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スキルの鑑定

 私はスキル鑑定の為、ルルム街の教会に赴いていた。

 12歳になると、スキルを鑑定してもらって将来の仕事を考えるのだ。

 画期的なのかもしれないけど、本人が望まない仕事だったらどうするのだろうか?


 司祭が私と向かい合わせに立つ。

 私は目の前の水晶に手を当てると、白く光り輝いた。


「ベル・クリスタル様のスキルは…聖女です」


 司祭様が目を見開いている。

 周りにいた他の鑑定をした子供や、子供の親たちも驚きのあまり言葉を失っていた。


「せいじょ?」


 今、聖女って言ったわよね。

 私の聞き間違えでなければ。


「大事な事なので、確認の為もう一度鑑定を致しますね。水晶に触って下さい」


 私は水晶に再び手を触れる。

 再び水晶が白く光り輝く。


「間違いありません。失礼致しました」


 司祭が、私の手を取って恍惚こうこつの表情を浮かべていた。

 オジサンに手を触られてる…正直キモイ。

 感激しているのは分かるのだけど。

 早く、手を離してくれないかしら。


「驚きました…生まれてこの方、聖女のスキルは初めて拝見しましたので…ベル様はこれからしかるべき所でキチンと勉強をされた方が良いかと思います」


「「「わあああーーっ!」」」

「凄い!」

 

 パチパチパチ……。


 教会内にいた人々が、歓声を上げて拍手が巻き起こった。

 マジですか…すっごく嫌なんですけど。

 世間一般的には、すっごく憧れるスキルなんでしょうけど!


 聖女って、王家の為に働いて自分の自由が全く無い仕事のように思えるわ。

 せっかく貴族に生まれたのなら、優雅にのんびり暮らしたいのに。

 私は笑顔を作ったけど、ひきつっているかも。



 帰り、私と父は馬車で向かい合って座っていた。

 母は、数年前病気で亡くしているので、家族は二人っきり。

 聖女と確定した今、勉強の為学校へ通わないといけないらしい。


「まさか…聖女のスキルとはお父さん驚いたぞ」


 父は、未だに信じられないようで私をじっと眺めている。


「学校に行ったら、お父様一人になりますよね?私、聖女になれなくても良いです。他にいくらでもお仕事はありますよね?」


 何とか聖女を回避出来ないだろうか。

 学校に行かないならば、聖女にはなれないだろうし。


「気持ちは嬉しいが、駄目なんだよベル。恐らくすでに王城には連絡がいってしまっているだろう。聖女というのは特別でね。断るのは無理なんだ。二度と会えなくなるわけではないのだから…わたしの事は心配しないでくれ」


 やっぱりダメか。

 聖女とは国にとって重要なものらしい。

 他のスキルと違って断れるものではないみたいだわ。




 屋敷に帰ってからしばらくして。

「ベル!鑑定結果が出たんだって?」


 何処から聞いてきたのか、アンディが息を切らして屋敷に来た。

 もしかしたら、街中で噂になっているのかもしれない。


 リビングの椅子に座っていたら、私にぐいぐい迫ってきた。

 ちょっと、興奮しすぎだわ。


「聖女だなんて、凄いじゃないか!街始まって以来だよな」

「うん…」


 私は力なく頷いた。

 凄いのは分かるけど、なりたくないんだよね。


「この間から思っていたんだけど、何か悩み事があるんじゃないか?元気ないし」

「そんな事無いわよ」


 私は無理に笑顔をつくると、前触れも無しに頬を掴まれた。


「な、にゃにする…」

「無理して嘘つかなくていいよ。誤魔化すの下手くそなんだから」

「…学校に行きたくないの」

「そうなんだ。何で行きたくないの?聖女になるために必要なんだよね」

「聖女になりたくないんだもん」

「ええええ?」


 アンディは、私の言っている意味が分からないみたいで驚いていた。

 聖女は名誉職みたいであこがれの職業らしい。

 っていわれてもね。



 *** バード・クリスタル(ベルの父親)視点



「ベルもいつの間にか大人になったものだな…」


 わたしは書斎で書類に目を通していた。


「子供の成長は早いものですね」


 執事セバスと言葉を交わす。

 セバスは屋敷に長年勤める優秀な執事だ。


「屋敷で一人になるわたしを気遣って、せっかく女神さまから頂いた聖女職を辞するなんて言いだしたんだ。大人でも言える事では無いだろう?」


「お嬢様、ご立派に成長致しましたな」


 セバスの目には涙が浮かんでいる。

 歳をとると、涙もろくなるとは本当の事らしいな。


「流石に褒めてやれることではないがな」


 娘の成長に喜ぶ半面、寂しいと思ってしまうな。

 妻が生きていてくれれば、また違ったのだろうが。



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