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水晶/駆除する鼠としない鼠

よろしくお願いします。

 ある時、アレクサンドリアと母は平原にテントを立てて休んでいた。


 テントは外から見るとボロボロで小さなものだったが、中は広々としていた。


 平原にはひっきりなしに雷が落ちている。


 雷から逃れるためにテントに居るわけではなく、雷を落としているのはこの母娘だった。


 テントの外では大量の、パキバラという大型の齧歯類げっしるいがテントに向かって怒りながら突進してきているのだが、そのパキバラに向かって雷は落ちている。


 静かに編み物をしていた母が、

「キリがないね。」

 とつぶやいた。


 次の瞬間テントは消え去り、氷の魔法が展開され、目に映る範囲の生物の動きが止まる。同時に全てのパキバラから炎柱が立つ。


「終わったよ。」

 にっ、と笑いながら娘の頭を撫でる。


「お母さん、まだ世界が凍ってる。」

 そう娘に指摘をされて、『おっと』と言いながら上空から熱風を吹かせて氷漬けの世界を溶かしていく。


 ついでに、あたりに生えていた木もなぎ倒されていく。


「お母さんの魔法、雑…」


「そうかい。まあ、アレクサンドリアも害獣駆除の方法を覚えておくんだよ。」


 そう言って、いつの間にか元通りになっているテントの中に入っていく母に、幼いアレクサンドリアはついていった。





「ありがとうございました!我らの土地を守っていただき、感動です!」


 テントで母は編み物を、アレクサンドリアは魔法陣でお絵かきをしているところに、服を着た鼠達が訪ねてきた。


 テントの前で叫んでいる。


 何やらひっきりなしにお礼を言っているので、テントに入れてやる。


 手にはご馳走らしきものをたくさん持っており、テントの中はいつの間にか宴会場のようになっていた。


「お母さん、この人たちはいい人?」


「そうだね。」


 母はご馳走に早速手を出して、すでに頬張り始めている。


「なんて名前の生き物?」


「服ネズミ。」


 両手の料理を食べ比べしている母は、鼠にはあまり興味はなさそうだ。


「なんであの人たちは駆除したの?」先のパキバラのことである。


 先程まで雷で駆除していたのは大型のげっ歯類。ここに居並ぶのは、小型の話すげっ歯類。同じげっ歯類。話せるか話せないかの違いはあるが、いまいち基準がわからない。


「コイツラも駆除してもよかったんだけどね。」

 あんまりな魔女の言葉にぎょっとする、服を着た鼠達。


「その区別の基準は何?」


「私に歯向かってくるやつは皆駆除するよ。」


「お母さん、その基準も雑…。」


「コイツラはうるさいね。今日は空で寝る。」


 周りでお礼を言ったり、またはパキバラと我らの違いはなどと叫んでいたりと、服ネズミ達は確かにうるさかった。体は小さいが、数がいるので煩わしいことこの上ない。


 母は強引にテントを薙ぎ払い、服ネズミ達を吹き飛ばし、宇宙そらへ向かってしまった。


 アレクサンドリアは、哀れな飛ばされる服ネズミ達の落ちそうな地点に空気のクッションを作ってやり、ご馳走は空間に収納してから慌てて母を追いかける。




 母と、追いついたアレクサンドリアは、宇宙空間と惑星の空気の層の狭間から惑星を眺める。この高さから見ると、なんだか小さく見える。どこへでもすぐに行けそうな気がする。


 そう母に言うと、


「そうかい。母さんは歩きのほうが好きだからね。道草を食ったほうが面白いだろ。」といいながら、楽しそうに惑星をなぞって空間に絵を描く。


 アレクサンドリアもしばらく一緒にお絵かきに夢中になっていたが、母が思い出したように話しだしたので耳を傾ける。


「アレクサンドリア、違う世界とつながる水晶があるんだ。」


 母が、また遠くを見つめるような目になる。

 ここにいるようで、ここにいない。


 アレクサンドリアは不安になって母の袖を掴む。


「その作り方を覚えなさい。」

 いつもよりも強い口調でそう言う。


 例え違う世界とつながる水晶が本物だとしても、お父さんとは話せないだろう。アレクサンドリアはそう思ったが、口には出さず、素直に頷いた。


 誰も縛ることができない二人は、空中をふわふわと浮かびながら、身を寄せ合って眠りについた。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


皆様の読んだ履歴が書き続ける活力となっております。


ここまで坦々とした旅の話が続いています。

次話で展開がある予定です。

あと2〜3話で終わります。


最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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