第41話 不審者
セレナの家の洋服店は閉店していた。
閉めたはずの店のドアが開いたので、セレナの母親が店内を見に行ったのだけれど。
「「ガシャーーーン」」
突然、物が壊れた音が響く。
「お、お客様?どうなされましたか…」
「ベル、ねえ…何か変だよ」
セレナが怯えて、私の袖を掴む。
泥棒?強盗?
この場所だとよく見えないわ。
こっそりと店内に向かうと、真っ暗い店内に立ち尽くす男がいる。
物騒な剣が光って見えて、ただ事じゃない様子だ。
男は何も言わず長剣を構えていた。
今にも切り掛かってきそうだわ。
『催眠魔法』
私は男に向けて、スリープの呪文を唱える。
男はガックリと膝を落とし、床に倒れ込んだ。
良かった魔法が効いてくれて。
男は冒険者風の装いをしていた。
セレナの母親はガクガクと震えている。
怖かったのだろう。
強盗だったのだろうか?
「眠っている今のうちに外に出しましょう。起きたら厄介ですから」
私はセレナと協力して、男を外に出した。
一時的だけど、締め出してしまえば襲われることも無いだろうから。
まさかとは思うけど、あの薬の影響じゃないわよね。
朝になると、外が騒がしくなっていた。
ドンドンドン!
「セレスティーナさん、起きていますか?」
私はセレナと同じベッドで寝ていた。
セレスティーナというのは、セレナの母親の名前みたい。
「……」
「……」
会話は良く聞こえないけど、ザワザワと騒がしい。
一体何事なのだろうか。
「ベル、おはよう~。今日は外が騒がしいね」
学院が休みなので、昨晩はセレナの家に泊まったのだっけ。
不思議とよく眠れたわ。
「何だろうね?お店に人が集まってる?」
「何かあると家に集まるんだよ。うちのかあちゃん、ご近所から頼られているんだ。街で何かあったのかもしれないね」
トントントン・・・。
階段を上がって来る足音がした。
「ベルちゃん。起きてる?シスターが家に訪ねてきているけど」
「あ、はい」
ドアの向こうから、声を掛けられた。
シスターマリーかな?
私は着替えて、下へ降りていくとシスターマリーに抱きつかれた。
ええ?
「良かった。無事だったのね。殿下が「ベルが寮に帰っていない」って心配されていて大変だったのよ」
「ごめんなさい。一人でいるのが怖かったから、お友達の家に泊めて貰っていたの」
「そうだったのね。そういえば、外で寝てた人いたけど…あれ、ベルさんの仕業?」
「昨夜、お店に不審者が入ってきたので眠らせちゃったんですけど…不味かったですか?」
「あーそういう事ね。状態異常だったから解毒しておいたわ。変な薬が流行っているらしくてね。昨日は忙しくて、お陰で寝不足よ」
シスターが外出して教会にいなかったのは、その所為だったのね。
「ベル!いったい何処へ行っていたんだ。心配したんだから…」
寮へ戻ると、アンディに抱きつかれた。
寮の玄関で帰りを待っていたみたい。
「一人になるのが怖かったから、昨日はセレナのお家に泊めさせてもらったのよ」
「…そうだったのか」
余計な心配を掛けさせてしまったみたい。
悪かったわ。
「ごめんなさい」
「無事で良かったよ。昨日はあんなことがあったのだし、俺がもう少し気を配るべきだったね」
ヒューヒュー!
はやし立てるような口笛が聞こえた。
そういえば、ここ寮の入口だったわ。
私たちは赤面する。
「もう結婚しちゃえよ」
「王子様ーお城へ連れってってー」
寮の男子たちが騒ぎたてる。
「部屋に行きましょ。ここだとゆっくり話が出来ないわ」
私はアンディの手を取り、寮の自室へと入った。




