第19話 復讐
真っ暗くひんやりとした場所。
気が付くと、私は地面に寝かされていた。
攫われた時に気を失ってしまったようだ。
「貴方はここで人知れず命を失うのよ」
「始末くれえ、おれがやるが…お嬢さん出来るのか?手が震えてるじゃねえか」
「だ、大丈夫よ。そのくらい」
私、殺されかけている?
でも聞き覚えがある声なのよね。
目を開けると、金髪の見知った少女が私に刃を向けていた。
ガタガタと震えている。
上を見ると、周りが土で出来ており洞窟のようだ。
隣には私を攫った男が立っていた。
「イザベラさん?一体どうして…」
彼女は貴族令嬢で、こんな場所にいる人ではない。
「ふふ、全く貴方は何も知らないのね。貴方の所為でわたくしは何もかも失ったというのに…屋敷も、父の仕事もすべて失ったわ」
彼女は不敵に微笑んだ。
「私の所為だっていうの?」
とんだ言いがかりだわ。
元はと言えば、イザベラが毒入りのお菓子を寄越したのが原因じゃないの。
「だからここで死んでちょうだい。少しは気が晴れるというものだわ」
金属の冷たい感触が頬に当たっている。
短剣を突きつけられていた。
私ここで死ぬのかな。
前世も短い生涯だったけど、もう少し生きたかったわ。
「アンディ…」
私、貴方のことが好きだったみたい。
今更、気が付いても遅いわね。
「「「そこまでだ!」」」
いつの間にか、数人の騎士が彼女たちを取り囲んでいた。
「おいおい、お嬢様これは聞いてねえぜ…王城の騎士がなんで出張ってくるんだよ」
男は焦った様子で狼狽える。
「全く、バカなことをしたものだ。わざわざ軽い処罰にしたというのに台無しだ。この者たちを城の牢に入れておけ」
アンディが後ろから現れて告げた。
この人は一体何者なの?
騎士に指図できる人って一体…。
「ベル、遅くなってごめん。大丈夫だった?」
私は、アンディに手を差し伸べられて起き上がる。
「アンディ…よね。貴方は一体…」
王城の騎士たちが、イザベラと男を拘束していた。
イザベラの服はよく見ると薄汚れていて。
私を一瞥すると、悔しそうに顔を歪めている。
「君に嘘をつくつもりは無かった。今まで黙っていてすまない。俺の本当の名は”アンディ・ロードス・ウッドストック”この国の第六王子なのだよ」
アンディは私の前で、深く頭を下げていた。
*** アンディ・ロードス・ウッドストック 視点
ベルが突然攫われてしまった。
俺は陰ながら護衛していた騎士の一人に声を掛ける。
「攫われた少女を追いかけられるか?」
「はっ!既に数人で追いかけております」
頭を下げ膝をついて返答する騎士。
言わなくても察して行動するとは優秀な騎士達だな。
「殿下は、恐らく指示をされると察しましたので」
間もなく、ベルは発見された。
犯人は元婚約者のイザベラだった。
ベルに逆恨みをしたのだろうが、今度は許せない。
俺ではなく彼女に手を出してしまったのだから。
権力を持つべきものは、公平であるべきとは思ってはいるが、大事な人を殺めようとする人を寛大に扱う事は出来ない。
俺だって感情のある人間なのだから。
「全く、バカなことをしたものだ。わざわざ軽い処罰にしたというのに台無しだな。この者たちを城の牢に入れておけ」
俺は、感情のない眼差しをイザベラに向けたが、直ぐにベルを抱きかかえて王城に行く事にした。




