第44話 教会のお勤め 2
教会へ来て二日目。
『回復魔法』
今日、何度目かのヒールを唱えた。
一日で回復魔法をこんなに使ったのは初めてじゃないだろうか?
顔から汗が滴り落ちていた。
手からオレンジの光が満ち溢れ、彼の体を包み込む。
冒険者の膝の怪我がみるみる治っていく。
「ありがとうございます。これでまた仕事が出来ます」
「無理なさらないでくださいね。お大事に」
何度目かの感謝をされ、冒険者は帰っていった。
「少し、休まれてはいかがですか?」
20代くらいのシスター、エルさんはタオルと冷たいお茶を持ってきてくれた。
「まだ、大丈夫です」
「でも最初から飛ばし過ぎると、後で体にきますし…ちょうど患者も途切れたようですよ」
教会で回復魔法を受ける人は意外と多かった。
ほとんどが冒険者だったので、冒険者は回復魔法を使える人がいないのだろうか?
顔をタオルで拭いて、長椅子に腰かける。
魔法って沢山使うと体が熱くなるのね。
冷たいお茶を口に含むと、熱くなった体から熱が少し引いていく。
「でも正直助かりました。回復魔法を扱える人がマリー様しかいないので…しばらく薬草を塗って我慢してもらおうと思っていたのですよ」
「本当に回復魔法を使える人が居ないのですね」
「そうなんですよ。他の系統の魔法なら扱える人がいるのですけどね。こればかりは使いたくてもスキルが無いと扱えないので」
「毎日こんなに患者が来られるのですか?」
「今日は冒険者が多いですね。街の住民も怪我をして来るときもありますし、もちろん誰も来ないときもありますよ」
今日は冒険者が多い日らしい。
マリー様が戻ってくるまでのお手伝いだから、しばらくの間だけなのよね。
少し休んでいたら、誰かが教会に入ってきた。
「こんにちは。怪我を治してもらいたいのですが」
髪の長い金髪の女性が、腕から血を流しているのだけど、意外と元気そうに見えた。
怪我をしている…のよね?
先ほどまで診ていた人たちと違い、何か違和感を感じる。
必死な様子が感じられない気がする。
教会で治療慣れしているのかしら?
彼女の白い手が、私に触れようと伸びてきた…その時。
「「パシン!」」
「痛っ!」
私の体に触れる前に、彼女の手が何かによって弾かれた。
胸の緑石のペンダントが白く光っていた。
「お守りが反応している…貴方、私に何かしようとしたの?」
「ちっ!失敗したわ。『催眠魔法』」
「「パシン!」」
再び石が光り、魔法は跳ね返される。
金髪の女性は、そのまま眠り込んでしまった。
「寝てしまったわ。この人一体…どうしたらいいのかしら」
私は、隣のエルさんに訊ねる。
「とにかく衛兵に突き出しましょう。きっと悪い事をする人ですよ」
憲兵に知らせて捕まえて貰ったら、金髪の女性はヴァネッサだった。
髪色が違ったので、全然分からなかったわ。
*
三日ほど経つと、マリー様が教会へ戻ってきた。
薬を服用した人の解毒が終わったらしい。
ヴァネッサが捕まった事により、アルト商会オーナーも捕まった。
教会のお手伝いも終わって、お礼にとマリー様から幾らかお金を頂いた。
ボランティアのつもりだったのだけど。
「お金は受け取ったほうが良い」とマリー様に強引に渡されてしまった。
寮に帰ると、アンディが私を待っていた。
気のせいか、しばらく見ない間にげっそりしているような気がするわ。
「ベル、お城で勉強だってさ」
王様が、アンディと私にと教師を城に招いていて、先にアンディが勉強を始めているようだ。
そういえば、勉強苦手って言ってたっけ。
勉強がよっぽどハードなのかしら。




