二人旅
よろしくお願いします。
アレクサンドリアは、それまで母との最後の旅についてあまり語ることはなかった。
卒業旅行に行きたいと言った日の夜、ぽつりぽつりと夫に最後の旅の思い出話を語った。
父が亡くなってからしばらくして、母は旅に出ようと思うと言った。
父がいた頃も、亡くなった後も、旅に出かけるのはいつものことだった。しかし、今回は、特別遠くに行くという。
「アレクサンドリアはどうする?」
「行く。」
この時は何も考えずに行くと言ったが、行かないと言っていたらどうだったのだろうか。アレクサンドリアは後になって思うことがある。
「そうか。その方が良いだろうね。一緒に行こう。」
アレクサンドリア8歳の時だった。
その日から、二人の長い旅は始まった。
アレクサンドリアの母は、アレクサンドリアの生まれた国では救国の魔女と呼ばれて英雄視されていたが、彼女にとっては少し大雑把なところのある、普通の母親だった。
母の容姿は、とても生命力に溢れていた。
力強い眉。大きな瞳。少し鷲鼻。輪郭は顎のがっしりした四角で、肌も浅黒くハリがあった。
そして、豊かな黒髪が印象的であった。
ウエーブがかかった、腰を超えるほどの長さで、容積的には本人よりも大きいと言えた。
好奇心旺盛で、気になるモノがあると、どこにでも見に行った。
稀代の魔法使いなので、どこへでも一瞬で行くこともできるが、『それだと面白いものを見逃すだろ』と言って、道草を食いながらの徒歩の旅を好んだ。
今回の旅は前人未到の地を行くという。今までの旅も大抵そんなところだったので、あまり驚かない。
少し違うのは、魔法が使いづらいところがある、ということ。それもあまり気にはならない。
「母と居ればどこでも生きていけると思います。」
アレクサンドリアはそう語った。
夫も、『そうだね。』と言ってアレクサンドリアの頭を撫でた。
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