第19話 霊園教秘密会議
「では、今から霊園教秘密会議を始める。
司会は『霊園実験』を提案し、進行管理を務めている俺『ヴィリア・バハムート』が務める。
今回の議題は、『霊園実験』を進めるか否かだ」
黒い部屋にテーブルがあり、椅子が3つある。
3つの椅子の内、一つに座っている黒い短髪の30代前半の男性が司会を務め、会議を開いた。
その会議の名は霊園教秘密会議。
議題は、『霊園実験』という霊園教の実験を進めるか否かというもの。
「では、意見を言ってくれ」
「はい」
そういったのは10代半ばほどの緑色のショートヘアの少女。
彼女は即座に挙手をした。
「こんなの別に進めなくてもいいんじゃないですか?」
少女は軽い口調でそういった。
それに反論するかのように………………
「おい!
この『霊園実験』は霊園教の看板とも言えるんだぞ!!
『ヴィリア・バハムート』様に感謝しろ!
彼がいなければ、今の霊園教がないのと一緒だ!!」
と目の下にクマがある茶髪のマッシュルームヘアの10代後半の青年が怒鳴った。
その怒鳴り声は会議室全体に広がった。
「はぁ………………」
少女は呆れたようにため息をついた。
「なんだよ」
「いやさぁー。
私がこの霊園教に入った理由は別に実験とかやりたかったからじゃなくて。
人を助けたかったからなんだよ。
初めて私が霊園教の教徒たちを見たときは、年寄りの人を介護したり、貧乏な家庭の人たちを支えてあげたりしていて、「あー、私も人助けしてみたいな」って思いで入ったんだけどさ…………
実際に入ってみたら『霊園実験』とかいう意味の分からないただの拷問実験が始まって、霊園教は腐り果てて、挙句の果て私は幹部になってて………………
本当に、なんで入ったんだろうって感じだったから。
この『霊園実験』が終わったら霊園教が良くなると思うんだよねー」
「は?
なに出鱈目言っているんだ!
ヴィリアさん!
こんなやつの話に耳を傾けたらダメですよ!!」
「……………分かった。
では、『霊園実験』は中止とする」
少女の言葉も一理あると見たヴィリア・バハムートは『霊園実験』を中止するという決断に出た。
それに青年は怒った。
「はぁ!?
ヴィリアさん、本気で言っているんですか?」
「ああ、本気だ。
そもそも、俺が提案し、進行管理を務めていたのだから、俺が中止にすると言ってもおかしくはないだろ。
それに、俺自身もうすうす気づいていたが、『霊園実験』は本当はやっても意味がないんじゃないか?
と思う時があった。
だが、教徒たちが『霊園実験』を素晴らしいと言っていたせいか、中止にすると言う決断に行けなかった。
そして今、『リアバ・ユリアーナ』君。
君の提案のお陰で中止にするという決断をすることが出来たよ。
本当にありがとう」
少女……………こと、『リアバ・ユリアーナ』の提案によって、ヴィリアは『霊園実験』を中止にすると決めた。
だが、その結果に満足できなかった者がいた。
そう、リアバに怒鳴っていた青年だ。
「ふざけないでください!
この『霊園実験』は素晴らしい実験のはずです!
僕は『霊園実験』の内容を聞いた時に、とても素晴らしいと思い、ここまで実験を続けてこれたんです!
『霊園実験』は素晴らしいんです、本当に!!
そんなやつを信用しないでください!
ヴィリアさん!!」
沈黙が続いた。
ヴィリアは目を瞑り、数秒後に再び目を開けた。
「『ウリエ・プリアル』君。
君がその考えへ陥ってしまったのも、全て俺が『霊園実験』というバカな実験を生み出してしまったせいだ……………
すまない。
ただ、君の素晴らしいという言葉に俺は救われたよ。
でも、世の中にはやっていいこととダメなことがある。
それをちゃんと区別できなかった俺は本当にクズだ。
何の関係のない人を実験体にして、廃人にして、殺す。
そのバカな考えをウリエ君を含む教徒たちに押し付けてしまった事を、心から謝るよ。
本当にすまない。
幹部のリアバ君、ウリエ君、それに教徒たちのみんなが、俺の支えだ。
これからも、一緒に頑張っていこう。
『霊園実験』などではなく、もっと、もっと。
みんなが、世界中の人たちが幸せになれるような実験をね」
「……………はい」
そのヴィリアの言葉に青年………………こと、『ウリエ・プリアル』は納得し、『霊園実験』が中止にされるのを納得した。
「じゃあ、今実験体にされている人をとりあえず解放してあげよう。
廃人になる薬が入っている注射はもう打ったかもしれないけど、まだ殺されてないはずからだね」
「はい!」
「そうですね!!」
こうして、実験体とされていたリカエルは『霊園実験』が中止になったことにより、解放された。
だが、リドール一派はそのことを知らず、そのまま霊園教の教会へと向かっている。
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