第40話 騒動の後
*** アンディ・ロードス・ウッドストック 視点
ベルとセレナには、王城で用意した馬車で帰ってもらうことにした。
俺は王城に戻り、意識を取り戻したピエールから事情を聴くことに。
隣には、念のためオルデガもいる。
階段を降り、薄暗い地下の尋問用の部屋に入る。
普通の部屋でも良いのだろうが、こういうのは雰囲気が大事だ。
「それで、事情を聞かせてもらおうか」
俺はピエールを凝視する。
「最近、アルト商会のオーナーと酒場で会いました…頼まれて、試供品を配ってくれと言われまして…」
ピエールは目が泳いでいて、オドオドしている。
落ち着きが無い。
「何か他に隠しているんじゃないか?」
ピエールは目を見開き肩をビクッとさせる。
俯いて「この事は家族には内緒にしておいてほしい」と前置きを言って語りだした。
「分かった。約束しよう」
俺とオルデガは頷く。
「今から考えると、あの時に嵌められたのだと思いますが…酒場でアルテーンと連れの女性3人で酒を飲んでいて、いつの間にか僕は寝てしまっていました。普段は酒で寝てしまうなんてことは無いのですが。
…目覚めたら、ベッドで寝ていて隣に裸の女性がいて…その女性に僕と行為をした後だと言われてしまい…その後アルテーンに詰め寄られまして…」
ハニートラップか。
要求に従わざるを得なかったという事なのだろうな。
ピエールは妻帯者だし、浮気で女性と寝たなんてばれたら不味いだろう。
「その女性は知っている者か?」
「いいえ、酒場で初めて見かけた人で名前はバネットと名乗っていました。金髪でとても魅力的な女性でした」
「今回は利用されただけのようだな。しばらく自宅謹慎処分にする。数人の騎士を巻き込んだのだ」
「申し訳ありません」
ピエールは深々と頭を下げた。
後で父上に報告をしておかないとな。
*** ベル・クリスタル 視点
街では噂になるほど薬が広まっているみたい。
誰もが、パトリックの父親の様になっても不思議ではないのよね。
「薬が、街で広がっていると思うと、想像するだけで怖ろしいわね」
「お客さんも、何時どうなるかなんて分からないものな。気を付けないと」
意図的に王城の騎士が薬を飲まされたとしたら?
それが知らぬ間に広がって言ったら…。
国を守るべき人たちが、動けなくなったら?
考えたくはないけど、他国から攻められたらあっけなく敗れてしまうだろう。
帰りは王城の馬車で送ってもらった。
私は寮で一人でいるのが怖くなって、セレナの家に泊めて貰う事になった。
アンディは王城でやる事があり、寮に戻るのが遅くなるって言っていたし。
*
セレナの実家は洋服屋で、店の奥は生活空間になっている。
店の裏口から、ドアを開けて二人で入った。
「ただいまー。かあちゃん友達連れてきたよ」
「あらまあ、いらっしゃい。お友達とか初めてじゃないかね」
セレナと同じ赤髪で長髪、恰幅の良い優しそうな人だわ。
「丁度夕食が出来たところだよ。貴族のお嬢様にはお口に合わないかもしれないけど、良ければ召し上がって下さいな」
室内は、美味しそうな良い匂いが漂っていた。
パンと、クリームシチュー。
素朴な家庭料理でほっこりとしていた。
「かあちゃん。ベルは、貴族っぽくないから全然大丈夫よ」
「こら、セレナ何て失礼な事言うんだい」
ミルクを飲みながら、セレナはパンをかじる。
彼女は母親に頭を叩かれていた。
「いたた…暴力反対。かあちゃんは、すぐ手が出るんだから…」
セレナが少し羨ましい。
私の母は、数年前に亡くなってしまってもういないから。
カランカラン。
食事を頂いていると、お店のドアが開いた音がした。
「あらやだ、ドア閉め忘れたかねえ。ちょっと店内を見てくるよ」
暖簾をくぐり、セレナのお母様は店に入っていった。
「お客様?本日はもう閉店していますが…」
こんな時間にお客?
日も落ちていて、店内の明かりも無い。
閉店している真っ暗な店内に、客が入ってくることはまず無いとは思うのだけど。




