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第六話 トールの決意


トールは急いで着替え、温泉の外に出た。

ゆったりとした着物に身を包み、駆け足で向かった。


(マスターは…。自分の事だって大変なのにボクの事まで心配させちゃうなんて…!

もう!ボクってなんてバカなんだろ…。

マスターの事…何にも分かれてないじゃん…!)


しかし何やら前にある自販機に人だかりのようなものができている。

その中心に居たのは…。


「ま、マスター!?」


「と、トール…!?」


話の内容から察するに事情はこうだ。

どうやらマドカがそこにいる大人達にぶつかった際に持っていたジュースが服にかかってしまったらしい。


だが、それにしては度が過ぎている。

大人達は段々と手をあげ始め、事態は悪化の道を辿っている。


「マスター!」


トールがマドカの近くまで駆け寄ると大人達の視線がトールにも向かった。


「と、トール。俺は大丈夫だから離れてろ…。俺が悪いんだしな…。」


「そうだぜ。このガキの言う通りだ。向こうに行くんだな。テメェも殴られたくなきゃな!」


その言葉がトールを怒らせてしまった。

トールは大人達の方を見る。


「マスターの前から、消えろ。」


その目は、かつてのエイのような凍てつく冷たい目。

まるでゴミを見るような目で大人達を圧倒した。


「な、なんだコイツ…。」


「チッ……。次はないぞガキ…!」


大人達は早々と逃げ出していった。


「トール…巻き込んでごめ———」


マドカが謝ろうとするとトールが抱きつく。

トールの身体はさっきまで温泉に入っていたのでとても暖かくポカポカしている。


「ますたぁ…。ボクマスターの事全然わかってあげれてなかったんだ……。それなのにマスター達に迷惑かけちゃって…!」


「お、おい…。俺は迷惑だなんて思った事ないぞ?」


マドカの言葉にトールは、はにかんで笑った。


「ふふっ…。マスターはやっぱり優しいねっ…。」


近くにあった椅子に2人で腰をかけトールにジュースを買う。


「マスター…。ボクね、決めたんだ…。ライブ、頑張るよ…!だから絶対観に来てね…!」


トールは懐のポケットのようなところからチケットを4枚出し、マドカの手に握らせた。

しかしその手は震えている。


(まるで最初の頃の俺とルルの時みたいだ…。)


マドカはふと思い出した。

あの時はルルが優しい言葉をかけてくれて俺は立ち直る事ができた。

なら俺もすることは決まってるよな。


「うん!勿論だよ。絶対観に行くから応援してるぜ、トール!!」


マドカはトールの手を強く握り返す。

トールは1粒の涙を流しながら、今までに見たことないぐらいのとびきりの笑顔を見せた。


「ありがとう、マスター!」



———————————————


「よし、みんな行こうか!」


「うん!」


ついに迎えたトールのライブ当日。

俺はルルとアスカを連れて会場に向かう。


昨晩、温泉の時にエイが来ていたらしいがまたどこかへ行ってしまったらしい。

だが、ルルが言うにはトールのライブにも来るそうだ。


4枚のチケットを握りしめ、会場へとたどり着く。

そこで真っ先に目に入ったのはとんでもない人の数だった。


「わー!すっごい人だね!」


ルルが驚いて声をあげた。



「す、すごいな。この人の量。」



「さ、流石トップアイドル、トールのライブ…。生で観れるのが奇跡ぐらいなんだよ…?」


俺が圧倒されているとアスカも目を見開いて言っていた。

改めてトールの凄さを目の当たりにした。


そして空を見上げて心の中でつぶやいた。


(トール…。がんばれ…!)


俺たちは会場へと足を踏み入れた。




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