでな。お前たちの運動指導を引き受けた。じゃあ、アンディは王城の外周を10周回ってこい。ベルちゃんは王城の庭園を歩いて一周でいいからね」


「ちょ、ちょっと待って…一周だけでもかなり広いのだけど」

「んーそうだな。じゃあ、5周でいっか。ちゃんと準備運動してから走れよ?」


 王城ってかなり広いわよね?

 歩くだけでもかなりの時間がかかりそうだけど。


「減らしてくれてありがとな。じゃあ、ベル行ってくるよ」

「うん。頑張ってね」


 彼は、私に手を振って走り出した。

 アンディが走って見えなくなると、私はルベリオス様に呼ばれる。


「ベルちゃんはこっちへ。実は話したい事があったんだ」





 私は、王城にある庭園に導かれた。

 自然豊かな庭園は、様々な花々が咲き誇り、甘い匂いが漂っている。


「良いところでしょ?ちょっとした王城の中の自慢なんだ」


 しばらく庭園を歩いていると、東屋が目の前にあった。


「いらっしゃい」


 若草色のドレスを着た、水色の髪の長い淑女にふんわりとした笑顔で迎えられる。

 クルクルとした巻き毛が特徴的だ。

 庭園内で作られた、東屋に女性は座っていた。

 テーブルの上にはお茶のセットが置いてある。


「わたくしはフィルナンド王妃マリアンヌ・ロードス・ウッドストックです」


 王妃様は、思っていたよりも若々しくて二十代くらいに見える。

 私は慌てて頭を下げ、スカートを両手で摘まみお辞儀をした。


「はじめてお目にかかります。私はベル・クリスタルと申します」


「貴方に一度会ってみたいと思っていましたの。どうぞ座って?」


「は、はい」


 アンディのお母様とはまた違ったタイプだわ。

 王妃マリアンヌ様と、ルベリオス様、私の3人でお茶会が始まってしまった。

 テーブルの上には美味しそうな焼き菓子が並べられている。


「遠慮しないでどうぞ」


 紅茶が目の前のカップに注がれて、いい香りが漂っている。


「アイツ、お菓子好きだからな。呼べばよかったか」

「うふふ。そのうちお姫様を探しに現れるわよ」


 お姫様って私のことを言っているのかしら?

 紅茶に口を付けると、ほのかに花の香りがした。



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