第20話 休養
体がふわふわと浮遊感に包まれる。
私はアンディに、横抱きで抱きかかえられていた。
「あ、アンディ私、自分で歩けるから…」
「そう?でも心配だから俺が抱いていてもいいかな?」
柔らかい笑顔で言い返されて、顔が熱くなる。
彼は王子様で…私は彼の事を好き…らしい。
自覚してしまうと、とたんに恥ずかしくなった。
それにしても、王子様にこんな事させるわけにはいかないわ。
「でも、殿下、貴方にこんな事をさせるわけには…」
「ベル、いつもみたいにアンディって言ってくれないと寂しいな」
本当に寂しそうな声で言われて、キュンと胸が痛くなる。
私は、そのまま何も言えなくなってしまった。
「アンディ…寮に帰るのよね?」
移動時間が長く感じる。
学院の寮ならば、それほど時間がかからないはずだけど。
いつの間にか、馬車に乗っていた私はずっと抱きかかえられたままだった。
いい加減、離してくれても良いとは思うのだけど。
「いや、王城へ行って神官に回復魔法をかけてもらおう。医者にも見せたほうが良い」
彼にギュッと強くだきしめられる。
「馬車の中なのだし、もう降ろしてもらって大丈夫よ」
「そんな寂しい事言わないで」
えっ?
アンディの体が微かに震えていた。
「君を失うと思ったら…怖くなって、今頃…震えてきちゃった。ごめん」
「ううん。私も怖かったわ。また死んでしまうかもと思ったもの」
私は王城のある部屋の中へ運ばれていた。
そっと、ベッドの上に降ろされる。
部屋には、神官らしき人が控えていて医者も同席していた。
私が到着するのを待っていたらしい。
「全身を確認してくれないか?何も無くても、念のため回復魔法もかけておいてくれ」
アンディが指示をする。
茶髪で髪を後ろで束ねている女性の医者が近づいてきた。
「どこか痛いところはありませんか?失礼して少し触らせていただきますね」
白衣を着た女医が、触診をする。
「多分…ないと思います。って痛っ!」
「痛かったのね。ごめんなさい。オルデガ、治療お願いできるかしら」
右腕を持ち上げられて、痛みが走る。
知らないうちに傷ついてしまったのだろうか。
「はい。では、回復魔法をかけましょう。『回復魔法』」
神官が私の右腕に手をかざすと、淡いオレンジの光が腕を包み込んだ。
温かい不思議な感覚が体をめぐる。
「これがヒール…」
他の魔法とは全く違う感じがした。
魔力の流れが温かく柔らかい。
ぽかぽかと体が温まっている。
「他の怪我はないようですね。なにかあったら直ぐに言ってください」
神官は魔法で他に怪我がないか確認できるらしい。
光魔法を極めるとそんな事も出来るのね。
女医がアンディに何か話しかけていた。
「ベル、今日はここで泊まっていきなよ」
思いのほか、だるくて体に負担がかかってしまっていたらしい。
色々な事があったので、心労があったのかもしれない。
「うん。申し訳ないけどそうするわ。体がだるくて思うように動かないのよね」
「俺はずっと一緒にいるから」
「え?アンディが付き添わなくても大丈夫よ?寝ていれば治るだろうし。何かあったら、そこの鈴で呼べばいいのよね?」
ベットの近くに鈴が置いてあって、鳴らせば侍女さんが直ぐに飛んで来てくれるらしい。
「俺が一緒にいたいのだけど…だめ?」
彼はベッドの近くの椅子に座っていて私の左手を握っている。
可愛く首を傾げられた。
「はぁ…分かったわ。悪いのだけど、私は起きていられないから寝るわよ?」
「ごめんね」とひとこと言って、私は目を閉じた。
どうにもしんどくて意識が保っていられない。
アンディには申し訳ないと思ったけど、意識は直ぐに夢の中へ落ちていった。




