第11話 二人での成長
【身体強化】を習得した僕たち。
だが気を緩めると能力が途切れてしまうので、一度の戦いに集中し、スピーディーに済ませる。
ベビーナイトは先日より強くなっており、スライムを軽々と倒せるほどになっていた。
一撃で瀕死に追い込み、僕とウェイブが止めを刺す。
「やった! 次に行こう!」
「ああ!」
僕たちは手にしている木の棒を叩き合わせ、笑顔を浮かべる。
そしてすかさず次のスライムへ攻撃を仕掛けた。
慣れない【身体強化】と戦闘。
そのせいで息はすぐに切れ、休憩をはさみながら戦いを続けていた。
休憩をしている間はベビーナイトにスライムを倒させて、レベルアップを図る。
「なんだか強くなってる気がするな」
「ちょっとずつだけどね……貴族たちはもっと簡単に強くなれるんだろうけど……僕らは僕らのペースでやるしかないんだ」
「ああ。俺たちなりに強くなっていこう」
草原に腰かけていた僕らは頷き、そして戦いに戻る。
スライムとの戦闘は先日より楽になっていた。
これも【身体強化】のおかげであろう。
だったら昨日のうちに教えてくれてもいいのに、なんて思うが、僕みたいな子供で能無しには少しずつ覚えていくしかないようだ。
悔しいがこれが現実で現状。
だがそれでも少しずつ進む。
僕たちはそう決めたのだから。
決断したのだから。
戦いを終えて、僕らは町に戻った。
昼前に戻らないとベルナデッドが心配する。
それにお腹も減ったしね。
「全力で訓練してヘトヘトだ……俺たちってどれぐらい強くなったんだろうな?」
「まぁ一日のことだからちょっとだろうけどさ……確認してみる?」
「? そんなこと出来るのか?」
「できるよ」
「じゃあ頼むよ」
僕はアドに頼み、ウェイブの【鑑定】をする。
ウェイブ
――
HP (E)3 MP(E) 2
STR(E) 3 VIT (E) 2
DEX (E) 2 AGI (E) 2
MAG(E) 2 RES(E) 2
INT(E) 11 LUC 16
スキル
身体強化 1
僕の前に表示されたステータスを覗き込んでくるウェイブ。
全ての才覚にEが表示されている……
僕たちの中でよくできる奴だと思っていたけど、やはり才能がずば抜けていたんだな。
と言ってもEだけど。
「情けなくなるぐらいちょっとだな……」
「これが現実ですよ」
「でも夢を叶えるためにはこの現実に抗わないとな」
僕はついでに自身のステータスも【鑑定】してもらう。
レイン
召喚戦士
HP (F)5 MP(F) 3
STR(F) 5 VIT (F) 2
DEX (F) 2 AGI (F) 3
MAG(F) 1 RES(F) 1
INT(F) 5 LUC 20
スキル
アドバイザーⅠ 召喚Ⅰ 身体強化 1
才能はウェイブ以下だが、一日早く戦い始めたのと、【召喚戦士】のおかげかスタータスの伸びはぼちぼちだ。
「なんだよ……俺より強いんじゃないか?」
「まだ微々たるものだろ? これからだよ、ウェイブも僕も」
「ああ、そうだな」
「後アド、ベビーナイトのステータスも確認してくれ」
ベビーナイト
LV 5/20
HP 25 MP 5
STR 12 VIT 10
DEX 5 AGI 7
MAG 2 RES 2
INT 2 LUC 11
スキル
基礎剣術 1 身体強化 1
ベビーナイトのステータスは滑らかにだが、着実にレベルアップしていた。
ついでに身体強化まで習得したらしく、さらに強くなったようだ。
自身の能力にはガッカリ落ち込んだが、ベビーナイトの成長に高揚していた。
これもまた僕の力の一部なんだ。
落ち込むばかりじゃない。
確実に成長し、強くなっている。
「よし……これぐらい能力があれば……」
僕はアドが提案したことを実行する決意をする。
今までの僕たちではできないこと。
奴隷という身分では決してできないこと。
平民への反撃だ。
リオラがやられたことを思い出し、怒りの炎を再燃させる僕。
ウェイブは僕のそんな様子が気になっていたようだが、何も口に出さなかった。
彼は僕がやろうとしていることを把握していたのだ。
そしてそれは、自分では手伝うことも加担することも不可能だと認識している。
それでいい。
これは僕だけで成し遂げる。
その代わり、皆の怒りをぶつけて来るから。
「とにかく、昼ご飯にしよう。ベルナデットも心配するだろうしね」
「ああ……でも無理はするなよ、レイン」
「無理はしないよ。できることはしてくるだけさ」
僕らはベルナデットが待つ家へと帰る。
「二人とも! どこへ行っていたの?」
「少しね……心配しなくても危険なことはしてないよ」
これは半分嘘で半分本当のこと。
だってスライムぐらいだったら、もう危なくないし。
ベビーナイトがいればあれぐらいはどうということはない。
「ならいいけれど……二人がけがするだけでも心配なのだから、あまり変なことはしないでね」
ウルウル涙目で僕たちを見つめるベルナデッド。
僕とウェイブは苦笑いしながら、彼女の言葉に頷く。
変なこと……変わったことはこれからする予定。
ベルナデットに心配はかけたくないのが本音だけど……やらないわけにはいかないんだよね。