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譲り羽  作者: 天野鉄心
第三章 広がる波紋
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第五次新皇居奪還任務 ②

 会議室を出て南あわじ署の駐車場へ出ると、すでに機動隊員たちは整列しており、揃いの制服と防具が整然と並ぶ様は大変に心強い。

 各中隊補佐官から、人数・装備共に異常なしの報告を受け、中嶋は機動隊員たちの前に立つ。


「諸君! 五度目の皇居奪還である! 建設途中の皇居を例え少年であれ占拠せしめることは非常識この上ない。これを許したままにする刑事警察機構であってはならない。これまでの四度の奪還に参加した隊員も居ると思うが、現場(げんじょう)では人智を超えた抵抗があると報告されている。その為、僅かな異常であっても連絡を取り合い、無理をせず損害のないように努めてもらいたい。だが、この一件を自衛隊に引き継いだり、これ以上拡大させるつもりはない! この第五次任務をもって終息させる気概で挑んでもらいたい! 以上、出発!」


 中嶋の訓示の後、補佐官らの号令で隊員たちは輸送車へと乗り込み、指揮車に追従して南あわじ署を後にした。

 橋を渡って三原川沿いを南下し、国道28号線を南西へと下ってから賀集(かしゅう)地区を目指す。

 阿万(あま)の手前で近藤警視率いる二個中隊は賀集牛内へと別れ、中嶋は敬礼一つを返して賀集生子(せいご)を目指す。

 大日川ダム近辺へと到着すると、道路封鎖を行っていた警察官がパトカーを移動させ、封鎖のパイロンを片付けて敬礼の姿勢を取る。

 新皇居建設に伴って道幅が拡充されてはいるが、ダム湖をなぞるように上って行く舗装路はなかなかに険しく、緩やかに右に左にと揺られながら木々の合間を進む。


 地図上ではまだしばらく林の中を通るはずなのだが、皇居まで二〇〇メートルというところで急に林が開け、舗装路は地図通りだが周囲は更地になっている場所に出た。

「ここが例の場所か?」

「そのようですな」

 指揮車の速度を落とさせつつ、中嶋と鈴木は近藤の報告通りの景色に唖然とした。


 資料として閲覧した航空写真では舗装路の両側は山林で、このような開けた場所は存在していないし、舗装路の先の外塀や両開きの門も存在していなかった。しかも一度奇麗な半円形に掘り返した後に砂利や土砂を敷き直して更地にしたような違和感がある。

「近藤君の言っていた門とは、アレ、ということですな」

「……正門ですらないということか」

 停車させた指揮車で中嶋と鈴木は少なからず動揺した。

 資料として閲覧した皇居の完成予定図と大きく違っているし、皇居を占拠している容疑者は少年二名と聞いているが、目に見える景色の変容は少年二人が一週間やそこらで成し得る作業ではないと想像できたからだ。


 ――だがこれは任務だ。近藤の弱音に引っ張られてはいけない――


 中嶋は深呼吸のあとに奥歯を強く噛み、自らの背後に続く百七十余名に示すべき志気を奮い立たせる。

「一中隊を正面の門へ展開。放水車はその後ろで待機。二中隊は道路上で待機だ」

 中嶋の静かな指示は即座に伝令が無線で伝え、輸送車二台と放水車が指揮車の傍を通り過ぎる。

 輸送車は左右に別れて停車し、小隊ごとに割り当てられた番号順に、正面の門を扇状に囲む形で並ぶ。

 機動隊員の配置が整う頃に放水車は進み出て、門を真正面に睨む位置で停まった。


 隊員達の素早い行動を見つめながら、中嶋は伝令に確かめさせる。

「三、四中隊の配置はどうか」

「……四中隊は予定のポイントの目前まで移動中。…………三中隊はしばらくかかる模様」

 数度の無線のやり取りのあと、返ってきた情報に中嶋は焦れる。が、三中隊は新皇居北側から道なき山中を抜けて東から皇居に迫る段取りになっている。この遅れは仕方のないことだと割り切った。

「三中隊には、後詰めの後詰めになってもらう。正面の動きに惑わず、配置について指示を待てと伝えよ。四中隊もポイントに到着したら指示があるまで待機だ」

「了解」


 伝令が中嶋の命令を伝える合間に、鈴木は独り言のようにつぶやく。

「あれは、鳥、かな?」

 さてこれから突入の号令をかけようかという時に、間の抜けた鈴木の一言につられて中嶋の視線は空へ向いた。

 久しぶりに雲の少ない七月の青空に、白くて小さい塊がヒラリヒラリと円を描いて舞っていた。

 鳥と言われれば鳥に見えたが、翼を羽ばたかせているように見えないし、コンビニ袋が風に弄ばれているのかとも思うが、周囲の木々は揺れていない。

 見てる間に白い物体が行く手を遮る門の上空で『8』の字を描き出したので、中嶋は双眼鏡を取り出してその正体を知った。

「紙飛行機、か?」

『V』字型の天面を翼にして下方に持ち手が突き出した形は、誰もが子供の頃に折り紙で作ったことのある簡素な紙飛行機に違いない。

 しかし、円を描いて飛び回った後に『8』の字に飛び方を変える紙飛行機など存在するわけはなく、中嶋の言葉尻には『?』が付いた。


「あれ?」

「こっちに来るぞ?」

 指揮車の運転手も伝令も、任務を忘れて紙飛行機に注意が向いている。

「なんだ!?」

 一直線に指揮車に向かってきた紙飛行機は、フロントガラスに当たる直前にパッと広がって元の四角い紙の姿に戻り、音も無くフロントガラスに張り付いた。

「現状維持!」

「げ、現状、維持!」

 驚いて後ろに仰け反った鈴木を捨て置き、中嶋は紙飛行機に気付いて態勢を崩しかけた隊員を叱った。

 伝令は中嶋の強い声に引っ張られる形で無線を使った。

「無駄な抵抗はやめて帰ってくれ、だとぉ!?」

 フロントガラスに張り付いた紙片に書かれた文面を読み、鈴木は呆れとも怒りともつかぬ声を上げた。中嶋もカッと頭に血が上りかけたが、鈴木の声で辛うじて感情を諌め、口から出かかった罵声を飲み込んだ。

 言葉を発さなかった中嶋を非難するように鈴木が中嶋の方を向いたが、眉間にシワを寄せた中嶋の形相に満足したのか、非難の言葉は収めた。

「これは、なめきっています。ご指示を!」

 代わりに任務遂行を急かす鈴木に、左手を上げて制止し、中嶋は時計を確かめた。


 ――完全ではないが他にやむ無しか――


 三中隊と四中隊の配置完了の連絡はないが、犯人が機動隊の現状を把握している時点で包囲を完成させる意味はないと考え、中嶋が前進の指示を出そうとした刹那。

「なんっ!」

「馬鹿な!」

 フロントガラスに張り付いていた紙片の文章が書き換わった。

「……北からの、包囲も、無意味……」

 鈴木は驚きや恐怖で震える体のまま文章を読み上げ、魂を抜かれてしまったように座席に崩折れた。

「見えているのか!」

 鈴木とは対象的に中嶋は意味不明な怒りが湧き上がり、手近な座席に拳を叩きつけた。

 丁度、伝令の座っていた背もたれだったので、無線を終えたばかりの伝令は酷く驚いたが、中嶋の挙動に驚かされる前に無線の内容に震え上がってしまっていて、中嶋を振り向いた時には顔色はすでに悪かった。

「け、警視殿……」

「なんだ!」

「三中隊も、四中隊も、正体不明の壁があって、前進不可との、連絡がありました」

「正体不明とはなんだ! 詳しく伝えるように聞き直せ!」

「は、はい」

 中嶋の剣幕に気圧されながら、伝令は弱々しい声で返事をして無線を取る。

「鈴木! 鈴木翔平警視! シャンとせんか!」

 中嶋は遂に鈴木を怒鳴りつけ、警視として機動隊一個中隊を率いる指揮官が、手法の分からない手品に放心して怯えている姿に喝を入れた。

 だが鈴木は明瞭な反応を示さなかったので、ベストタイプの防具を引っ掴んで引いてやったが、揺さぶられるに任せたまま鈴木は動かなかった。

「度量なしめ! 伝令! 三・四中隊の返事はあったか!」

「は、はい。透明の壁か、エアクッションの様な物体に阻まれている、とのことで、体当たりをしても、跳ね飛ばされる、そう、です」

「非科学的な!」

 すっかり怯えきってしまっている伝令に吐き捨て、中嶋は指揮車を一旦降車して、指揮車後部に据え付けられた指揮台へと上がる。


 選挙カーの様なステージではないが、市販の四輪駆動車の屋根に人が立つスペースと大仰なスピーカーが二台取り付けられていて、周囲の見晴らしは良い。

 ザッと機動隊員の配置を見渡し、中嶋は即座にマイクをオンにして指揮を奮う。

「……総員、列を保て。一の四、前進して障害がないか確認。他の小隊は状況に合わせて動けるよう、態勢整え」

 伝令の無線が耳に入ったからか、動揺の見える隊員を集中させるために、中嶋は車中よりも感情を抑えて指示を出した。

 その指示を受け、列の先頭は強化アクリル製のシールドを構え、後ろの隊員たちは腰の警棒に手をかける。


『一の四』とは一中隊第四小隊の略称で、現状の布陣では指揮車の目の前、門の正面に居る小隊だ。


 先頭の隊員が最後尾の小隊長に振り向き、頷きかけて立ち上がると、ゆっくりと前進しながら扇状に散開して詰めていく。

 中嶋は指揮車のお立ち台から『一の四』の前進を見守りながら、左右の山林と上空に異変がないかの警戒も怠らない。

「なんだ? 何をしている?」

 中嶋は訝しんで『一の四』の挙動に目を凝らす。

 ゆっくり、一歩ずつ確かに進んでいた隊員の一人が、首をかしげながら両手をパタパタと振っている。いや、作動しない自動ドアを触って確かめている様な動作だ。

 やがてエンジンストールを起こしてしまった自動車を体全体で押すような姿勢になり、物体など存在しない虚空を押し始める。

 だが隊員の体は前進することなく、足元の砂利が押しのけられるだけの珍妙な光景が続く。


 突然展開されたパントマイムに、待機中の隊員たちも緊張感が薄れ、態勢を変えて腰を浮かせたり覗き込んだりし、列が乱れ始める。

 さすがに訓練された機動隊員たちなので私語を交わしたり笑ったりはしないが、明らかに統制が乱れ始めている。

 中嶋はマイクを取って喝を入れようとしたが、その前に『一の四』の小隊長がパントマイム中の隊員に近寄っていき、陳腐な動きをやめさせる。何言か言葉を交わしたあと、待機中の小隊長たちに統制を保つような手振りをしたので、中嶋はマイクを下ろした。


 中嶋が見守る中、小隊長は細かく指示を出したようで、隊員五名に警棒を持たせて間隔を開けて立たせた。

「かかれ!」

 小隊長の号令がかかると、隊員たちは警棒を振りかざして虚空を打った。

 だが不可視の壁はことごとく警棒を弾き返し、何人かはたたらを踏んで後ずさり、一人の警棒が手元を離れて後方へと転がった。

「おお!」

 待機している機動隊員たちの驚きの声は大きく、最後方の指揮車に立つ中嶋の元へさざなみのように響いた。

「壁と、門の手前三メートルほどの位置に、透明な壁があります!」

『一の四』の小隊長が無線で直接報告を行ってきた。

 先程の三・四中隊と同じ内容なので、中嶋は怒りや焦燥といった感情は押さえ込み、打開策を思案する。

「よし。放水車での放水を行う。一の四は中央を開けて、放水の効果を確認せよ!」

「了解!」

『一の四』は門の正面から離れ、等間隔に並んで放水を待つ。合わせて放水車がゆっくりと前進し、放水の準備を始める。


 マイクロバスタイプの車両の屋根に張り出した放水室に隊員が座り、屋根に水平に寝かされていたノズルが僅かに持ち上がって、車内の貯水タンクからポンプで吸い上げられた水が水流となって音を立てる。

「電源、良し! ポンプ、良し! 水流、異常無し! 放水準備、良し!」

「ん。手加減はいらない。門を狙って、放水始め!」

「放水、始め!」

 放水車と中嶋の間で緊張を含んだ確認が交わされ、決められた手順を踏んでノズルの向きが調整されると、モーターで加圧された水流が白い線となって空中を突き進む。

 十気圧を超える水流は水平方向に放つ事ができ、五十メートル程の射程距離を持つ。立っている人間を押し倒し一瞬の呼吸を奪う傍ら、打撲や骨折をさせてしまっても致死性がないことから、暴徒鎮圧に効果的な手段として機動隊ではよく用いられる。

 建物やバリケードなどを破壊するような威力ではないが、放射し続けられるという利点がある。

 近藤の事前報告で『壁』というワードを聞いて即座に使用の要請をしたのだが、中嶋自身こういった使い方になるとは思わなかった。


「状況はどうか」

「変化、ありません!」

 中嶋の位置からは空中を走る白線が特定の場所で跳ね返って飛散する様子しか見えなかったので『一の四』の小隊長に確かめたのだが、返答は芳しいものではなかった。

 期待感がグングン下がっていく中、もうひと押ししてみる。

「放水車。そのまま前進することは可能か」

「低速であれば、出来ます。ですが、目標が水平より低くなると当たりません」

 放水車は暴徒などの多勢に対して距離をとって使用するためのものなので、放水車の屋根に固定されたノズルは左右への回転と水平より上向きには可動するが、水平より下向きには放水できない。もっと水圧の低い放水銃ならばタンクと繋がったホースの自由が効くので、隊員がノズルを保持して自在に照準することができるが、この放水車ではそうはいかない。

「構わん。距離を半分まで詰めてくれ」

「了解」

 中嶋の指示に従い、放水車はゆっくりと前進を始める。

 門までの距離は二十メートルというところ。

 放水を続けながら放水車が近付いているので、透明の壁に当たって飛散する水流も勢いが強まっていき、『一の四』の隊員たちは飛沫から逃れるように少しばかり位置をずらす。

「変化はないか?」

「ありません!」

 中嶋の問いに小隊長は即答する。

 続けて放水車へ指示を出す。

「少し上を狙えないか?」

「いけます!」

 こちらも即答し、すぐさま行動して放水のノズルが持ち上げる。

 と、明らかに水流の跳ね返りと飛散する飛沫の様子が変化した。

「どうか!」

「水の一部が奥へと届いているようです!」

「放水車! ヘッドライトで照らせ」

「あ! 壁は上にいくほど山なりに奥側へ湾曲している模様! ですが、水滴が垂れ落ちずに全て弾かれてます!」

「放水、もう少し角度上げ!」

 中嶋の指示にそって水流の向きが変わると、また弾かれてからの飛沫の形が変化した。

「水が壁を超えました!」

「よし!」

 中嶋は思わず声を上げた。

 任務遂行の取っ掛かりを見つけたからだ。

「一の四、登れそうか?」

「……掴みどころがありませんので一人では無理です。が、人でやぐらを組んで押し上げるようにすれば恐らく……」

 小隊長には中嶋の考えが伝わったようで、即答とはいかなかったが大変に建設的な答えが返ってきた。

「よし! 放水、やめ! 一から四は門の右側、五から八は門の左側に櫓を組んで、壁を超えて突入する!」

 号令一過、すぐさま放水は中止され、機動隊員たちは動き出す。


 中嶋は、放水車と『一の四』の報告から類推し、外塀と門を起点にして等距離で包む形で見えない壁があると考えた。諦め半分であったが、放水の角度を変えたことで水の飛散する向きが変化し、壁の形が把握できたことは幸いだった。

 一つ懸念事項があるとすれば、壁が水を弾いたあとに雫や飛沫が表面を流れ落ちない点だ。『一の四』に登坂できるかを尋ねたのは中嶋が直接壁を触っていないからで、壁が実在する物体なら僅かな窪みに手足を掛けて例えばロッククライミングの要領で登って乗り越えられるだろう。しかし、もしもエネルギーや気体の塊のような場合は、押し返されたり抵抗されたりがあって触れられないだろうから、登坂も叶わないと考えられる。

 また、仮にこの壁を乗り越えられたとしても、同じ様な障害が何重にも存在していると、その度に櫓を組んでいては皇居には辿り着けない計算になる。

 先行きに不安を感じながらも、中嶋は組体操のようにして立ち上がっていく櫓を見守る。


「中嶋警視! 三・四中隊が任務の続行を断念すると伝えてきています!」

 伝令の言葉に一瞬で激高し、中嶋は伝令を怒鳴りつける。

「理由はなんだ!」

「そ、それは……」

「理由如何では一中隊の登坂をやめさせねばなら――」

 言い淀んだ伝令を怒鳴りつけていた中嶋は言葉を止めざるを得なかった。

 二本の櫓が組み上がろうとしていたタイミングを狙うように、外塀と門の周囲が淡い光に包まれ、ハリネズミが体毛を逆立てたように無数の細い突起が突き出して、機動隊員たち全員を一度に虚空へと弾き飛ばしたからだ。

 隊員たちは口々に悲鳴や驚きの声を発しながら空を舞い、更地に叩きつけられてさらに苦悶の呻きを発した。

「今のは……なんだ……?」

 目の前で起こったことを受け止められず、中嶋は言葉を失ってただただ地に這う部下と淡く光る壁を見るだけ。

「光った棒に突き飛ばされ、ふ、負傷多数のため、だそうです……」

 自分の役割を辛うじて果たした伝令だが、説明のつかぬ事態にすでに思考は停止していた。


 ――あり得ない!――


 何がどうなったかの説明も予想もできず、中嶋の思考も否定の言葉がグルグルと回るだけだ。

 と、また壁は淡い光を放ち始め、今度は機動隊員と放水車を押しのけるように膨張していく。

「退避ー! 動ける者は怪我人を……!」

 小隊長としての責任なのか傷が軽かったからか、光の膨張に気付いた隊員がその場から逃れるように声を上げた、が、その声が届くよりも早く光に押し飛ばされ、言葉は途切れた。


 ――近藤はこれを四度も見たのか――


 中嶋は同階級の機動隊中隊長への自分の態度を思い出し、後悔と謝罪の念を抱いた。


「退避! 退避だ! 動ける者は怪我人を支えよ! 二中隊! 怪我人を収容しつつ、退路を確保!」

 指揮官としての自分の役割を思い出した中嶋は、思いつく限りの指示を飛ばし、全体へと視線を走らせた。

 倒れたまま動かない者もいる。

 流血しながらも同僚に肩を貸す隊員もいる。

 立ち上がれない同僚を引きずるようにして退く隊員もいる。

 中嶋の指示を聞いてか、後方から走り出て怪我人に取り付く隊員もいる。

 膨張した光が放水車に接触し、何トンもある放水車が押しのけられ持ち上げられて竿立ちになり、弾き飛ばされて中嶋の目の前にひっくり返って落ちた。

「警視!」

 放水車同様に機動隊員が弾き飛ばされる中、指揮車を通り過ぎようとした隊員が中嶋を呼んだ。

 恐らく早く逃げろと言いたかったのだろうが、中嶋がその隊員の方を向いた刹那、指揮車は中嶋と隊員ともども光に弾き飛ばされていた。

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