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第四話:黒鉄の侵攻

蒼月の小村、ローク谷に朝日が差し込む頃。

警鐘が鳴り響いた。


「——東の丘に、旗印が見える!あれは……帝国の軍勢ッ!」


見張り台から叫ぶ声に、村人たちは慌てて立ち上がる。

子どもを抱えて避難する母、武器を手に集まる男たち。

だが皆、その表情には不安が濃く刻まれていた。


「……来たか。やっぱり、動きが早いな」


ジンは歯を食いしばりながらも冷静だった。


——昨日、帝国の国境警備兵が“亜人の集落を扇動する人間がいる”と報告をあげた。


それが、今回の討伐軍派遣に繋がったのだ。


「戦うしかない。でも、数が違いすぎる……!」


そう叫ぶ若者に、ユナが静かに言った。


「逃げ場はない。ならば、守るしかない」


そしてジンもまた、鋭い眼差しで言葉を紡いだ。


「この村は、ただの亜人の集落じゃない。“誇り”がある。この地で生きる者のために、俺たちは立たなきゃいけないんだ」


ユナが頷き、蒼月組の仲間たち——ガロウ、リョウカ、レンゲ

が各所へ散っていく。


「布陣完了まで三十分……それでいけるか?」


「……やるしかないさ」


ジンは剣を構えた。


その背後には、村を守る覚悟を決めた十数人の戦士たち。


そして、戦端が開かれた——。


地響きを鳴らしながら進軍する帝国の討伐部隊。

その中に、一際大きな影があった。


黒鉄の盾を携え、全身を重装甲で覆った獣人の男。

虎のような気迫と、鋼の意志を持つ者——その名を、ガロウという。


彼は蒼月組の一員でありながら、かつて帝国の戦場に単身赴き、戦い続けていた放浪の猛将だった。


「……あの旗印、見覚えがある。あれは、“第六鎧軍団”。人間ども、よくもまぁ懲りずに……」


その瞳に宿るのは、怒りでも恐怖でもない。

——静かな闘志だ。


「……そろそろ、帰る時だな」


ガロウはゆっくりと、帝国軍の前に歩み出る。


彼の姿に、帝国の先鋒がざわめく。


「獣人……!? あの装甲、まさか……“不壊の壁”!? 伝説のガロウだと……?」


その瞬間、戦場の空気が変わった。


「おい、どういうことだ!? あいつは帝国との戦で死んだと……!」


「いや、あれは本物だ……!」


どよめく兵士たちを尻目に、ガロウは構えを取る。


「ここは通さねえ。この先に進みてぇなら……」


彼は巨大な盾を地面に突き立て、獣のように咆哮した。


「俺を、超えてみろッ!!」


その咆哮を合図に、ローク谷を守る戦いが始まった。


蒼月組の猛将・ガロウが、戦線に復帰。

次なる激戦の火蓋が、今まさに切られようとしていた。

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