第20話 オルトロス攻略戦
~リドール視点~
「うわぁぁ!!」
始まりは、ベーラーさんの叫び声だった。
その叫び声は自分たちが歩いていた森に響いた。
今のは………………ベーラーさんの叫び声?
自分は慌てて後ろにいるベーラーさんの方を見た。
すると、ベーラーさんは魔物と対峙していた。
その魔物は双頭の犬…………というよりかは双頭の犬型の獣だった。
この特徴……………まさか、オルトロスか!?
確か危険度ランクはSランクだったよな………………
生き残れるのか?
いや、自分には師匠と『剣聖』の称号を持つベーラーさんがいるんだ。
自信を持て!
「みんな!
ここは俺が………………」
「グオオオオオオオォォォォォ!」
師匠は真っ先にオルトロスに狙われた。
ヤバい、師匠が!
「グオオオオォォォォォォォォォ!!」
オルトロスは尋常じゃない速さで師匠の目の前まで来た。
そしてオルトロスは口を大きく開け、鋭い牙を見せた。
師匠を喰う気満々だ。
さすがにあの師匠でもこの状況はヤバい!
喰われる!!
「オリアぁー!!」
その光景を見たベーラーさんは師匠の名を叫びながら師匠とオルトロスのところへ向かい走った。
剣を取り出し、強く握りしめた。
「火剣ベリアル!最高火力を出すぞ!!」
そのベーラーさんの声と共に、ベーラーさんが取り出した剣…………火剣ベリアルに火が点火された。
「火剣術、第一術《爆炎》!」
火の火力はどんどん上がっていき、やがて炎…………爆炎になった。
「うおおおおおおお!!」
爆炎となった火剣ベリアルを強く握りながらベーラーさんは再び走った。
そして、師匠とオルトロスのところまで着いたベーラーさんは火剣ベリアルを振り上げた。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!オルトロス!!」
ベーラーさんは振り上げた火剣ベリアルをさらに強く握りしめた。
そして火剣ベリアルで師匠を食べようとしているオルトロスを斬った。
「グオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ!!」
爆炎となった火剣ベリアルで斬られたオルトロスは狂い叫んだ。
そして、その叫びは森全体へ響いた。
次の瞬間、火剣ベリアルに斬られたオルトロスは倒れた。
死んだのだ。
「やった……………倒すことが出来た!」
倒した…………のか?
強かった。
まぁ自分は特にこれといったことはしてないけど、見てるだけで強いと思い知らされた。
さすがは危険度ランクがSランク。
だが、その危険度ランクがSランクのオルトロスを倒したベーラーさんがどれだけ強いかも思い知らされた。
すげぇ……………
自分も、ベーラーさんみたいになりたいな。
そんなの、夢のまた夢だけどね。
「ありがとう、ベーラーさん。
俺なんか見捨ててもよかったのに………………」
「……………そんなことないと思うよ。
オリアは良い奴だし、見捨てられないよ。
それに仲間だしね!」
「………………!
ありがとう、ベーラーさん」
まぁ、何はともあれ。
師匠が死なずに済んでよかった。
あれ?
背後からなにかが走ってきているような音がした。
気のせいだろうと自分は思った。
「なぁ、なんか音がしないか?
どんどん大きくなってきて………………
まるでこっちに近づいてくるみたいに」
「ああ、俺も聞こえるよ。
しかも、集団で来ている」
「もしかしてさ………………
これは私の推測でしかないんだけど、さっきこのオルトロスが叫んでたじゃん?
それでそのオルトロスの仲間が来たとか?」
「………………ありえる」
どうやら、師匠とベーラーさんもこの音が聞こえるみたいだ。
もし、ベーラーさんの推測が正しいのであれば、すぐにここから逃げないといけない。
さっきの化け物が何匹も来るとなれば、さすがの師匠とベーラーさんがいてもただじゃ済まない。
ま、まぁさすがにないと思うけど……………
あの師匠がありえるって言っているなら、さすがにヤバいのかな?
『ここは、一旦ベーラーさんの推測が正しいと見て、逃げた方が良いんじゃないですか?
さすがにオルトロスが何匹も来たらヤバいと思うんで……………』
「そ、そうだね。
じゃあ一旦逃げ………………」
「グオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォ!!」
って、もう来たんだけど!?
えっと、真ん中のオルトロスがリーダー的存在なのかな?
一番デカいし。
「グオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォ!!」
ってそんなこと考えている暇なんてねぇ!
『みなさん!早く逃げましょう!!』
「あ、ああ!」
「りょ、了解!!」
クソッ!
………………なんとなく分かるけど、こんなの逃げれるわけない!
絶対戦わないといけない!!
だが、せめて逃げて、オルトロス側のスタミナを減らす!!
その方が有利になる!
いや、待てよ?
そしたら自分たちもスタミナ減るじゃん!
たぶんオルトロス側の方がスタミナ多いから結果的に意味ないんじゃないか!?
いや、こんなこと今は考えるな!
今はひたすら逃げて逃げて逃げまくれ!!
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