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第13話 元婚約者

 翌日、学院に登校した。

 私は、教室でアンディとまともに顔を合わせられずにいた。

 まさか、キスをされるとか思ってもいなくて。

 恥ずかしくて目も合わせられない。


「あれ?二人ともどうしたの?」

 もじもじしていると、セレナが不審がり訊ねてきた。


「昨日は…ごめん」

「も、元はと言えば私の方が悪かったわ」


 視線を合わさずに言葉だけ交わす。

 傍から見ていたら妙に思うわよね。

 仕方ないじゃない。

 恥ずかしくて顔が見れないんだもの。


「ベルさん、外で誰か呼んでいるみたいだけど」


 クラスメートの女子に声を掛けられた。





 私は、学院の噴水前に呼び出されていた。

 彼女は、煌びやかな長い金髪をかきあげて腰に手を当てている。


「わたくし、アンディ様に近づかないようにと言いましたわよね?憶えていらっしゃらないのかしら?」


 イザベラに青い目で睨みつけられる。

 婚約者じゃないのだから従う必要は無いと思うのだけど。


「えっと、今は婚約していませんよね?」

「…っ!そういう事ではありませんわ。してなかろうと、近づいてほしくないんですの」

「そう言われても…同じクラスですし。物理的に無理があるのでは?」


 隣の席なのだし、近づくなというのが不可能だったりする。

 完全に離れるのならば、席を変わるか、クラスを変えてもらうしかない。


「お父様に言って、貴方を退学させるようにお願いいたしますわ」


 えー。

 権力を私物化しているわね。

 悪役令嬢なのかしら。


 あれ?

 そうすると、当初の(聖女にならない)予定が叶うのでは?


「ありがとうございます!是非お願いしますね」


 私は笑顔で受け応えると、イザベラはビクッと肩を震わせる。


「へ、変な事をおっしゃる人ね。まあ、望みどおりにして差し上げますわ」


 イザベラは、何故か顔が引きつってる。

 まあでも良かった。

 これで聖女になることは無くなったわね。




「学院を辞める?」


 教室に戻り、先ほどの事を話すとアンディが驚いたように目を見開く。


「イザベラさんが退学させるって言ってたわ。これで晴れて聖女にならずに済むと思うと肩の荷が下りたわ。やっと屋敷に帰れるわね」

「ええ?せっかくお友達になれたのに辞めちゃうのか?」


 セレナがしょんぼりしている。


「君は、全くぶれないね…イザベラは理事長の娘だったか。でもそれは不可能だと思うけどな。それに、もう既に能力は開花したのだし」


 高い所から落ちた時。

 私はアンディに回復魔法を使っていた。

 まだ呪文を教わっていないにもかかわらず。

「これがどういうことかわかる?」とアンディに問われた。


 これこそが、特別なスキルの力なのだと。



 *** イザベラ・ゴルド・ベンウェル 視点



「「バン!」」


 わたくしは思わずテーブルを叩いていた。

 紅茶のカップが揺れてカシャンと音が鳴る。


「何で退学させられないんですの?」


 わたくしは、理事長室でお父様に直談判していた。


「相手が悪すぎるよ。イザベラ。今回は諦めなさい」


 いつもならば、直ぐに「分かった」とおっしゃって、わたくしの意見を訊いてくださるのに。


「彼女は聖女のスキルがある。どちらかというと、学院の方から頼んで来てもらっているくらいなのだよ。それと…アンディ様から直々に頼まれていてね」

「聖女?あの女が??」


 他のスキルと違い聖女は格別の待遇がされる。

 希少スキルゆえ、何よりも優先されるのだ。


「気持ちは分かるが…出来れば正攻法でいったらどうだろうか。彼の心を掴むことが出来れば良いのだろう?」


 それが難しいから退学にしようとしていたのに。

 アンディ様は、ずっと一人の人を想い続けているのだから。

 ずっと…ずっと…前から知っていた。


「彼女を退学にしようとした時点で、挽回ばんかいは難しいとは思うがね」


 そう。

 今回の事で、わたくしに対してのイメージは最悪だろう。


「だったら、違う方面からアプローチしてみたらどうかね」

「え?」


 わたくしは、すっかり諦めていたのだけど。

 まさか、アドバイスされるとは思ってもいなかった。


「例えば?」

「少し力を貸してあげるから、やってみたらいい。ただし、アンディ様以外をアプローチするんだ…方法は自分で考えなさい」





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