作戦会議-2
ガワについての説明を終え、再びダリウスは作戦について話し始めた。
ダリウスは、ホワイトボードに三つ箇条書きにして書いた。
1.ガワを脱ぐ場合(任意のタイミングで素体に戻り、任意のタイミングで再度ガワを装着する生活を繰り返している。ガワは一種類のみ)
2.ガワを付け替える場合(任意のタイミングで様々な種類のガワを装着する生活を繰り返している場合。また、ガワの交換はMAV、虫などが入り込めない場所で行うと仮定)
3.ガワを装着したまま生活し続ける場合
「特定する方法はいくつかある。俺とマーブで考えた」
マーブが得意げに両手を挙げ、微笑む。
ダリウスは咳をし、「まず、1の場合だが、一定時間はガワを着てジャネットと接触、ジャネットとの接触が終わったら、ガワを脱ぐという方法を想定している。そうすれば、素体の本当の姿を見ることができないからだ。2の場合は、ジャネットに見せている姿とは別のガワを装着すると考える」ダリウスはそれらをホワイトボードに書いた。
「1、2、3、すべての方法で遺伝子操作された線虫を使う」
「MAVではなくて。ですか?」
「そうだ。MAVは、線虫が集めた情報を収集する任務につくだけにする。セイバー社の関連企業だ。MAVへの対策は万全だろう。なので、単純な信号しか出せない線虫を使う。埃サイズのドローンまで見つけ出すレベルのセキュリティだった場合は、また考えなければならないが。MAVの仕事は線虫の出す信号を収集することと現在位置を把握するのみだ。そのため機能や移動能力が限定される代わりにサイズの小さい物を使用する」
ダリウスは言葉を切り、「まず、1のガワを脱ぐ場合への作戦だが、線虫のフェロモンを使う。入退出時の社員や空調を使い、建物内の全社員に線虫を貼りつかせる。これを何段階にも分けて行う。MAVは規則性のない動きをする埃型の物を多量投入する」
ダリウスは線虫の画像を表示。透明なミミズのような物がシャーレの中で動いている。
「この線虫は繁殖時に、お互いが餌を取り合わないように、あるフェロモンを分泌する。そして、別個体のフェロモンを感知すると、ある信号を出すように遺伝子操作されている。この感知には歩行時にすれ違う程度で感知するように設定した」
皆がぽかんとしているのを見て、ダリウスは人の絵と、そこに付く点を書いた。
「この線虫は他の個体のフェロモンを感知すると、信号を出す、つまり、社内で多くの人と接触する人物はそれだけ線虫からの信号が増える。対して、ガワを着ている人物は、ガワによって線虫の感知を遮断してしまう。そのため、信号が極端に減り、その位置情報をつかめれば、ガワの人物を特定できるという訳だ」
1.ガワを脱ぐ場合
→フェロモンを出す線虫を使い、信号が少ない人物を特定する。
ダリウスはホワイトボードに情報を書き足す。
「だが、この方法は、ガワを付け替える場合は有効ではない」
「1と違って、素体で出歩いてくれないですからね。2つのガワに貼りついた線虫からそれなりの信号が送られてくる訳だ」
「この場合は、汚い方法になるが、便からスパイを特定する。まず、食事の際に、MAVを使い、非常に小さいカプセルを会社内の全員に飲ませる。カプセルには特殊な薬品が入れられており、これが消化器官の特定の場所で溶け、便に混ざる。薬品は一人ひとりに別なものを飲ませる。で、その便を線虫を使い、調べる」
マーブが下品な笑みを浮かべる。
「どういうことでしょう?」ロバートが聞く。
「いくらガワを交換しても、素体は一人だ。食って、出るモンは一種類だろ。だが、ガワを交換しているということは、複数の人物から同じ便が出るという訳だ。それでガワを装着していると分かる」
「なるほど、ですが、その作戦が使えなかった場合はどうするんです?」
ダリウスは腕を組み、微かにうなる。
「何らかの方法でジャネットを使い、記憶の改ざんを行っている者をおびき出す」
マーブは目を細め、「どうおびき寄せるかはわかりませんが、何をするにも敵は出来るだけドローンを使うと思います。本人が現れることは稀なのでは?」
「俺もそう考えた」
ダリウスは奥の手について話し始めた。




