お守り/長い影の家族
よろしくお願いします。
母との二人旅は楽しかった。
旅は好きだ。面白いものがたくさん見られる。
ある時アレクサンドリアと母は、砂漠地帯にいた。
どこまでも広がるひび割れた大地。背面には乾燥した大地でできた絶壁。見あげると微かにてっぺんが見えるくらいの高さがある。
二人はその絶壁中腹の出っ張りに腰を掛けて、お茶をしていた。
母がどこからか取り出したポットで、どこからか取り出したカップにお茶を注いでくれる。
湯気がきれいだ。
少し寒いので両手でカップを包み込み、湯気越しにぼーっと景色を眺める。
すると、遠くに人の影が見える。何人かいる。家族連れだろうか。
夕暮れ時なので、影がとても長い。
…いや、長すぎる。
巨大な絶壁の半分くらいの背丈がある。そして、ただの影ではなく、何だか実体があるように見える。足音もする。
「お母様。あの影は何?」
「ああ、あれは『長い影』だよ。」
母は興味のないものには適当に名前をつけるので、これもきっと適当につけた名前なのだろう。
「あれは生きてるの?」
「ああ、生きているよ。」
ふ〜ん、とアレクサンドリアは言いながら、再び景色と『長い影』を眺める。
絶壁と絶壁の隙間に、『長い影』の家族が消えていくのを見送った。
アレクサンドリアの母は、父を亡くしてから少しおかしかった。
たくさんのお守りを集めてくるのだ。
お守りや面白そうなものを集めるのは前からよくあった。
しかし、その頻度がとても増えた。
あちこちに収集に出掛けては、帰って来てを繰り返していた。
自分で作らないのか?と聞いてみたことがある。
思いを込めて作られたものは、なんか違うと言っていた。
そういうものなのかと思った。
母はアレクサンドリアの首にお守りをかけながら、「これがあれば、あの人も死ななかったのだろうか。」そうつぶやいていた。
そんな時は、目の前にいる母が遠く感じて、少し寂しかった。
しかし、母の愛情を疑ったことはなかった。母はアレクサンドリアを暑苦しいくらいに構い倒す。だから、悲しくはなかった。
父のいない寂しさをモノで埋めながら、母娘の二人旅は続く。
読んでいただきありがとうございます。