古城へ
よろしくお願いします。
母カサンドラは、残念ながら人に好かれない性質だった。
しかし幸い、アレクサンドリアは人に好かれる性質だった。
母を失ったアレクサンドリアは母と来た道を一人で帰る。帰るといっても、定住しない親子だったので、母と来たことのある場所を、何とはなしに立ち寄りながら放浪していた。
ある時は、喋らない豚の人の村に再訪した。
初めて来たときには無言の豚の人の動きが奇妙に感じたけど、もしかしたら恥ずかしがり屋なだけかもしれないと思った。
来るときも村を通過させてもらったので、お礼にお手製の革の盾を置いておいてあげる。
翌日、葉っぱの手紙が置いてあった。読めなかったけど、きっとお礼の言葉が書いてあるのだろう。葉っぱの手紙は大事に持っていくことにした。
ある時は、長い影の家族とまたすれ違った。
行きと同じ崖の中腹に腰かけていた時だった。
行きには母といたのに、今は一人なのに気がついてくれたようで、少し喋りをしていってくれた。
腰が痛いと言うお父さん影のために湿布薬を作ってあげたら、子どもの影がお礼に木のみをおいて行ってくれた。
生きている岩の道では、小石たちと再び一緒に遊んで、ご飯を食べて、一緒に眠った。
旅の途中に会った者たちはみんな優しかった。
母カサンドラがいた時には、その性格に驚き、控えめな対応をしていたが、娘アレクサンドリアの穏やかな性格と、一人になっても逞しく生き延びてまた会いに来てくれる健気さがあるからか、皆アレクサンドリアを歓待した。
そのため、旅は順調に進んだ。アレクサンドリアも一人での旅を楽しめるようになり、のんびりと歩を進めた。
アレクサンドリアが古城に戻ってきた頃には、母娘が旅に出てから優に5年経っていた。
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