第10話 想い人
「うーん」
私は自室のベッドに寝転がり考えていた。
やむなく魔法学院に入学してしまったけど、聖女にならない良い方法はないかしら。
学院を卒業した人が、聖女になるらしいから卒業しなければ良いとか?
そういえば聖女になる方法を知らないわね。
それが分かれば、逆の事をすれば良いんじゃないかと思うのだけど。
コンコンコン。
ドアがノックされた。
「誰かしら?」
ドアを開けると、群青色髪の彼が立っていた。
「ベル、何やってんの?夕食の時間だってさ」
「アンディ…もしかして、この寮に住んでるの?」
「そうだけど?それがどうかした?」
普通に考えれば分かる事だった。
彼も同じ街から来ているのだから。
「何で私の部屋を知ってるのよ」
「寮長に教えてもらったからね。同じ街出身だと言ったら教えてくれたよ」
ええ?
プライバシーとか一体どうなってるのよ?
私は、階段を下りて一階にある寮の食堂に来た。
広い部屋に、横長のテーブルが沢山あり、椅子が置かれている。
人がぽつんぽつんと離れて座っていた。
その日のメニューは決まっているみたいで、今日のメニューは丸いパン二つと焼肉とサラダ、果実の切ったものだった。
トレーに夕食を載せてテーブルに運ぶ。
席に座ると、隣にアンディが腰かけた。
「学院でも、寮でもアンディと一緒って…何だか複雑な気分だわ」
彼とは、幼いころからずっと一緒なのよね。
家が隣だったから。
「俺は嬉しいけどね」
「はぁー。きっと私を追いかけてきたのでしょう?ずーっと思っていたのだけど、アンディって私の事好きよね」
パンを手に取り、ちぎって口に運ぶ。
「えっ?知ってたの」
彼は目を開いて驚いている。
「そりゃあね。ずっと付いてきていれば分るわよ」
やっぱり。
じゃなければ、いつも屋敷に訪ねて来ないだろう。
わざわざ剣術の学校を辞めてまで、魔法学院に来ないだろうし。
「よく家族が反対しなかったわね。アンディのスキルだとこの学院の授業についていくのは大変でしょ?」
「…説得したからな」
凄く理解のある親御さんなのか…。
他人の家の事情は、知らないけれど。
「ベル、俺と付き合わないか?」
「い、いきなり何言ってんの!ここ、食堂よ?せめて部屋の中とかにしない?」
びっくりしたー。
周りを見渡したが、どうやら知っている顔はいないらしい。
一応、言う場所を選んで欲しいわね。
「だって「好きよね」って言ってたから…今言っても良いかなって思って」
*
私は自室にアンディを招き入れて、改めて返事をした。
「悪いけど…私、自分の気持ちが分からないから…無理ね」
付き合ってと言われたが…正直自分の気持ちがよく分からない。
「えっと、私ね。…昔の好きな人の想いを未だにひきずっていて、そんな中途半端な気持ちじゃアンディに悪いと思うの」
「…昔って何?ベルって今何歳だっけ?」
アンディは眉をひそめて考え込んでいた。
他にそのような知り合いが思い当たらないから当然だろう。
同じくらいの年齢で異性の知り合いがいないからね。
「13歳よ…信じられないかもしれないけど、私は前世の記憶があるの。その時の彼が、未だに忘れられなくて…その人は事故で亡くなったんだけどね」
「そういう事か…何かおかしいとは思っていたんだ」
*
次の日、私は学院の教室にいた。
朝、隣の席を見ると彼は座っていなかった。
「アンディくん、学院今日お休みなんだって?」
「そうみたいね」
体調を崩したのだろうか。
寮から、学院に連絡があったと聞いたけれど。
「せっかく告白しようと思ったのに!」
セレナは素直でいいなぁ。
私は15歳の頃から時が止まったままだ。
そろそろ前に進みだしても良い頃なのかもしれないけど。
私は青空を仰ぎ見る。
道也会いたいよ。
もう会えないって解っていても。




