第65話 鬼神
今回は1万文字です!
これは、とある孤独な少年‥‥‥いや、『鬼』の物語‥‥‥‥‥
1
「生まれた!生まれたわよ!!」
「ああ、生まれたぞ!今日は祝いの祝祭を開こう!!」
その日、ヴェデリック家という上級貴族に赤子が生まれた。
赤子は後に性別が男だということが判明した。
そして‥‥‥その赤子には『ゼオン・ヴェデリック』という名が付けられた。
2
あれから、数十年の時が経過した。
ゼオンは、16歳となっていた。
ヴェデリック家、ゼオンの部屋にて‥‥‥‥
「ゼオン様、お父様とお母様がお呼びでございます」
ゼオンの部屋に侍女の声が響く。
「ああ、わかったよ。 リーア」
ゼオンが呼ぶように、侍女の名は『リーア』という。 正確には『リーア・ゼネレード』という名だ。
とは言っても、侍女はリーアの他に50名以上いる。
「リーア‥‥‥で合っているよね?」
「はい」
そのため、彼女の名が合っているかが不安になってしまうのだ。
そして、ゼオンは自分の部屋から出て、父や母がいるリビングへと向かった。
3
「来たか、ゼオンよ」
「はい、父上」
父の名は『ヴァヴァヴァ・ギギギギギ・ヴェデリック』。
かなりクセのある名前だ。
「ゼオン、お前確か最近剣術を磨いてきたから師匠から直々に『剣魔』の称号を与えられたんだよな?」
「はい」
『剣魔』‥‥それは剣士のランクである。
下から順に、『見習い剣士』、『剣中』、『剣霊』、『剣魔』、『近衛剣士』、『伝説級剣士』『神話級剣士』、『剣王』、『剣豪』、『剣聖』となっている。
「そして、『剣魔』の称号を得たことによって、種族が『人間』から『剣人』になったんだろ?」
「はい」
「そんなお前にご褒美だ。小遣いをくれてやる!」
「‥‥‥‥!やったー!!」
その日は、とても良い気分だったとさ。
4
とある日、ヴェデリック家に災いが舞い降りた。
‥‥‥‥災いというのは、『竜』のことである。
ヴェデリック家の領地の上空に突如として『竜』が現れたのだ。
「あれはなんだ?」
ヴァヴァヴァは声を上げた。
それに執事のゼクスは答えた。
「あの翼に頭部にあるあの長い角‥‥‥もしかすると、『竜』かもしれませんね‥‥‥」
「竜だと!?」
ヴァヴァヴァが驚くのも仕方あるまい。竜‥‥‥というものは架空の物として代々受け継がれてきた存在である。
だが、その竜が目の前にいるのだ。 普通、驚くのが当たり前である。
‥‥‥なぜ執事は竜とわかったのか?
それは‥‥‥
「だが、『全知ノ神』の称号を持つお前が言うんだ。
信じるしかないか‥‥‥彼奴が竜だという現実を」
彼が、称号『全知ノ神』を持つからである。
5
「だが、もし彼奴が竜だとするとしよう。
ならばどう対処すべきなんだ、教えてくれ!ゼクス!!」
ゼクスは己の智慧を全て出し切った。
そして、答えを導き出した。
「そうですね‥‥‥対処は不可能です」
「は?」
「我々は何あの竜に滅されるでしょう」
「クソッ!全知のゼクスですら不可能というのならば本当に危機的状況ではないか!
なのになぜゼクス‥‥其方はそんなに余裕そうなのだ!?」
「対処は不可能と言っても‥‥‥案はあります」
「なんだその案というのは!?」
「ただ‥‥‥この案はご主人様や奥様の命にも関わります」
「ああ、それでもいい!その案とやらを聞かせてくれ!!」
「‥‥‥‥わかりました。では、その案を言いましょう。
それはズバリ、ご主人様と奥様があの竜の足止めをし、その間に私を含む侍女達で協力し、お坊っちゃま等を避難させるという案です」
「‥‥‥‥‥‥わかった。もしそれで息子達が助かるというならば、その案、引き受けよう。
おそらく、リシィも引き受けてくれると思う」
「‥‥‥‥‥では、リシィ様にもこのことをお伝えしておきますね」
「ああ、了解した。
‥‥‥‥ゼクス、これで会うのも最後になってしまうかもしれないから、一応言っておく。
今まで、ありがとうな」
「ご主人様‥‥‥‥」
「それでは、俺はあの竜の足止めを実行してみるとするよ」
「‥‥‥‥御武運を」
そうして、ヴァヴァヴァは竜の足止めを実行した。
そしてゼクスは館の中へ入り、現在の状況を侍女達やヴァヴァヴァの妻‥‥‥‥『リシィ・ヴェデリック』に話した。そして、リシィはすぐさま外へ出て、ヴァヴァヴァの元へ向かい、足止めを手伝うのだった。
「父上と母上は大丈夫なんでよね?ゼクス」
というゼオンからの質問があったが、正直ゼクスはどう答えれば良いのか分からなかった。
そして戸惑い、結局「‥‥‥‥はい」と言ってしまった。
こうして、ゼオンを含む子供達と、侍女、執事のゼオン等は避難をした。
避難先は、『べリアード聖国』というところだった。
そして、未だにヴァヴァヴァとリシィの生存は確認されていない。
6
ゼオン達がべリアード聖国に避難してから早3年が経っていた。
彼らは、すっかりべリアード聖国の暮らしに慣れてしまっていた。
だが、そんなベリアード聖国に災いが舞い降りることとなる。
ある日、ベリアード聖国にとある上級貴族がやってきた。
その上級貴族は、都市国家ドワルゴンにあるイレン領というところを治めているイレン家というらしい。
そして実際にイレン家はベリアード聖国の"支配者"として『聖王』である『ルアイ・バハムード・ベリアード』と面会をした。
どうやらイレン家の主人、『ZETA00192・イレン』‥‥‥通称ゼータの話によると、ベリアード聖国と同盟を組みたいようだった。
※ヴァヴァヴァのように、大体の貴族の主人の名前はクセが強い名前です。
その案にルアイは大賛成だった。
こうして、上級貴族イレン家とベリアード聖国の同盟が結ばれた。
‥‥‥だが、これが災いの源であった。
7
ゼータは、ベリアード聖国と同盟を組めたため、大変調子に乗り始めた。
『私にはベリアード聖国という後ろ盾がついている。だから私には向かうとどうなるかくらい‥‥‥‥わかるな?』
と調子に乗っている。
確かに、ベリアード聖国という後ろ盾がついていることはゼータの身になってみればとても安心する。
だが、その調子の乗ったゼータの言葉ただ一つで、ベリアード聖国を巻き込んだ戦争が起きかけるなんて誰もが思いもしなかった。 勿論、ゼータも。
8
イレン家とベリアード聖国が同盟を組んでから4年後‥‥‥
「ZETA00192・イレンはどこだー!」
「同盟国のベリアード聖国なら知っているだろー!教えろぉー!!」
ゼータの調子に乗った言葉にムカついた者達が集まった集団がベリアード聖国の聖王の城‥‥‥そのままだが、『聖王城』というところの前でデモを起こしていた。
デモの内容は、ゼータはどこにいるか教えろというものである。
だが、そのデモに歯向かうベリアード聖国側の者がいた。
その者は"鮮血乙女"の二つ名を持ち『聖女』の称号を持つ、『建御雷神・ファリウス・ベリアード』だった。
乙女なのに名前がとてつもなく男っぽいこととか『聖女』なのに二つ名に鮮血って入っていることはしっかり一から解説をする。
まず、乙女なのに名前が建御雷神と、とてつもなく男っぽい理由は、もう死んでしまったが、建御雷神の母親の剣の師匠の名が建御雷神だったからである。
そして、『聖女』という称号を持っているのに、なぜ二つ名に鮮血と入っているかだ。
それは、彼女が元暗殺者だったから人を殺めるのがとてつもなく好きで、聖王ルアイの命令によっては、大量殺戮を繰り返す殺戮機械になることもある。
そのため、ゼータの調子に乗った言葉にムカついた者達が集まった集団の『反聖国対立団』がデモを起こすと、建御雷神はすぐに反聖国対立団の成員を殺しまくる。
だからデモは一旦無くなるのだ。 "一旦"‥‥‥‥
すぐに反聖国対立団は成員を集めて復活し、またデモを起こす。
そしてまた建御雷神が殺戮を繰り返す。
無限ループである。
だが、半年が経つと、そろそろ反聖国対立団が復活しようにも、成員が残りわずかとなってきた。
そして、反聖国対立団は諦めるしかなくなり、解散となった。
こうして、無限ループは終わったのだが、まだゼータの調子の乗った言葉に腹を立てていた人物がいた。
数年後、将来的に彼の国とイレン領がある都市国家ドワルゴン&ベリアード聖国の戦争が始まりかけるのだった。
9
現在、ベリアード聖国の聖王城にある聖王の部屋では、聖王ルアイは紅茶を飲みながら、とあるベリアード聖国にある代表的な宗教、『聖教』という宗教の聖書を読んでいた。
聖教の聖書はⅠからⅫ巻まである。
一つの書籍には第Ⅰ章から第Ⅷ章まである。
内容は、『リオナス=ヴォルテクス』という神の始祖にして世界を創造した創造神がどうやって世界を創造したのか、リオナスはどうやってこの世から去ったか等が描かれている。
ちなみに、ルアイが現在読んでいる聖書はⅨ巻である。
10
そんなある日のこと。
ルアイの部屋の大きなドアがバンッ!と勢い強く開いた。
どうやら、開けた者はルアイの近衛兵のようだ。
「大変ですルアイ様!」
「うるさいぞ。どうした。
内容を単刀直入に言え」
「わかりました。では単刀直入に言わせてもらいます。
実は‥‥‥‥‥上級貴族イレン家の当主、ZETA00192・イレン様の調子に乗った言葉が引き金となり、暗黒魔物系統国『ダークネスト』から宣戦布告をされたのです!!」
「なっ!それは本当か!?」
「はい!」
マズいことになったとルアイは思った。
暗黒魔物系統国『ダークネスト』は並の魔物を超える最低でも危険度ランクがAランク以上の強力な魔物たちがダークネストの支配者にして魔王『オアシス・ナカムラ』の側近である。
そしてもし戦争となったら側近たちは必ず動くはずだ。
そうなると、とてつもなくヤバい状況になる。
なぜなら、魔王オアシスの側近達は、先程も言った通り、危険度ランクがAランク以上を超える魔物達で形成されている。
そのため、強さが桁外れなのだ。
例えば、災厄の魔王『禍津日神』や太陽の魔王『天照』、武の魔王『経津主神』などがいる。
彼らは、一言で言えば『最強』である。
ただし、魔王や勇者を除いたらだ。
そして、魔王オアシスの側近達にはオアシス直々に団体名が付けられている。
その名は‥‥‥‥『神魔英傑守護神』。
魔王オアシスの側近達である。
もし、彼ら神魔英傑守護神‥‥‥‥魔物系統国ダークネストと本当に戦争をすることになったならば、その国は滅亡する。
戦争に勝利し、その国が存続し続けれる可能性なんて、限りなく0に近い。
そして今、ベリアード聖国にその現実が迫って来ていた。
‥‥‥‥‥というより、もう起こっているのだ。
「クソッ!クソッ!
我が国ではダークネスト相手に対処できない!!
我が国の兵を全て出陣させても、おそらく全員戦死する!
どうする!?どうする!?」
ルアイは混乱した。さらに怒りが芽生えてきたせいで、手に力が入り、机を叩いた。
いくら考えても、この状況を打破する案が浮かばない。
そもそもこれはゼータの言葉が原因だ。
だから、それに対してルアイの心の中で少し怒りが芽生えたが、同盟を結んだのは自分だから、となんとかルアイは自分自身の怒りを抑え込んだ。
もちろん、まだちょっぴり怒りは残っている。
だがもうそんなことはどうでも良くなった。
いくら考えても考えても考えても。
結局時間の無駄だった。
ルアイは長い時間考え込んで、遂に『我が国ベリアード聖国に出来る事はない』という簡単な事実に気がついたのである。
もうこれは、諦めて戦争をする前にダークネストの傘下に降るしかないのか‥‥‥‥‥‥と思ったルアイは、ダークネストの魔王であるオアシスに手紙でベリアード聖国が傘下に降ることを宣言した。
そしてその手紙は一週間後、オアシスの元に届くことになる。
11
「オアシス様、次の手紙です」
「ああ、ありがとう」
魔王オアシスの部屋では現在、ソファに横になってくつろいでいるオアシスと、そのオアシスが横になっているソファの横に立っているフード付きの黒い服を着ている真っ白い肌の男の姿があった。
真っ白い肌の男の正体は、神魔英傑守護神の一人、種族が魂喰らいの暴食の魔王『デゼリ・ウィラース・ネヴェット』である。
そしてデゼリは、魔王オアシスの忠実な秘書だ。
「なになに?
『初めまして、魔王オアシス・ナカムラ様。私はベリアード聖国聖王、ルアイ・バハムード・ベリアードです。
この度は腹を立たせる言動の数々、お詫びもうしわげます。
我が国ベリアード聖国はお詫びとして、今後オアシス様の国である魔物系統国ダークネストの傘下の国に入らせてもらいます。なので、戦争をすることだけは辞めて頂けてもらえるとこちら側も幸いです。
何卒、ご理解の程よろしくお願い致します』‥‥‥‥‥か。
お前はこの手紙についてどう思う?デゼリ」
オアシスの紫紺の瞳は、後ろの方で《水魔法》を駆使して食器洗いをしているデゼリの方へ向けられた。
そしてデゼリはスキル《五感感知》とスキル《魔力感知》を統合したスキルである《第六感感知》でオアシスに視線を向けられていることを知り、応えた。
「そうですね、ダークネストの傘下に入るのなら戦争は取り消しでいいんじゃないですか?
あくまでワイの意見ですがね」
「‥‥‥‥よし、決めた。
戦争の件はなしとしよう!」
更に一週間後、ルアイの元に『戦争の件はなしにする』と書かれた手紙が来た。
そしてルアイは安心し、胸を撫で下ろした。
12
とある日、ヴェデリック家の執事ゼクスと息子のゼオンは買い出しに出かけた。
だが、買い出しに出かけても、なぜかその日だけは食品が売れに売れまくっていた。
なんと、ベリアード聖国が魔物系統国ダークネストの傘下に入った影響で、ダークネストの住民達がここに買い出しに来ていたのだ。
おそらく、食品がその日だけに限って売れに売れまくった原因はこれだろう。
そしてゼオン達は仕方なく、森のキノコを採取することにした。
「どのキノコが美味しいのかなー?」
と謎に思うぜオンだった。
だが、それにゼクスは答えなかった。
ただ、ただ、キノコを採取するだけに集中した。
するとゼクスは横から気配を感じた。
横をいざ見てみると‥‥‥魔物がいた。
種族は見た感じ『大猩猿』だ。
大猩猿は"通常"ならば猿の最終進化で、危険度ランクはA以上。
最低でもレベルは60を優に超える。
だがあくまでこれは"通常"の場合である。
とある特定の条件を満たすと、大猩猿は更にもう一段階上の存在へと進化できる。
実際に400年、とある村に大量の大猩猿の軍勢が突撃してきた。
どうやら理由は食を求めていたからだそうだ。
そして、その大猩猿の軍勢を率いていたのが、とある特定の条件を満たし、大猩猿の更に上の存在に進化した大猩猿だった。
大猩猿が進化して成った種族の名は‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
『星魔祖猩猿』である。
星魔祖猩猿の危険度ランクはSランク以上。
個体によってはSS‥‥‥天災級になることだってある。
星魔祖猩猿の最低レベルは90。
こちらも個体によってはレベル100を超える個体もある。
まさに猿の王。猿の神である。
そんな星魔祖猩猿の進化前‥‥‥‥通常の猿の最終進化である大猩猿そのものが今、ゼクスの目の前にいるのだ。
これは、大ピンチである。
ゼクスは『全知ノ神』としてどうにか対処ができないか案を模索した。
だが、いくらあのゼクスでも最低でもレベル60を超える魔物が今、目の前にいる恐怖で、上手く頭が回らない。
「一体どうすれば‥‥‥‥ッ!」
ゼクスは何か閃いたようだったが、その前に大猩猿の拳による攻撃で吐血した。
そして目の前が真っ暗になっていき、やがて、彼は永遠の眠りについた‥‥‥‥‥‥‥‥‥
13
「あれ、ゼクス?
俺の声聞こえてる?」
とある森に、少年の声が響く。
「‥‥‥‥はぁー。
せっかく良さそうなキノコ見つけたのになぁー。
一体ゼクスは今どこにいるんだよ」
少年の名はゼオン・ヴェデリック、彼は今、執事のゼクスを探している。
理由は、現在ぜオン達は食品が売れに売れまくっていて、買えないため、仕方なくキノコの採取をしている。
そしてゼオンは良さそうなキノコを見つけたから、そのキノコをゼクスに見せようにしているからだ。
だが、いくらゼクスの名を呼んでも、返事はない。
彼が今どこにいるかも知らない。
なぜなら、別々でキノコの採取をしているからだ。
「もしかしてだけど魔物に襲われたとか?」
そんなことをゼオンは思ったが、心の中ですぐにないないと言った。
だが、そんなちっぽけな冗談が今、現実になっていることをゼオンは知らない。
14
「あれー?
いくらが探してもゼクスいないなぁー」
当然である。 もう、この世界にゼクスは存在しない。
天国、または地獄に逝ったのだ。
「ん?何か物音がするような気が‥‥‥‥‥‥ッ!」
ゼオンは、物音がする方を向いた。
するとそこにはとある一体の魔物がいた。
その魔物は見た感じだと、どうやら猿系統の種族のようだった。
そしてその猿系統の魔物には、凄まじい筋肉があった。
更にその魔物は自身の胸を強く叩いた。
初めて見た時は自傷行為とゼオンは思ったが、それは大きな間違いだった。
その魔物は自身の胸を叩いて叩いて叩きまくった。
そしてその叩いた反響は森全体に響いた。
その反響で音で、森の上空を飛んでいた小鳥が意識を失い、地面に落下してしまった。
それぐらい、凄まじい反響と言うことである。
そして、その反響はゼオンにも害があった。
「う、うああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
なんと、鼓膜が潰れてしまったのだ。
ゼオンは耳を失った痛みに耐えようとするも、まだ子供のゼオンにはその痛みを耐えることは出来なかった。
そして、ありのまま叫んだ。
絶叫した。強烈な痛みと一緒に。
数時間後‥‥‥‥‥
とある森に、子供が倒れている。
その子供は、息をしていない。
そして、喉が枯れているようだった。
まるで、痛みに耐えながら絶叫したように。
彼は‥‥‥ゼオン・ヴェデリックはあまりの痛みで死んだのである。
ゼオンは、死んだら天国か地獄に逝くのかと思っていたがそれは違った。
ゼオンに待ち受けていた場所は天国でも地獄でもない場所だったのである‥‥‥‥‥‥‥‥
15
※ここから三人称から一人称に変わります。
俺が目覚めたのは、真っ暗な世界だった。
光がないただの暗黒。
確か最後に覚えているのは、いきなり現れた魔物が胸を叩いてその胸を叩いた反響でとてつもない痛みに襲われたところまでだ。
おそらく、いきなり現れた魔物は胸を叩いていたことから、種族は大猩猿だと思う。
そしてあの胸を叩く動作は、おそらく《ドラミング》という大猩猿の種族スキルだ。
つまり、俺は《ドラミング》を喰らって死んだってことか?
まぁいきなりこんな真っ暗な世界に飛ばされたんだ。
そうとしか考えられない。
‥‥‥‥だとしても、やはり死んだらここみたいな世界に逝くのかな?
俺は人は死んだら天国か地獄みたいなところに逝くと思っていたんだけど‥‥‥‥‥‥
違ったみたいだ。
俺は、永遠にここで過ごすことになるのか。
こんな真っ暗な世界で‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥ッ!
そんなの嫌に決まってるだろ!!
俺はこんなところで過ごしたくねぇよ!
ううぅ‥‥‥こんな真っ暗な世界で過ごしたくないよ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ふと、俺は涙を流してしまった。
『『『『大丈夫じゃ。我らに任せておれ』』』』
え?何この声?
『『『『我らは四大天使。天使系統の種族の最高峰に君臨する天使じゃ』』』』
いやツッコミどころ満載なんだけど。
ってかまず最高峰ってただ格好つけたいだけでしょ。
しかも全員一人称『妾』なのかよ。
あれ、もしかして四大天使って全員同一人物なんですか?
『『『『グハッ!
くっ、此奴め!
妾たちを罵倒しよって!!』』』』
いや別に罵倒してないんですけど何か?
それって普通にあなたの感想ですよね?
罵倒して何が悪いんですか?
エビデンス教えてください。
しかも四人揃って同じ言葉を喋るってやっぱり四大天使って全員同一人物なんじゃないっすか?
『『『『グハッッッ!!!
くそぉ‥‥‥何も言い返せない。
なんか某論破王みたいな喋り方になっとるし!
後四人共同じ言葉を喋っているのは偶然だよ偶然!!』』』』
偶然だとしてもそんな都合の良い偶然あるんすか?
『『『『う、うるさぁぁぁぁぁぁい!!』』』』
そっちの方がうるさい件。
16
で、四大天使さん達が俺に何の用ですか?
『いきなり此奴切り替えたぞ‥‥‥‥‥まぁ良いや。
実はな、お前を転生させてやりたいと思ったんだ』
なんでですか?
『なぜなら、お前には『鬼』としての適性があるからだ。
前世のお前の種族は『剣人』‥‥‥つまりは人だっただろ?』
まぁ。
『だから適性がある『鬼』に転生させてやろうかなって話。
どう、転生する?『鬼』に』
鬼か‥‥‥‥まぁ、せっかくなら転生してみるか。
転生したら今度は痛みを感じないようにしてやる!
あのトラウマは忘れられないからな‥‥‥‥‥
そうだ、『世界征服』とかしちゃおうかな?
そうしたら全ての人間‥‥‥‥全ての生物が俺を恐れる。
つまり、誰も攻撃してこないから安全ということだ!
ああ、俺って天才だな!!
なんちゃって(笑)
『世界征服‥‥‥‥面白そうじゃないか!
私はそれを応援するぞ!!』
そういえば、俺今心の中で喋ってるのになんで聞こえてるんですか?
『え?まぁお前の心の中覗いているからな』
心覗き見変態じゃねぇか!
『う、うるさいなぁー!』
そういえば、あなた達四大天使ってそれぞれの個体に名前あるんですか?
『ああ、あるぞ。
なんなら鬼に転生する前に教えてあげよう!
まず、一人目がこの私、ミカエル。
そして二人目がガブリエル。
三人目がラファエル。
四人目がウリエルだ』
へぇ、誰がリーダー的存在なんですか?
『それは勿論この私、ミカエルに決まっているじゃないか!!』
‥‥‥‥‥‥‥ふーん。
『いやなにその「つまんな」みたいな反応!?
もういいや、じゃあ早速鬼に転生させてあげる!
じゃ、またね!!』
え、いきなり!?
怒らせる相手を間違えたって言うのか!?
う、うわぁぁぁぁぁ!!
俺は、真っ暗な世界から地上へと落ちた。
つまり、あの真っ暗な世界は天空にあったってことだな。
って今はそんなこと考えている場合じゃねぇ!!
落ちるうぅぅぅぅ!!
そして俺は大地へ落ちた。
痛ぇ!
身体中のあちこちが痛い!!
あれ、この姿は‥‥‥そうか、俺は本当に『鬼』に転生してしまったんだな。
とりあえず今は、どう生き残るかを考えよう。
そして後に彼は『世界征服』を目論む『鬼神』となる。
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