表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/81

♯岡後舞魅 ―知り合い― 1

 放課後、視聴覚室にて。


 私は、目の前の人――実神鷹という人と2人きり。


 「じ、実は、その、これは罰ゲームみたいなもので……」


 「罰ゲーム?」


 ああ、と彼は頷く。


 「もしかして、ゲームで負けたから告白、みたいな?」


 「そ、そうですっ!私、あらゆるゲームが弱いんですっ!」


 弱い、というより、半ばルールがよく分からないっていうのもあるんだけど。私は覚えるのは苦手だ。


 「さ、最初は、ババ抜きで負けたんだけどねっ、それくらいで罰ゲームなんて酷いよって言ったら、今度はボーカーやったんだけど、それも負けて―――その後、ブラックジャックとか、神経衰弱とか、七並べとか……どんどん……負けていって………」


 「それって、岡後さんはカードゲームが弱いだけじゃないの?」


 「違いますっ!私……人生ゲームとかも負けたから――」


 本当は、他にも大富豪とか、オセロとかもやったんだけど、全部負けたし……。そう思って私は、そのことに関しては伏せておくことにした。


 「本当に弱いんだね」


 彼は面白そうに笑った。それは、馬鹿にしている笑いではなく、純粋な笑いだった。自然、私も笑顔になった。


 「もしかして、他にも大富豪とかやって負けたの?」


 びっくりした。まさか彼がそんなことを言い当てるなんて、全く考えてなかった。それが顔に出てしまったのか、またしても彼は面白そうに笑っている。面白そう、というより、とても楽しそうだ。


 「岡後さんって、いじめられるようなタイプには見えないんだけど………もしかして中学のころからそんな感じだったのかな?」


 「………………」


 「あ、ごめん。嫌なこと聞いたかな……。忘れて」


 「ち、違うよ……そうじゃなくて、私ね―――」


 私は、本当のことを言おうか迷ったけど、結局言うことにした。そう決断させたのは、彼のその笑顔かもしれないし、ちょっと変わった喋り方かもしれない。どちらにせよ、私にとって彼は特別な存在に見えた。


 「私、中学のことはよく分からない―――」


 「……それは、何か理由がある、よね?」


 「うん――」


 彼は、私の答えを待っている。


 

 「私、春休みより前の記憶が無いんだ――」

 

 その言葉に彼は、少し驚いたような様子の後。


 「それって………」


 「うん。記憶喪失らしいんだ」


 記憶喪失のことを最初に話す人が、まさかこんなところで会った男の子になるとは、全然思ってなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ