表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】ケチ高校生の異世界転生  作者: けちにーと
1章 初クエスト~ギルド追放
8/29

8.討伐参加

 翌日、俺とエルは難なく、討伐に参加する冒険者を決定するための選抜に合格した。


 エルいわく、剣士の受験者は400人ほどいたが、合格者はエル含めて20人らしいから、倍率はなんと20倍。

 一昨日のオーク討伐の影響で、専守防衛の引き付け役というイメージしかないから、エルが対人だとこんなに強いとは意外だ。


 いや、気絶さえしなければ引き付け役としては優秀だったんだけどね。

 ――なんてエルと話していると、偉そうな人が討伐について説明し始めた。



「今回の討伐対象は、南のエラニア森林地帯で発生しているキラーエイプだ。

 ただし、討伐は必ずパーティで行うものとする。誰と組んでも構わないが、必ず3人以上のパーティを組むように」


 3人以上でパーティを組め、か。

 俺のパーティのメンバーは俺とエルで2人はいるが、あと1人はどうしよう?


 今回は報酬の支払いが個人ごとだから、メンバー加入による報酬の取り分減少を気にする必要はない。

 しかし、討伐に参加する冒険者たちは見ず知らずの者ばかり。中には不届きな輩もいないとは限らない。


 パーティメンバーとは2週間ずっと寝食を共にするわけだし、正直言って赤の他人をパーティに加えたくはない。

 雇用主が3人以上のパーティを要求している以上そうもいかないんだけど。


「エルは、どんな奴をパーティに加えたらいいと思う」


 いくら不逞な輩は罰せられるとは言え、困窮している冒険者にとってそんなことは二の次。

 他の冒険者の所持品を盗むのはまだ良い方で、パーティメンバーを皆殺しにして身ぐるみを剥ぎ、手柄も独り占めする輩すらいるらしい。最も、さすがにそんなことしようものなら、発覚した瞬間に処刑されるらしいけど。


「そうねえ……火力はフレイだけで十分そうだから、ジョブより信用重視の方がいいわね」

「だけど、信用できる人間の見分け方なんてあるのか」

「顔だけで見分けるのは厳しいわね。だから、身なりや仕草にも注目するの。

 小型の刃物を隠せそうなポケットはないかとか、やたら周りを気にしていないか、とかね。

 あとは装備が傷んでいないか、とかも」


 なるほど。


「傷んだ装備をそのままにしている冒険者は、お金に困っている可能性が高いわ。

 戦士系ジョブの冒険者にとって、装備は命を預ける物なの。

 冒険者は装備を真っ先に修理するものよ」

「そうか、参考になるな」


 刃物を隠し持ってそうな冒険者は危ない。

 やたら周りを気にするのは犯罪者の性。

 金のない冒険者は非行に走る可能性が高い。


 エルの教えてくれた見分け方は、どれもごもっともだ。


 俺はエルの話を頭の片隅に入れ、周囲の冒険者達をまじまじと見た。

 うん。誰が良いのかわからん。そもそも、武器の状態についてとか俺は知らんし。


 てわけで、エルにパーティメンバーを見つけてもらおう。と、したのだが……



「あ、スライム姫だ!」


 パーティを組まないかと話しかけようとしたエルを見て、冒険者の一人が叫んだ。

 エルの知名度、恐るべし。徒歩1日もの距離があるエランにまで、エルの存在は知れ渡っているのかよ!


 ――と思ったらコイツ、何回かギルドで見たことある奴じゃん。

 確かギルドに数人しかいない、とってもお強い中級冒険者様だったっけか。


 掲示板前で偉そうにふんぞり返り、俺がギルドの顔役だ!って態度を取ってた奴だよな。

 で、たしか俺たちがオークを狩ったって聞いてえらく悔しがってたような。

 まあ彼が何を思おうがどうでもいい。


 だがどうでもよくないことに、彼に呼応し、周囲が騒然とし始めた。

 さすがにギルドの顔役ヅラしてるだけあって、彼は顔が広いようだ。


「スライム姫? なんそれ」

「なんだオンム、知らないのか。

 対人は無駄に強いくせに魔物を見ると倒れる、伝説の姫だぜ」

「何言ってんだ。そんな奴が討伐に参加しててたまるかよ。

 冗談キツイぜ」

「それが本当なんだよ。前のパーティを1日で追い出されてから、まともにクエスト受けずにいたんだけどよ」


 エルがたった1日でパーティを追放されたって。そりゃ初耳。

 だけどまあ、食うや食わずの冒険者社会ではそれが普通なんだろう。


「嘘だろ? そんな奴がなんでここに来てるんだよ」

「ところがどっこい、姫が突然パーティに入ったんだぜ。

 で、どうやったか知らんが、一昨日なんかオークを倒したんだぜ」

「ろくにクエストも受けてない奴が、いきなりオークだと。一体どんな奴と組んだってんだよ」

「相手は最近俺のギルドに現れたフレイて奴だぜ。そいつ、かなりヒョロいけど、魔力がギルドで2番目なんだとよ」

「うわ、ヤバッ! そんなのと組んだら俺ら、獲物全部持ってかれるじゃん。聞いといて助かったぜ」


 俺と組んだら、手柄を持っていかれる?


 ああ、そうか。

 俺は遠距離攻撃持ちだから、近接戦闘を行う剣士よりも攻撃が早い。


 そんな俺が一撃必殺の高火力を持っているとなれば、剣士が攻撃する前に獲物はすべて消し炭だ。

 そうなれば、俺と組んだ剣士はろくに獲物を狩れない。



 しかし、この流れはまずい。

 誰も俺たちと組もうとする人がいなくなれば、3人パーティが組めないじゃないか!


 いや、俺たちと組んでくれそうな冒険者が、1人だけいた。

 そう、選抜会場で見かけた、白魔導士ヒーラーの少女である。


 パーティにおける回復役には手柄という概念はないから、もしかしたら俺たちと組んでくれるのではないだろうか。

 少女に話しかけると日本では不審者呼ばわりされるか、良くてロリコン扱いだから心理的なハードルは高い。だがここは異世界だと俺は意を決し、冒険者の輪に混じっている彼女に話しかけた。



「すまん、そこの君。たしか、君は選抜で回復魔法を使ってた人だよな」

「そうだけど。ボクに何か用?」

「君は、俺のパーティに入る気はないか」

「入ってもいいけど」

「なら入ってくれると助かるのだが」

「わかった。じゃあボク、パーティに入るよ」


 ――リアル・ボクっ娘かあ。

 おまけに髪はエメラルドグリーン、顔立ちもGOOD!

 もし中学の友達の多部がこの場にいたら、完璧なボクっ娘に会えた!!とか感激して、ここは天国だ~~!!とか言いながら号泣するに違いない。


 おっといかんいかん、こんなことを考えてると、俺までロリコン・アニヲタ・ゲーヲタという、多部同様の救いようのない変態紳士になってしまう。

 以後気を付けねば。



 ともかく、ボクっ娘ヒーラーが二つ返事でパーティに入ってくれて助かった。

 入ってもらえなかったら、学級活動の班分けの時みたいな面倒なことに……


 いや何でもない。何でもないから!

 基本学校では浮いてた俺だって、友達ぐらい居るんだから。ほら、さっきの多部とか。

 え、高校の友達はって? そりゃ奥さん、受験勉強に打ち込んでたんだからいるわけないでしょ、そんなん!



「ところで君の名前は何ていうんだ」

「ボクはエニネア。ネアでいいよ」

「そうか、ネアか。俺はフレイだ。これからは、よろしく頼む」


 だが俺たちは知らなかった。

 理想のボクっ娘、じゃなくてネアのとある秘密を……

お読みいただきありがとうございます。

宜しければ、ブックマークや評価をしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ