第一話:スキルと出会い
…転生完了…か?
先程崩れた両手の感覚が…もとに戻っている。
で…も、意識が…フラフラする…
「だめかもぉ…」
その場で僕は倒れ込んでしまった。
そして、また意識を失った。
〜しばらくして〜
「ふわぁ……」
「ハッ!そういえば学校‼…は、もう行かなくて良いのか」
そうだ…意識を失っていたんだ。転生の…副作用?的なやつかな。
それより、改めてあたりを歩いてみる。
最初は暗くて何も見えなかったが、段々と目がなれて見えるようになってきた。
…小一時間ほど歩いてみて、わかったことがいくつかある。
①ここは洞窟。しかも果てしなくデカいヤツ。
ここを出ようにも、正攻法じゃぁほぼ無理な気がする。
②僕自身について。
まぁ、端的に言うと、体の性別が女の子になっている。
…え?どういうことかわからんって?
僕も知らないよそんなもん‼
…ふぅ…少し詳しく話そうか。
先程も言った通り、僕は洞窟を散策していた。途中までは必死で気が付かなかったが、
まず、髪が明らかに伸びていた。他にも、手がすべすべしているし。でも、ここまでは別に良かったんだ。
しかしここからは!かなり重大。
今まで常日頃気にしていた、ナニのポジションが気になっていなかった。
…ウソだろ?これまでずっと携えてきた僕の相棒が…
急いで手を伸ばした。でももう手遅れだったんだ。そこに僕の相棒は…いなかった。
だけど、僕の脳みそは中二男子のままだ。
自分の体に…興味が湧いてきてしまった。
……胸を…触ってみようかな…
でもその試みは、謎の罪悪感に阻まれる。
……でも…でも誰もいないし…僕の体だし…
僕の罪悪感、もとい理性は簡単に負けてしまった。
…ふにゅ。ちょっと触ってみた。
…ふにゅにゅ。もうちょっとだけ触ってみた。
そして、体の中心あたりを触っていた時のこと。
ピコン!
という音がなる。
「うぉぉぉお!?」
えっちなものを見ていた時、親がノックせず部屋に来たときと似た驚きと焦り。
しかし今回は違う。目の前には『ステータス』と書かれたものが写る。
『ステータス』
この世界での名前:無し
種族:人魔
状態:良好
保持スキル 保有オーラ
Aランクスキル 転生者のオーラ
・超再生 ???
Cランクスキル
・回旋脚
Dランクスキル
・正拳突
・正面脚
ふむむ…
とりあえずもう一度体の中心…谷間を触ってみる。
すると…
ヒュン…
という音と共に目の前の『ステータス』は消えた。
「あっ消えちゃった…」
詳しく見たくなり、もう一度『ステータス』を出す。
……
なるほど…
下3つのスキル?は特に変哲の無いやつっぽいな。
だけど、この『超再生』ってやつは凄そうだぞ。
そう思い、おもむろに『超再生』の表記を触ってみた。
『超再生』
〔死の淵から蘇った際に、獲得できるAランクスキル。
身体に重大な欠損があったとしても、即死でない限り瞬間的に再生する。〕
空中に文字が現れた。
そして思う。これってめちゃくちゃ優秀なのでは?
…にしても、死の淵から蘇った際に、とあるが僕、死にかけたことなんて…
いや、まさか転生直後に気を失ったあれか?
…嘘だろ?あれって…死にかけだったの?僕としてはちょっと寝ただけのつもりだったんだけどなぁ…
まぁポジティブに考えよう。死にかけた…おかげ?で良さげなスキルをゲットできたんだと。
「他のスキルも使ってみよう!」
なんだか楽しくなってきたぞ。
「えーと…まず1つ目は…正面脚!」
シュッ‼
体が自然と動き、僕の脚が正面に出て空を切る。
「おぉ…!」
自分で自分の動きに惚れ惚れする。まさに正統派、勢いのある蹴りだ。
よし。こんなに強そうな蹴りなら…
僕はおもむろに洞窟の壁の前に立って、「くらえ!正面脚!」
ゴンッ‼
これで洞窟の壁は完全にに砕け散り、洞窟から逃げ出せる…はずだった。
でも現実は非情である。僕の脚が砕け散っただけだった。
「痛っっっっってぇぇぇぇぇえ‼‼‼」
何なんだこの壁…固すぎるだろ…
…それとも…僕弱すぎ…?
いやいやいやいや、そんなわけないよな。きっと最硬の素材でできた壁なのだろう。
それよりも、こんなに脚が痛むんじゃぁ…
「歩けないよぉ…」
…と思ったが…僕には、超再生があるんだったな!
やはり強すぎ。Aランクスキルっていうのはよほど凄いのかもしれん。
「じゃぁ次!えーと…正拳突!」
フォン‼
これまた美しい動き。もう自分が好きになりそうだ。
これなら…行けるんじゃぁなかろうか?
「さぁ…リベンジだ、最硬の壁!」
目をつむり、集中する。
「正拳突!」
ガァァァン‼‼ パラパラ…
今度こそ壁を砕いた…僕は確信する。
そして目を開けると…砕けた僕の右手と、ちょっと取れた壁の破片があった。
「痛いぃぃ…!!」
けど、少し痛みに慣れた気がする。
そしてここでも超再生。いやほんとに便利。やっぱり死にかけておいて良かった。
「さて…と」
僕は壁の破片を拾い上げる。
「これはなんの素材だ?」
じっくり見てみるも…なんにもわからなかった。
まぁ良いか。いつかわかるだろう。僕は破片を右ポッケに入れる。
「回旋脚は…また今度試そう」
だけど、あと2つ気になることがある。1つ目…保有オーラ。
僕は『転生者のオーラ』の字に触れる。
『転生者のオーラ』
〔異世界から転生してきた転生者全員が持つオーラ。
効果は以下の通り。
・異言語の理解、発話を可能にする。
・他人の思考の解読が可能になる。
・スキル、魔法の発動時、詠唱不要になる。
・スキル、魔法の反動が無くなる。〕
転生者が異世界で詰まないためのスキル…ってことか。
にしても強すぎないか?心読めるってのも凄いし…
そして…『???』ってなんだ?触っても反応なし。
「そもそもオーラってなんだろう…?」
まぁ、どうせ後々わかることだ。
それより、気になることその2。
…魔法は!?
僕が転生前に想像した魔法無双はーーー!?
どこ行っちゃったんですかーーー!?
おおおおおおおぉぉぉーーぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
ふぅ…
落ち着け…
そうだ。魔法は後で覚えるとか、そんな感じなんだろう。
よしよし。それなら納得が行く。
よし、落ち着きを取り戻せた。
「さて…そろそろ移動しようかn」
ドガッシャーーーーー−ン!!
「ふんぇっ?」
変な声を出してしまった。
にしても、なんの音だろう?
音の方向へ走る。
…だいぶ走ったが…なにもない。
あの轟音が幻聴…?いやいやそんな訳はない。
てか…全然疲れないな?
いや、思い返して見ればこっちの世界に来てから疲れを感じてない。
そういえば…お腹が空きもしてない。
これはもしや…超再生のおかげか?
だとしたら、ほんとに便利過ぎるぅ…
そんな事を考えている時…
バッガァーーーーーーン!!!!
「おっ!」
今度のは相当近い!
ていうかほんとになんの音なんだ?
バカでかいモンスターだったらどうしよう?
…今のスキルじゃぁ何もできないだろう
急に怖くなってきた。
でも…今はとにかく生き物に会いたい。
こちとら相当の時間ぼっちなんだよ。
途中でトチ狂って小石と3時間くらい話してたし。
…そんなわけで、音に向けて僕は走っていた。
ゴツンッ!
??
なんだ?
ぶつかり慣れた岩、壁とはまた違う。
生き物な気がする…
ハッ!もしや先程からの轟音の正体?だとしたら絶体絶命大ピンチ。
「ごめんなさい食べないでくだしゃいぃぃ…」
我ながら情けない声が出た…
「君は?追っ手なの?」
「追っ…手?違いますけど…」
フェールーーー‼‼
どこに行ったァァァァ‼
手分けして探せ!絶対に見つけろ!
「フェール?」
「私の名前だ!それより、逃げないと…! …な…なぜついてくるんだ!?」
「困ってそうだったので…それにあなたは何者なのですか?」
「それも後で、分かったなら今は逃げるぞ!一緒に!!」
現状がうまくつかめない。
でも今は、この人がピンチ!僕もピンチ!!
だからとにかく…
「逃げますか!」