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第四話 旅行に行きたい!


「マスター!私、旅行に行きたいな!」


ルルが旅行に行きたいと言い始めた。

どうやらこっちの世界にも慣れたらしく、色んな所に行ってみたいそうだ。


「旅行かあ…。確かに考えてみれば俺も行った事ないし楽しそうだな!」


「やったあ!!ね!アスカも一緒に行こうよ!」


俺が了承するとルルはご飯を作っていたアスカにも呼びかける。


「旅行?良いけど泊まるとこはどうすんの?私たち、まだ大人じゃないから宿とかってとれるのかな?」


「あー、それなら大丈夫だ。勝手に親の名義使えばオールオッケーだよ。」


「あー…。そうだったね…。」


何食わぬ顔でさらりと言う俺にアスカの顔が少し曇った。

俺の親は超がつく程放任主義なので全くと言って良いほど家に居ない。

て言うか、もう顔すらも忘れてしまいそうなぐらいだ。


「あ、そうだルル。念の為にエイにも連絡しといてくれないか?来てくれるか分かんないけど。」


「おっけー!言っとくね!」


ルルが元気に返事をする。

勿論、エイはスマホやその他連絡できる物など持っていないのだがルルの力を持ってしてならばその点は問題ない。

何故なら心での会話が可能だから。


驚くべき事にエイは多少なら反応してくれるらしい。

ルルが何度もめげずに行ってくれたお陰だ。

俺のこの前の行動も無駄じゃなかったと思うと本当に救われた気持ちである。


俺はアスカの作ってくれたご飯を3人で食べた後、どこに行くかとかどこで泊まるかと話し合い、旅行を一週間後とし予約をした。

もちろん、予約した人数は俺、ルル、アスカ、エイの4人だ。



そして迎えた当日。


「うわ〜!!すごいね!これが電車かあ!」


ルルは初めて乗る電車にテンションが上がっている。


「俺も初めて乗るけど、なんかワクワクしてきたな!ルル!」


「だよねだよね!マスター!」


「はあ…。ルルはともかくマドカまで乗った事なかったなんて知らなかった…。」


電車初心者である俺とルルはテンションマックスだが、唯一電車経験が豊富なアスカに頼り切りだったのでアスカは疲れ果てていた。


「はは…。ごめんごめんアスカ…。任せちゃって悪いな…。」


「いいよ。私も旅行楽しみなんだしっ!」


「さあ!乗ろ!マスター!アスカ!」


ルルが俺とルルを引っ張って電車に乗せる。

俺は基本、こうして誰かと出かけるなんてした事がなかった為、なんだか心が踊る。

何よりアスカも楽しみにしていてくれたことが嬉しかった。

エイは…来てくれなかったが…。


ガタンゴトンとしばらく電車に揺られていると何やら後ろの席から声が聞こえてくる。


「やだよ!ボクには出来ないよぉ…。」


「大丈夫。あなたなら出来ますよ?なんたって今一番注目のアイドルなんですから!」


「そ、そうやってボクにプレッシャー与えるんだ…。」


「違いますよ。本当にあなたなら出来ると信じてるんです。今までだってやってのけたじゃないですか!」


どうやら少し揉めている様子。


「マスター…。後ろの人達、どうしたのかな…?」


「うーん、何かあったんじゃないか?」


「ま、マドカ?もしかして後ろの人たちって…。」


アスカは俺たちの向かい側の席に座っているので後ろが見えるらしい。

だが、驚いているらしいのでどうしたのだろうと思って俺も後ろをチラッと見てみた。


席と席の間から見えたのは…。


薄い桃色に輝く髪を耳の横で三つ編みにし、その姿はスタイル、容姿、どれをとっても完璧としか言いようのない程の美少女であった。


が…彼女は膝に顔を埋めて泣いている。

少しだけ見える顔でも彼女が凄まじい程の美少女だと言えるのは簡単なことだった。


「き、君は…!!」


俺は彼女の姿を見た途端勢いよく立ち上がってしまった。

そう、俺は彼女を知っている…。


「も、もしかして…マスター?」


俺の言葉に彼女も顔を上げた。


「君…。トールか…?」


すると彼女は顔をパアアと輝かせて俺の方に駆け寄ってきた。


「ますたああ!!会いたかったよお!!」


トールが勢いよく俺に抱きついてきた。


(む、胸が…。)


トールの大きい胸が俺に当たっている…。

俺は顔を少し赤くしたがトールと出会えた事に嬉しさを感じていた。


そう、トールこそ俺の漫画のキャラの1人だったのだ。


「俺も会えて嬉しいよトール。でもどうしてこんなところにいるんだ?」


「それはね———」


「え?トール?」


「ん…?その声…!もしかしてルル!?」


トールの姿を見てルルが顔を出した。

何を隠そう、ルルとトールはとても仲の良い友達なのだ。


「わー!!トールじゃん!久しぶり!こんなところで会えるなんて!」


「ボクもびっくりだよルル!会いたかった!」


2人が仲良さそうに話している。

ルルとトールはとんでもないほどの美少女なのだ。

2人がいる空間だけ神々しく見える程である。


「う、嘘…。マドカとルルってあの''トール''

と知り合いなの…?」


「ん?なんでトールの事知ってるんだ?アスカ。」


「な、なにってアンタ!ホラ!!」


アスカはそう言って俺の前にスマホを突きつけてきた。

そこにはこう書いてある。


「超人気若手アイドルトール!!今一番の注目だ!!」


そうだったのか…。

トールはこっちでも…。


「失礼します、トールさん。こちらの方々はどちらですか…?」


近くに居たスーツを着た女の人が話に割って入ってきた。

特に俺の方をジロッと見たようだが、なんだろう…。こわいな…。


「この人はボクのマスターだよ!親のような人なのです!」


トールがムッとした顔で言う。


「お、親…?」


「え…えと…まあ親族です。」


トールの言葉で困惑してしまったようなので俺もこれ以上場を混乱させないためにフォローに入った。


「そうでしたか!そうとも知らずに失礼しました。私はこう言った者で、そちらのトールさんのマネージャーをさせていただいております。」


俺はスッと差し出された名刺をみる。


「アイドル育成所 マネージャー 桜 エリ」


どことなくホッとした様子のエリさんを見て俺は思った。

それじゃトールはやっぱり…。


俺の頭には自分が描いた漫画のあるシーンが浮かんでいた。


『観客を熱狂させステージの上で歌うトール』


漫画でもトップアイドルのトールはきっとアイドルが天職なのだろう。


「そんな事より、マスターはなぜここにいるんです?」


トールが俺とエリさんの会話に入ってくる。

エリさんは「そ、そんな事だなんて…。」と悲しそうにしているがトールはお構いなしのようだ。


「俺たち、今から旅行に行くとこなんだ。」


俺の言葉を聞きトールが目を輝かす。

その目を見たエリさんは「ま、まさか…」と何かを察している。


「マスター!ボクも旅行行きたい!」


「「えーー!!??」」


エリさんとアスカが同時に叫んだ。


「やったあ!!マスター良いよね?」


ルルは嬉しそうにしている。


「だ、ダメですよトールさん!これならリハもあるしそれに打ち合わせだって色々と…。」


「いいじゃん…!!」


トールはこれからライブなのだろうか?

エリさんの言う事も分かる。

分かるのだが…。


「ますたあ…。お願い…。」


トールがウルウルした目で俺を見てくる。

想像を絶する美少女からの上目遣いからのお願い…。

これを断れる人間はこの世に存在するのだろうか…。


そんなこんなで俺の心はグラついてしまった。


「エリさん……。その…。トールも連れていっても…良いですか…?」







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