第18話 街で買い物 2
「ようこそ、お待ちしておりました」
銀髪のタキシードを着た店主が、胸に手を当てて深く頭を下げている。
対応の仕方からも、普通のお店ではないようだわ。
貴族御用達のお店なのかしら。
そういえば、私も貴族だったわね。
すっかり忘れていたけれど。
「今日は、この少女に見合ったドレスを探してほしいのだが」
「承知いたしました」
私とアンディは奥の部屋に案内される。
そこは、お店と言うよりも落ち着いて休める休憩所のようだ。
女性店員が、部屋にハンガーラックを運び込む。
色とりどりのドレスが掛けられていた。
「こちらなどはいかがでしょう。可愛らしくて、今王都で人気のデザインですよ」
店主がドレスを広げて見せる。
シルク素材でキラキラしたドレス。
ふんだんにフリルが使われている。
「値段が…書いてないわね」
「こちらは金貨5枚ほどになります。」
金貨一枚は1万円くらいだから5万円ほどね。
ブランド品と思えば安い方なのかしら。
持っているお金で何とか足りそうだわ。
持っている巾着を覗くと、金貨が20数枚、銀貨も数枚入っていた。
ふだん寮生活だから、お金はほとんど使わないのよね。
父が多めにお金を持たせてくれたお陰で助かったわ。
「い、いいえ失礼しました。銀貨5枚です」
店主が値段を言いなおした。
一桁、間違えるはずはないわよね。
銀貨5枚だと5千円だわ。
見ると、アンディが店主に目で合図をしていた。
顔が利くって言ってたから、値引きしてもらったのだろうか。
アンディいくら何でもやり過ぎじゃない?
少し呆れたけど、助かるのでそのまま買う事にした。
私は、水色のドレスと靴を購入した。
帰る時も、店主が深く頭を下げている。
アンディは本当に領主の息子なのだろうか。
もっと位の高い…人のような気がする。
普段来ることのない高級店で、堂々とした振る舞いに違和感がない。
「今日はお買い物に付き合ってくれてありがとう。素敵な服が買えて良かったわ」
「いいえ。どういたしまして」
アンディはにこやかに微笑む。
ドレスは後日、寮へ届けてくれるらしい。
5千円位の服でかえって申し訳ないわね。
その後、二人で飲み物を買ったり、お菓子を買ったりした。
お祭りの様に、屋台がそこら中に並んでいる。
人々はみな楽しそうだわ。
私は初めての街歩きで、久しぶりに浮かれていた。
アンディとこんな風に一緒に過ごすは初めてだったような気がする。
いつも屋敷で遊んでいたから。
まるでデートみたいね。
ドン!
アンディと話しながら歩いていたら、誰かとぶつかってしまった。
少し、気を緩みすぎていたのかもしれない。
「ごめんなさい」
私は、とっさに謝って頭を下げる。
「ああ?お前どこをみているんだ?」
背の高いガラの悪そうな男にぶつかってしまったらしい。
睨まれてしまった。
人通りが多かったので、気をつけなければいけなかったのに。
「お前、わざと彼女にぶつかってきただろう」
「少年、おれに喧嘩を売ってるのかぁ?面白い」
「アンディったら喧嘩はダメよ」
相手は大人で身長も高い。
体つきもがっしりしていて、力が強そうだし…理不尽でも謝ったほうが良いわ。
アンディは男を見上げて睨みつけている。
「ごめんなさい。あの…悪気があった訳では…」
仲裁しようと二人の間に入ろうとすると、男は私の体をひょいと持ち上げた。
「まだ、ガキだがよく見ると可愛いじゃねえか。オレの好みじゃねえが、依頼主はあんたをご所望なのでな」
「えっ?」
男は私を抱えて、走り出した。
「「きゃあ」」
「「ベル!!」」
アンディの叫び声が聞こえる。
えええーーーーっ?
私一体、何処へ連れて行かれるの?




