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第23話 青い魔女

「ねえ、良かったらここで一緒に暮らさない?」

「えっ?」


 えっ?どういう事?

 驚いて顔をあげると、彼の水色の瞳と目が合った。


「城の中なら危ない事も無いし。少し窮屈かもしれないけど、俺とも一緒にいられる。まだこれから父上に話すのだけどね」


 そういえば、お父様が会いたいって言ってたのよね。

 まさか王様だとは思わなかったけど。


「そういえば、領主ではなかったのね」

「ごめんね。色々と事情があったんだ」



      *



「失礼致します」


 侍女が部屋に朝食を運んできた。

 二人分の食事が用意されて、アンディと一緒に食べることになった。


 私は、オレンジジュースを飲みながらアンディに訊ねる。

 パンはホカホカしていて、焼きたてで柔らかい。

 甘い良い匂いがした。


「仮に一緒に暮らすとして…学院へはここから通うのかしら」

「学院行きたい?別に行かなくても良いと思うけど、魔法の勉強をしたいのなら講師を雇うよ」


 せっかく魔法学院に入ったのだから、最後まで授業を受けてみたいわ。

 教会でのお勉強も途中だし。


「それに、アンディは学院の理事長やってるじゃないの。行かない訳にはいかないんじゃないの?」

「ああ、確かにね。次の理事長が決まるまでの約束だったな」



 *** アンディ・ロードス・ウッドストック 視点



「アンディー」


 長い王城の廊下を歩いていると、遠くから声を掛けられた。

 空色の髪が遠目でもわかる。


「兄さん」

「女の子を連れ込んだんだって?」

「つ、連れ込んだなんて人聞きが悪い…」


 第五王子のルベリオスはにやにやと口元を緩めた。

 俺は昔からこの兄が苦手だ。


「別に良いんじゃないか?お前も年頃なんだし。婚約者をすべて断っていたから女に興味が無いのかと心配していたんだぞ…逆に安心したよ」

「彼女が怪我をしていたから、手当てをするために運んだんだよ」

「ははは、そうむくれるなって。今度おれにも紹介してくれよ」


 俺は兄にバンバンと背中を叩かれた。


「痛いんだけど」

「軟弱め。そういえば剣の学校途中で辞めたらしいな」

「うん。魔法学院へ入学しなおしたんだよ」

「魔法ねぇ。魔法と言えば…お前、青い魔女に目を付けられないように気を付けろよ?」

「なんだそれ」

「王城にほとんどいないお前は知らないだろうけど、やっかいな魔女なんだよ…っと噂をすれば」


 目の覚めるような、真っ青なローブを着た女性がゆっくりと歩いてきた。

 黒髪が艶やかで、腰のあたりまで伸びている。

 白い顔に鮮やかな赤い口紅が印象的だ。


「ルベリオス殿下、そちらの方はどなたですか?」

「おれの弟のアンディだ。知らないのも無理はない。ほとんど城にいなかったからな」

「まぁ。では第六王子様ですか。噂では伺っておりました。わたくし魔道士のヴァネッサ・ピエドラと申します。以後おみしりおきを」


 ヴァネッサはドレスをつまみお辞儀をする。

 俺は、彼女の顔を見ようと視線を移した。

 あれ、頭がぼーっとしてきたな。

 どうしたんだろう。


「これ、付けておけ」


 ルベリオスは上着のポケットから、腕輪を取り出して俺に押しつけた。


「何これ…」

「いいから。とにかく腕にはめておけ」


 訳も分からずに、腕に付けると頭のもやもやが無くなった。

 これってもしかして?


「せっかく良い感じでしたのに。酷いですわ殿下」

 ヴァネッサは口元を釣り上げた。


「大事な弟なのでね。これ以上、被害者を増やしたくない」


 まさか、魅了魔法の一種なのだろうか?



      *



 青い魔女と別れた後、俺は廊下で兄と話していた。


「ヴァネッサは数年前に王城に入った魔導士でね。仕事はきちんとするのだが、体質で魅了能力が年中発動しているんだ。最初は分からなかったから、城ではおかしなことになっていたんだよ。本人に悪気が無いからなお悪いよな」


「それ、大丈夫なのか?他の男たちは…」


「王族は解呪の腕輪をつけるようにしたから諦めているようだが、騎士などは影響を受けているようだ。彼らは強いファン意識だと思っているようだがね」


「彼女を、追い出すことはできないのか?」

「何か問題が起これば、追い出せるのだろうが…今のところ何も無いからな」


 とはいえ、意図的に誘惑したりしているらしく男遊びをしているという噂だ。

 男たちは魅了されているから、実態に気が付いていないらしい。


 俺が知らないうちに王城が魑魅魍魎ちみもうりょうに侵されているとは思ってもいなかったよ。

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