下
「い、ってて」
え?俺生きてる?
いや、そんなことある?
マンションの屋上から飛び降りたようなもんだぞ?
下って川だっけ?
いや、普通に岩がゴツゴツあるだけなはず……
「おお!
目を覚まされたぞ!!」
「良かった!
これで全員揃ったぞ!」
「うむ!
これで世界は救われる!」
……え?
あれ?
いま撮ってるのって、こんな世界観だったっけ?
てか、やっぱり俺は生きてて、まだ撮影してるってこと?
やべっ!
それなら演技しなきゃ!
高額ギャランティがっ!
俺はそう考えて、慌ててガバッ!と体を起こし、崖から駆け降りたあとのセリフを口にした。
「みんなっ!待たせたなっ!
俺が来たからにはもう安心だっ!
憎っくき悪の手から人々を救いだし、世界を救ってやるぜ!」
そして、ポーズ!
よし!バッチリ!
「…………」
「…………」
「…………」
あれ?
次のセリフは?
ブルーだろ?
おいおい、ここまで来てNGは勘弁してくれよ。
こちとら死にかけたんだぜ!
俺がそんなことを考えていると、直後、大地を揺るがすほどの歓声が響き渡った。
「うおぉーー!!
さすがは勇者レッドだぁーー!」
「まさに救世主!!
お待ちしておりました~!!」
「……え?」
ブルーどこ?
てか、ここどこ?
その後。
「変身!とうっ!」
「悪は絶対許さない!」
「か弱き民を守るため」
「世界の平和を守るため」
「愛と勇気と元気をもって」
「聖なる力でやっつける」
「勇者レッド!」
「戦士グリーン!」
「弓士ブルー!」
「武闘家イエロー!」
「僧侶ピンク!」
「5人合わせて!
ヒーローギルド、黄金戦隊!」
ドカァァーーーン!
「…………」
「…………」
「もう、初めていいのか?」
「……ああ、待ってもらってすまないな。
これをやる決まりでな」
「あんたらも苦労してんだな」
「悪魔将軍の手下に言われると余計むなしくなるからやめてくれ」
「そりゃあ悪かったな。
まあ、やるからにはあんたら全員殺す気でやるからよ」
「ああ。
俺たちもそのつもりだ」
「じゃあ、始めるか」
「ああ!
みんなっ!
いくぞっ!とうっ!」
「……それで戦うのかよ」
俺は赤城省吾。
戦隊のレッドのスーツアクターをしていたが、無茶なシーンの撮影での事故によって死亡し、異世界へと転生した。
そこでは、なんと撮影していた番組の設定や配役の通りの世界が存在していた。
さらに俺は特殊な魔法によって、超人的な力を持つレッドに実際に変身できるようになり、同じように転生してきた他のメンバーたちとともに、世界を支配しようと目論む悪魔将軍と戦うことになった。
突然、大きな力を手に入れ、敵と戦うことになった俺。
戸惑い、傷付き、時に仲間と衝突し、果たして、この戦いの果てに、俺はいったい何を手にするのか。
俺たちの戦いに、今後も期待してくれ!
【次回】
さらば省吾!?
次回!には続きません笑