表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/76

第十話:覚醒せし蒼月の誓い

ローク谷を後にしたジンたちは、情報のあった「東の隠れ里」へと向かっていた。雪解けの小川がさざめく静かな山道を進むと、やがて霧に包まれた小さな村落が姿を現す。


そこに、彼はいた。


白銀の髪を風に揺らし、端正な顔立ちの青年が、子どもたちに木剣の型を教えていた。戦の気配を一切感じさせぬ、穏やかな眼差し。


ジンは、そっと言葉をかける。


「……《白銀の剣士》、セイリオン=アルフェクトか?」


男の動きが止まる。そしてゆっくりと振り返り、ジンを見据えた。


「——誰がその名を?」


「俺はジン=カグラ。蒼月の旗のもと、獣たちとともに戦う者だ。君に会いに来た」


セイリオンはしばし沈黙し、やがて微笑んだ。


「……なるほど。ならば、その目に宿る炎に免じて、少しばかり話をしよう」


その晩、囲炉裏の前で、二人は長く語り合った。


ジンがこの世界に現れ、ユナと出会い、蒼月国を立ち上げるまでの経緯。亜人たちが抱える絶望と、抗いの志。セイリオンは黙って聞いていたが、やがて言った。


「君の言葉に、誇りを感じた。……ならばその未来を、私の手で支えよう」


ジンは立ち上がり、改まって言葉を投げかける。


「俺の右腕として、戦ってほしい。知略と剣をもって、この混沌を切り裂いてくれ」


セイリオンは静かに膝を折り、礼をもって応える。


「この身、この知、この剣。すべてを捧げよう。ジン=カグラ、貴君の覇道に」


ユナはそれを見て、微かに目を細めた。


「……蒼月は、強くなるわね」


そして数日後——


霧深き《翠月の丘》に、ユナ率いる亜人たちの中核部隊が集結する。


そこには、すでに名を馳せ始めていた者たちの姿があった。


・すばしこさと鋭い感性を持ち、ユナのもとで鍛えられた遊撃剣士。——レンゲ

・獣の壁たる堅牢な守護者——ガロウ

・風よりも速く拳を撃ち込む、狼の拳闘士——シン

・毒を纏う幻術の使い手、冷静な美貌の剣士——シュイエン

・灼熱の戦場を駆ける炎の猛虎——カンロウ

・戦場の機微を読み解く、冷静沈着な槍士——ユズハン

・そして月の影を纏い、暗殺と諜報の達人——ミナギ


ユナが静かに歩み出て、その前に立つ。


「諸君。これより、我が“蒼月”を束ねる精鋭として、あなたたちを任命する」


彼女の手が、一本の古代槍を掲げる。それはかつて白虎族の王が持っていたとされる、象徴の槍——《霊牙》。


「この誓いのもと、あなたたちは“天将七傑”として、獣王と蒼月の未来を背負うこととなる」


ユズハンが一歩前に出て、短く礼をした。


「名誉にございます。我ら、命を懸けてお応えいたします」


ガロウも腕を組みながら静かにうなずく。


「この命、ジン様とユナ様に預ける」


リョウカはくすりと笑って、ジンに視線を向けた。


「ようやく、本格的に“面白く”なってきたわね」


ジンはその場に立ち、全員を見渡すと、一言だけ口にした。


「ありがとう。これより、俺たちは——戦場の狼となる」


天将七傑、ここに誕生。


その旗の下、蒼月国は真の反攻の狼煙を上げた。


そしてジン=カグラという異世界の来訪者は、ようやく真に仲間たちとともに、「国」としての最初の一歩を踏み出すのだった——。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ