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第35話 あらぬ誤解

 コンコンコン。

「アンディ、起きてる?」


 私はアンディの部屋の前にいた。

 最近ほとんどまともに会話をしていない。

 彼は、疲れているのか授業中ずっと居眠りをしている。

 沢山話したい事があるのに。


「開けるわよ」


 返答が無いのでそっとドアを開けてみると。

 彼は机に教科書を広げて眠りこけていた。


「全く、風邪引くわよ。一体毎日遅くまで何をしているのだか」


 彼の肩に毛布をかけて、思わず眠っている彼に呟く。

 寝顔は幼さが残っていて可愛い。

 まつげが長いわね。


「むにゃ…ベル…ごめん…」

「えっ」


 寝言が聞こえてきた。

 私の夢を見ているのかしら。



      *



「おはよう、アンディ。今日は一緒に登校しましょ?」

「お、おう。ベル早いな。待っていてくれたのか」


 欠伸をして、寝ぼけ眼の彼が部屋を出てきた。

 朝ごはんを食べに一緒に食堂へ向かう。

 前はよく彼が私に付いてきたっけ。


「なあ、どうしたんだ。今日は少しくっつきすぎじゃないか?」

「別にいいじゃない。傍に居たい気分なのよ」


 アンディが恥ずかしがっている。

 そういえば、周りの人も私たちを見ているわね。



 *** セレナ 視点



「ベルの様子が変だって?」


 あたいはアンディから相談された。

 確かに今日のベルは、アンディに近過ぎな気がするけど。

 教室へ入って来た時もくっついていたし。


「アンディくん、最近寝てばかりだからね。話しできなくて寂しかったんじゃないの?構ってあげないと、彼女が他の人に取られちゃっても知らないよ」

「は?何を言っているんだよ。取られるってそんな訳ないだろう」

「アンディくんは知らないかもしれないけど、ベルってクラスで結構人気があるんだよ?」


 いつもベルの隣にはアンディが居るから、声を掛ける男子が居ないだけだ。

 可愛いし、貴族っぽくないところが意外と人気らしい。

 庶民のあたいでも差別しないで普通に接してくれるからね。


「そうなのか…知らなかった」


「人気はあるけど、アンタがいつも近くに居るから近寄れないだけだと思う。あれ、ちょっと動かないで…髪に糸くずが付いてるよ。取ってあげよう」

「悪いな」


 ベルと仲良くなりたい男子がいるのは本当だ。

 今回、王子と婚約したとこでさらに注目を集めちゃってるみたいなんだよね。

 こういう時、近寄ってくる奴はロクな奴じゃないけど。


 群青色の髪、意外と柔らかいな。

 あたいは、アンディの髪に付いていた糸くずを取ってあげた。



「あ、アンディ!何やってるの!」


 タイミング悪く、トイレに行っていたベルが戻ってきた。

 あたしたちを指さしながら驚いている。

 ゴミを取ってあげただけなのに、変な風に勘違いされたのかな?

 ベルに任せればよかったかも。


「貴方、実は…セレナが好きだったとかそんな事言わないでよね」

 ベルは顔は笑っているのだけど、目が怖い。


「ちょ、ちょっと待ってくれ誤解だ。話せば分かる」


 アンディは、迫力に押されて壁際に追い詰められている。


「あたいだって、こんな顔の良い優男ごめんだよ」


 痴話げんかに、巻き込まれるなんてまっぴら御免だ。


 それから、あたしたちがベルに事情を説明して納得してもらえるまで、小一時間もかかってしまい…貴重な昼休憩が、終わってしまった。



 *** ベル・クリスタル 視点



 放課後、私は寮に戻らずに一人屋上で夕焼けを眺めていた。


「はぁー」


 私、何やってんだろ。

 今までこんな事無かったのに。

 嫉妬して怒ってしまった。

 セレナとアンディは仲のいい友達…冷静に考えれば分かる事なのに。


「はぁ…もうやんなっちゃう」

「それって、俺の事?」


 後ろから声が聞こえて、振り向くとアンディが立っていた。


「あれ…何でここに居るの。何処かへ行かなくて良いの?」


 最近の彼は、学校が終わると馬車で何処かへ向かっていた。

 もうとっくに出掛けたと思っていたのに。

 風が、群青色の髪を揺らしている。


「今日はそれよりも大切な事があるからね」

「大切な事?」


 何だろう?

 私は首を傾げた。


「ベル最近、全然構ってあげてなかったね」

「うん…最近ずっと話してなかったもん。寂しかった」

「そうだったよね。ごめん」


 彼が私に謝っていた。

 別に、謝らなくても良いと思うのに。


「毎日どこへ行っているの?」

「王城だよ。剣の訓練をしているんだ」

「へえーそうだったのね。剣術スキル持っているものね」


 アンディは元々剣術の学校へ通っていた。

 私を追いかけて、わざわざ魔法学院へ入って来たんだよね。


「後悔してない?魔法の学校へ入って。元々剣を習っていたのに」

「最初はどうなるかと思ったけど、案外何とかなるものだよ。もちろん後悔はしてない」


 私たちはベンチに座り、肩を寄せ合う。

 誰もいない二人だけの空間。


「剣を習っているのはね、今よりも強くなりたいんだ」

 笑いながら語る口調はいつもの彼だった。


「強くなって君を守りたい。ベルは魔法では俺よりも強いかもしれないけれど」


 遠い空を眺めるアンディの瞳を見つめた。

 水色の瞳は何を映しているのだろう。


「ベル…」


 彼の熱い瞳に吸い込まれ、私は目が離せなくなった。

 アンディと唇を重ねていた。


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