第26話 謝罪
私は再びベッドに寝かされていた。
いつの間にか気を失ってしまったらしい。
目を覚ますと、アンディが心配そうに私を見つめていて、直ぐに頭を下げられ土下座をされた。
「すまない!魔法だったとはいえ、とんでもない事をしてしまった」
確かに驚いたけど、魅了の効果でおかしくなっていただけよね。
むしろ被害者はアンディだったのでは。
彼にキスされたことを思い出し、顔が途端に熱くなった。
「え、えっと…あれは事故のようなものだし、謝る事じゃありません。確かに驚いたけれど…あ、頭をお上げください」
恋人同士ならキスくらいはするだろう。
少し濃厚過ぎた気がするけど。
「ベルの意思を確認せずに、キスしてしまった事は申し訳なく思う。しかも今度は二度目だ…」
絨毯に膝を付けたままのアンディ。
それから何かを決意したように続ける。
「ベルがよければ、俺と婚約してくれないか?こんな事言うと嫌かもしれないが、責任を取らせてほしい」
「えっ?」
思いもかけない言葉に驚き、言葉が出てこない。
「こ、婚約??私、男爵家の娘ですよ?身分が違い過ぎます」
「俺は、昔からベルの事が好きだった。問題ないよ」
真っすぐな水色の瞳を向けられて、ドキリとする。
王族のアンディと婚約??
本当に私で良いのかしら。
「はい。よろしくお願いします」
「良かったー。それといつも通り普通に話してくれ。調子が狂うよ」
アンディはホッとして頭を掻いていた。
お父様が聞いたら腰を抜かしそうね。
アンディが王子様というのも知らないだろうし。
これは、実家に帰って報告しないといけないわ。
***ヴィック・ロードス・ウッドストック(王様)視点
「アンディが例の少女と婚約か?」
本人から、話があると思うが先に神官オルデガから連絡が来た。
執務室で作業の手を止めて、話に聞き入る。
「さすがに今回の事は看過できませんので…」
何でも少女に強制的に接吻をしてしまったらしい。
軽いものだったら良かったのだが、行為を聞いたところ犯罪レベルだ。
青い魔女の魔法の影響だったとはいえ、止めなかったら最後まで致してしまったかもしれない。
それにしてもやってくれたな。
仲が良かった二人だから良かったのだろうか。
「今まで、婚約を断り続けていたのもその少女の所為なのだろう?」
「そのようでございます」
アンディは第六番目の王子だから、他国の姫と結ばれなくても比較的自由な立場ではある。
これが、第一王子だったらやっかいではあったがな。
昔は側室の妻ともども命を狙われていたから、田舎に隠れ住んでいたがもうその必要もなくなった。
アンディも婚約をすればようやく落ち着くか。
「ヴァネッサを何としても探し出せ。捕まえたら報奨金を出す」
とにかく、元凶のヴァネッサを捕らえなければならない。
まだ遠くまで行っていないはずだ。
*** ヴァネッサ・ピエドラ(青い魔女)視点
「はぁはぁはぁ…」
息が切れて苦しい。
魔法で何とか逃げ切ったけど、体力が無くて直ぐに息が上がる。
だいぶ王城から離れたわ。
私の能力は密閉された空間だったから効いただけで、街に出てしまえば効果は無くなってしまう。
しばらく姿を隠して過ごさないとね。
あの、王子様を篭絡出来なかったのは残念だけど。
フードを目深にかぶり、酒場に入る。
今日はそこらの宿で泊まろうかしら。
「姉ちゃん、手配書が回っているぜ?」
耳元で男が声を掛けてきた。
わたくしの容姿が描かれた紙を見せられる。
黒髪に、青い目の女。
黒髪は珍しいから、直ぐに分かってしまうだろう。
「金貨300枚だってよ。一体何をしたんだ?」
「へ…へえ…」
宿屋になんて泊まれないじゃないの。
というか、街から出られるのだろうか。
「仕事を手伝ってくれたら匿ってやるよ。こっちへ来な」
わたくしは言われるまま、怪しい男の後を付いて行った。




