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22 部屋の外に出るとそこには


 部屋の外に出ると、そこには邪魔者が居た。


「邪魔者とはなんだ!」


 しまった、声に出ていたらしい。


 扉の外に居たのは、皆様ご存じマイケル=ミゼル=マグネリアだ。

 なんということだろう。

 マグネリア王国の王太子殿下は、隣国からやってきた、いたいけな王女の部屋の前に陣取り、王女が部屋から出てくるのを今か今かと待っていたのだ。


「夜這い……!」

「違う!!!」

「私を待っていたんですよね」

「それはまあ、その、そんなところだ」

「部屋から出てこなかったらどうするつもりだったんですか?」

「……」

「お部屋に入ってきてしまったり」

「侍女に寝たかどうか確認させようと思っていた」

「リオナとルイーゼは夜遅いのでもう下がりましたよ」

「……」

「もしかして毎日、この時間に私の部屋の前に?」

「君はどこに行く気なんだ。ミゲルの部屋じゃないだろうな」

「アイリス姉さまの部屋です」

「そんな恰好で?」


 マイクが複数の感情を乗せた目で、私の躰をなめまわすように見てくる。

 あまりにもじっとりとしたその視線に、私は出来心で、ちらりと足元のガウンの裾をひらめかせてみた。


 すると、飛び上がったマイケルは何もないところで足をもつれさせ、近くにあった高そうな植木鉢を巻き添えにして地に倒れ伏してしまった。ドシャガシャドカーン!という痛そうな音が廊下に鳴り響き、音を発生させた張本人は、壁に頭を打ち付けて気絶している。


 なんということだ。

 出来心で、この国の王太子(の意識)を落としてしまった。

 まだ中身が見えるほどめくってないというのに。


「どうしましたかーっ!?」

「お、王太子殿下!?」

「なんということだ、高価な植木鉢が全損――!」

「ヴィオレッタ様、そのような恰好でどうされましたか!?」


 夜中の廊下の大音量に、夜番の兵士や侍従侍女達が駆けつけてきてしまった。


 現場は隣国から嫁いできた王女の部屋の前。

 割れた植木鉢の近くに倒れ伏す自国の王太子。

 そして部屋の入口付近に立つ、レースの施された真っ黒なガウンに身を包む、就寝前の姿の隣国の王女……。


「……夜這いに失敗したみたいで」


 王宮使用人達は、プロなのだ。

 見てしまってはいけないものを見た時の対応を心得ている。


 ふわりと謎の微笑みを浮かべた彼らは、よけいなことを言わずに粛々と植木鉢と王太子を片付けて去っていった。


「命に別状はないようです」


 応急処置をした兵士が去り際にそう言っていたので、多分マイケルは大丈夫なのだろう。

 それにしてもちょっと可哀そうな気もするので、明日は念入りにマイケルを慰めた方がいいかもしれない。


 それはそれとして、辺りが静まり返ったのを確認した私は、ようやくアイリス姉さまの部屋に向かって出陣した。


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