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譲り羽  ―ゆずりは―  作者: 天野鉄心
第三章 広がる波紋
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迎え撃つ力 ②

   ※


 夜も更けもうすぐ日付けも変わろうかという頃に、真は大阪市内に居た。

 田尻と紀夫にいざなわれる形で本田鉄郎ほんだてつおの元へ参じ、智明が関わっているであろう事件や騒動などを調べた結果、バイクチームWSSウエストサイドストーリーズは真をバックアップしてくれると約束してくれた。

 ただその条件として大阪へと向かうことを提示された。何のために大阪へ向かわなければならないのかまでは説明されなかったが、テツオは以前の会談で智明に対抗する手段や武装の準備があるようなことを話していた。

 そういったものを見せてもらえるのだろうと考え、真は疑うこともなく大阪行きを承服していた。


「大丈夫か?」

「気分、悪くなってないか?」

 バイクから降りヘルメットを脱いですぐ、その場にしゃがみこんでしまった真に声がかけられた。

 またもや真に付き添ってくれている田尻と紀夫だ。

「大丈夫っす。ちょっと、疲れただけですから」

「初めての高速だったもんな」

「無理ねーよな」

 テツオとその右腕でもあるWSSの幹部瀬名隼人(せなはやと)と、同じく諜報部とあだ名されるフランソワーズ・モリシャンを含めた六人でのロングライドだったのだが、この中で真だけが初めて高速道路を利用して初めて淡路島以外の道を走ったため、普段以上の緊張を感じたし、淡路島では滅多に使わない四速で100キロ以上のスピードを出したので体力を消耗してしまったのだ。

 田尻と紀夫は真と同じ400ccだが、何度も高速道路を走った経験があるのか、疲れた様子はない。

 テツオに至ってはHONDAVF750マグナという大型のクルージングバイクなので、スピードもパワーも余裕が感じられ、二本出しのマフラーとシャンと伸びた姿勢が格好良く、真は彼の後ろ姿を見て更に憧れを募らせたものだ(スポーツタイプと違って長距離ライドを想定しているので、乗車姿勢が前傾せずどっしりと乗れるので当たり前ではある)

 少し驚いたのが瀬名のバイクで、小柄な瀬名が大排気量のオフロードタイプに乗っていたことだ。HONDAのCRL1100Lと教えてもらったが、明らかに真のバイクよりシート位置が高いのに、真より小柄な瀬名はいとも容易くまたがり悠々と運転していた。

 フランソワーズ・モリシャンのバイクにも度肝を抜かれた。真が顔を出していたWSSの集まりで沢山のバイクを目にしてきたが、そのほとんどは国産メーカーのバイクで、海外のメーカーのバイクは珍しい。中でもフランソワーズの操るドゥカティは高級で、独自の機構や国産にはないデザインに真は見入ってしまったし、フランソワーズの風貌もハーフよりの彫りの深い顔で、背も高くドゥカティがよく似合っていた。


 ただフランソワーズ・モリシャンは謎の多い人物で、フランソワーズ・モリシャンは通り名で本名は誰も知らない。何歳でどこに住んでいるのか誰も知らず、その割に様々な人物と交流があり知識や情報も豊富だ。それゆえに『諜報部』などという扱いを受けているのだが、話してみるとフランクでやけにフレンドリーだったりもする。

『ヤツには気を付けろ。こっちで一線を引かないとどこまでも入ってくるぞ』

 高速道路に不慣れな真のために何度かサービスエリアで休憩をとった際、田尻はそんなふうに注意してきていたくらいだ。最も、その横で紀夫は『本名は守山(もりやま)らしいぞ』とふざけてみせた。

 どうやらモリシャン→モリサン→森山と予想したらしく、本人に尋ねたら『モリは守るの方デス』と返事があったらしい。


 どこまで本当のことが語られているのか分からないが、真の体力を考慮してもらいながら六時間以上をかけて大阪市内の目的地へと辿り着いた。

「落ち着いたか?」

「あ、はい。大丈夫っす」

 田尻たちの後ろからテツオが現れ、まだしゃがみこんだままだった真に声をかけた。慌てて立ち上がって答えた真にテツオは笑顔を見せながら、背後の倉庫らしき建物を指し示す。

「こっからが本題だからな。行くか?」

「はい。お願いします」

 ハッキリとした返事にテツオは一つうなずき、きびすを返して建物へ向かって歩き始める。

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