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お題シリーズ5

見守ることしかできない状況が辛いんだ

作者: リィズ・ブランディシュカ



 愛する彼女の横顔を見つめる。


 けれど、恋人である僕が近くにいても、彼女は無反応。


 それは当然だろう。


 数日前、歩道に突っ込んできた車から彼女をかばって、それが原因で僕は命を落としたのだから。


 死んだ人間が幽霊になって近くにいるとは思わないはず。


 彼女はそういうのを信じない人だったから尚更だ。


 もどかしい。


 見守ることしかできない。


 だってもう、俺はこの世にはいないから。


 生きている人に触れたり、声をかけたりすることができない。


 目の前の、僕の死を嘆き、悲しんでいる彼女の涙をぬぐったり、肩を抱いたり、不意にいなくなったことを謝ったり、これまでの感謝を伝えることはできない。


 なんてもどかしいのだろう。


 僕という存在はここにあるのに、確かにいるのに。


 幽霊である自分には見守ることしかできないだなんて。


 これならいないほうがましじゃ、ないだろうか。


 けれど成仏することもできなかった。


 だって、彼女から目を離すのが怖い。


 知らない間に最悪の出来事が起きていたらと思うと。


 後を追ってきてしまったらと思うと。


 怖くてたまらない。


 こんなもの、なんてひどい状況なのだろう。


 無力感を抱くだけの時間を過ごさなければならないなんて。


 いつまでこうしていなければならない?


 僕が成仏するか、彼女が壊れるまで?


 幽霊にできること。


 そんなことなんて、なにもないのに。


 おふざけで、死んだ後に人の魂がどこに行くのか、なんて彼女と話したことがあるけど。


 成仏する前に地獄みたいな状況になるなんて思わなかった。



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