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第二十三話 【酒宴の罠と潜む影】

無明砦の門はついに、帝国軍の軍旗を掲げて大きく開かれた。

闇夜を切り裂くように翻る黒と金の旗は、勝利の象徴そのものだった。

その旗の下で、兵士たちの歓声がこだました。


重傷を負いながらも、レオナード・クレストは胸を張り、勝利の余韻に浸っていた。

鎧の間からは赤い血がじわじわと滲み出し、その体は痛みで震えている。

だが、その目は、深い満足感と誇りに輝いていた。


「これで蒼月の生命線は完全に絶たれた」

彼は大剣を地面に突き立てると、力強く杯を掲げた。

「兵たちよ、よくやった。今宵は豪勢に飲もうではないか!」


その声は、戦いの激闘をくぐり抜けてきた者の確かなものだった。

兵士たちは疲労と安堵を一気に解き放ち、長く続いた緊張の糸が解けるのを感じていた。


隣に立つギルベルト・アッシュフォードは、炎のような情熱を持つ男である。

その戦斧は幾度も蒼月国の兵を切り裂き、今は柄を置き、豪快な笑い声を響かせていた。


「勝ち戦の酒は何よりもうまい!」

彼は盃を掲げ、勝利の喜びに酔いしれている。

「敵兵も捕らえた! 今夜は祝杯だ!」


歓声はますます大きくなり、兵士たちの心は宴の喜びに満ちていた。


しかし、その中にあって、セリーナ・エリュシオンの冷静な瞳は揺らがなかった。

彼女は慎重に酒の樽を見つめ、一滴も口をつけずにいた。


「……この酒、何かがおかしい」

彼女の声は小さく、騒がしい宴の中でかき消されそうだったが、その表情は鋭く、警戒に満ちている。


酔い潰れ、歓喜に浸る兵士たちを見回す彼女の視線は、周囲の空気の異変を敏感に捉えていた。

「敵の策士は狡猾だ……何か仕掛けている」

その胸中には、不安と疑念が入り混じっていた。


その一方で、無明砦の城壁の外。


ジン、ユナ、レンゲの三人は影のように静かに息を潜めていた。


ジンは蒼月刀《真顕》をしっかりと握り、冷静に言った。

「酒を多めに残したのは、勝利の宴で敵の油断を誘うためだ」


その瞳は砦の門に向けられながらも、既に次の展開を見据えていた。


レンゲは唇を引き結び、冷たく微笑んだ。

「油断は最大の武器。奴らは今、酔いと勝利に浸りきっている」


ユナは氷槍を静かに握り、周囲に氷の魔法陣をゆっくり展開し始めていた。

「この夜明け前の一瞬を逃すわけにはいかない」


三人の背後、闇の砦の影から一人の影が静かに滑り出した。


月影・ミナギ。

天将七傑の一人であり、影の暗殺者。


彼女は隠密部隊を指揮し、砦の内部に潜伏していた。

兵士たちが酒に酔い、しびれ薬の効果で徐々に意識を失い始めたその瞬間を見計らい、彼女は合図を送る。


「今だ」


ミナギの冷たい声が合図となり、揺れる松明の炎が砦の門の開閉を揺らした。


門がゆっくりと開く音が夜の静寂を破る。


ジン、ユナ、レンゲの三人は影のように門をくぐり抜け、隠密部隊と合流した。


彼らの動きは静かで素早く、夜の闇を切り裂く狩人のようだった。

砦の奥深くへと潜行しながら、帝国軍の兵士たちを一人、また一人と捕縛していく。


酔い潰れ、警戒心を失った帝国兵たちは抵抗もままならず、次々と倒れていった。


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