#岡後舞魅
#岡後舞魅 (おかしりまいみ)
あなたはどうして生きてるの?
私は答えることができなかった。
言語障害があるわけでもない、ただ単に、答えを持ち合わせてなかった。
自分が生きていることについて、果たして理由なんかあるのだろうか?
世界の端の端、とある高校の教室の、窓際最後尾にある自分の席に座り、前をぼんやり眺めながらそんな事を考えていた。
私には、昔の記憶が無い。
私には、家族が居ない。
いや、正確には居るけれど、一緒に生活をしていない。家には、私の両親に雇われたと言うお手伝いさん(メイド、執事と言うらしい)が居て、私が学校に行っている間に、家事などを行ってくれている。否、行ってくれているはずだ。実際にその姿を見たことは一度だって無い。
一人暮らしだというのに、無駄に大きな家。大きな部屋。
必然的に寂しくもなる。
だから、学校と呼ばれる場所は、私にとってとても楽しいところだった。
楽しいところだと思っていた。楽しいところであって欲しかった。楽しいところであるべきだった。
同い年の人が一杯居て、喋ったり、一緒に授業を受けたりして………
学校とはそんなところだ、と私に教えてくれたのは、一人のメイドさん。彼女だけは、私と少しだけ話をしてくれた。
儚い希望を持って、そのメイドさんに質問をぶつける。
「メイドさんは、どうして生きているんですか?」
彼女の答えは―――――
「分かりません」
彼女は続ける。
「そんなものは、分からない方がいいのかもしれないですし」
そうですか………と、力なく返事をして、私は自分の部屋に戻った。
12畳の部屋が、学校のグラウンドみたく広く感じた。
まだ序章です。