表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/81

#実神鷹 ―魔女― 2


 霊長類特有の感覚なのか、そうでないかはともかく、人間には予感という感覚がある。予感――。虫の知らせとも言うのだろうか。特に根拠が無いのに、何となくそう思ってしまう、感じてしまう、という非常に曖昧な感覚だ。


 第6感、なんちゃって。


 

 僕が校舎裏まで連れて行かれたときに、ふと、その予感とやらが働いたのだ。この人――普通の人間じゃない?……と。もしかしたら、魔法使いか何かじゃないのか?……と。


 で、その予感は見事に的中した。彼女は、自分のことを魔女といった。僕は魔女という概念を詳しく説明することはできないが、それが異端であることは理解している。


 あるいは異端なんかではなく、完全に人間という枠から外れた存在かも知れないということも――。


 しかし、僕としてはそれを認めるわけにはいかなかった。何故なら、僕には超能力者である友達が居るから。


 あいつは紛れもなく人間だ。超能力が使える、ただの人間。あるいは小金井だって同じことが言える。皆、特殊な能力を持った人間なんだ。


 「だから何かって?」


 要するに、今僕の隣にいるこ旭先輩は、100%人間だということだ。と、そこにまで思考が到達したところで、僕の考え事は終わる。


 「あのー旭先輩、今からどこに行くんですか?一応、目的地を教えておいて欲しいんですけど…」


 「特に決めてないよ。私が気に入った場所を見つけたら、そこで話をするつもり」


 「はぁ……で、旭先輩が気に入るような場所っていうのは………」


 「さぁ?言葉じゃ説明できないねー。私は猫みたいに気まぐれな生き物だから。一定じゃない」


 猫みたい―――か。


 動物に例えると猫、なんて言うと、可愛いキャラのことを言うんだろうが、案外こっちの性格も需要があるかもしれないな。


 僕らは、校門から出て左折。それから桜並木の道を15分ほど歩いた。今は一軒家が立ち並ぶ通りに入っている。


 ん?


 何だあの大きい家は――。何だあの豪邸――。あんなのが学校の近くにあったのか。うわ、近づくとさらにでかい。周りの家屋と比べると、明らかに浮いているレベルだ。


 旭先輩は、そんな豪邸を見向きもせず平然と通り過ぎた。まるで、この豪邸があることを最初から知ってたようだった。――いや、知ってたのか。


 


 「ま、いっか、ここで。うん。ここでいいや」


 旭先輩がそう言ったのは、その豪邸からさらに5分ほど歩いたところにあった公園だった。いわゆる、子どもが遊ぶような公園じゃない、植物が生い茂り、ベンチが置いてある、そんな公園。そのベンチに腰掛ける。


 「ほら、早く座って」


 「……………」


 言われるがままに座る。すると、旭先輩はやたら体を近づけてきた。


 「ちょ、何でそんなに寄ってくるんですか。そんなに狭くないでしょう」


 「いいのいいの。私は気まぐれなの。飽きたらやめるから」


 それは気まぐれというよりマイペースじゃないですか?先輩。あるいは、自己中……。


 「失礼ね。先輩に向かって自己中とは。お仕置きしてあげようか?」


 「なっ、何でそれを……」


 「私は魔女だよ。これくらいの読心術なんてお手のものだよ」


 うわー。


 魔女って怖い……。あ、これも読まれてるんじゃ……。


 「実神くん、物分りよさそうだし、面倒だから一気に喋るからね」


 「どうぞ」


 「うん。80点。100点はもうちょっと先かな。あ、ごめんごめん。こっからはシリアスだから」


 旭先輩は真面目な顔になった。


 「実神くんは知ってるかどうか知らないけど、この世界には一般人が知る由も無い世界が存在してるんだよ。そこでは、色々な力がぶつかりあっているんだ。勢力争い、みたいな。例えば、私が所属しているのは魔女の勢力。私はそこに所属している内の一つの義務として、実神くんを助けることを命じられた。ここまでいいかな?」


 「まぁ、何とか………」


 「じゃ、次。勢力の中には、少なからず序列みたいなものがある。私たちはできるだけ上へ上へ上って行こうとしている」


 「…………………」


 「勢力の種類は様々。魔女、魔法使い、魔術、魔道、天使、悪魔、魔神、その他の神々、超能力は、種類ごとに勢力を持っている。それと、全体を統括するものも」


 「……それで、旭先輩は魔女なんですね」


 「うん。そういうこと。でも、勢力と無関係な人間も居るよ。例えば、狩口竜なんかがそうだね。彼は超能力者だけど、勢力とは無関係の人物だよ」


 「へぇ~」


 狩口がそういうのとは無縁であると聞いて、少しホッとした。同時に、疑問が一つ。旭先輩は、最終的に何が言いたいのかということ。勿論、これから話すのだろうが、どうも読めない。相手が魔女だからなのか、それとも―――。


 「次、これが一番大事なところ」


 来た―――。


 「…………………………………………………………………………………………………………………」


 

 !!!!!


 


 「―――理由はまだ言えない。けど、そういう事実は知ってて欲しかったから」


 「……それは、間違いないんですか?」


 「うん」


 旭先輩は真顔で答えた。やっぱり本当なんだそうだ。

 

 つまり―――。


 岡後さんは、とんでもない人……人だ。


 


 そしてそれは、僕の人生も大きく変えてしまう程の事態に発展してしまう。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ