【番外編】―物語が始まる前―【グランディア帝国サイド】―幕僚と五剣将―
◼️皇帝アウルス・ヴァル=グランディア
「我が覇道に迷いはない。たとえ、孤独であろうとも」
アウルスは帝国の第十二代皇帝。
その知略と冷徹さで国内を統一し、“選別の時代”を掲げた指導者。
だが、幼い頃に目にしたのは、他種族との友誼を信じた父が裏切られ、斃れた無惨な姿だった。
「弱き理想は国を滅ぼす」――それが、少年時代の彼が世界に抱いた答えだった。
王とは、夢を語る者ではない。
王とは、夢を絶つ者だ。
すべては、帝国と人類のために。
その冷酷な理想の果てに、彼は「神の意志」すらも疑わなかった。
◼️軍師グレン・リヒト
「愚か者は理想を語り、賢者は未来を織る」
グレンは平民出身の天才。
戦術、外交、内政……すべてを数字で捉え、合理で動く非情な策略家。
だがその裏には、かつて人間と亜人が共存していた村で過ごした記憶がある。
仲の良かった獣人の少女が、帝国兵に「危険分子」として処分された――
それ以来、彼は「情を捨てて国家の歯車に徹する」と決めた。
今の帝国を動かす頭脳として、感情を封じ、理を以て殺す。
その先に何があるのか――彼もまだ、知らない。
【グランディア帝国:五剣将】
①レオナード・クレスト 〜獅王の矜持〜
「忠義とは、己の誇りを賭けることに他ならぬ」
帝国屈指の名門クレスト家。レオナードはその嫡男として生まれた。
彼は幼い頃から騎士道精神を叩き込まれ、剣と忠誠を磨いて育った。
だが、帝国が次第に「他種族の排除」を強めていく中、迷いが生じる。
「この道は本当に正しいのか――」
しかし、父の最期の言葉が彼を奮い立たせた。
「強さは、王の盾となるためにある」
その日からレオナードは皇帝アウルスへの忠誠を誓い、己の信念を封じた。
“自分の正義”ではなく、“帝国の正義”のために――。
②ギルベルト・アッシュフォード 〜灰塵の大斧〜
「殺すのが楽しい? 違うな……砕けるのが美しいんだ」
彼は生まれながらに「破壊の快感」に魅せられた。
貴族の落胤として生まれたが、幼少期から暴力でしか感情を表せなかったギルベルト。
学問も礼儀も興味はなく、ただ巨大な斧を振るい続けた。
兵士を叩き潰し、敵陣を粉砕し、軍功を重ねるうちに五剣将に昇りつめる。
誰もが彼を「狂人」と恐れるが、彼にとって戦場こそが唯一「孤独を忘れられる場所」だった。
③セリーナ・エリュシオン 〜雷槍の貴婦人〜
「私の槍は舞うためにある。戦場を、私の舞台に」
帝都エリュシオン家の令嬢。名門中の名門に生まれた彼女は幼い頃から「完璧」であることを求められた。
貴族社会の虚飾に嫌気が差し、戦場という"真実"の場に身を投じる。
雷槍の使い手として頭角を現し、独自の戦闘美学を確立。
誰よりも優雅に、誰よりも冷酷に。
戦場は舞台、兵士は駒、勝利は喝采。
彼女にとって、戦は芸術だった。
④ヴァルド・ディーゼル 〜黒鉄の防壁〜
「盾は折れぬ。折れてはならぬ」
帝国辺境の農村出身。貧しい生まれだったが、鍛冶屋として働きながら鍛えた肉体と精神で軍に入隊。
「守る」という一点にこだわり続け、仲間を一人も死なせない盾兵として頭角を現す。
無骨で口数は少ないが、背中で語る男。
五剣将の中で最も「兵からの信頼」が厚い存在。
帝国の“矛”が増す中で、彼だけは“盾”であることをやめなかった。
⑤ラウル・フェルディナンド 〜戦場の舞踏家〜
「戦とは、狂気を整える芸術だ」
元は帝国中央劇団の舞台演出家。
戦場の混沌と人間の恐怖に惹かれ、戦術家へ転身。
軍配と細剣を使い、敵の動きを読み、味方を導く。
彼の戦は演目。敵も味方も、舞台に立つ役者。
すべては勝利という“結末”のために。
華やかに、残酷に、彼は戦場を演出する。