9:ヒーロー側【意味が分からない!】と連動
妹の事は気になるけれど、私にはどうしようもない事だしと、眠って、次の日。父から言われたのは、スウェン様とケニアが結婚したのだと言う。だから、結婚のお祝いを用意しろと言われたのだ。メイドに言ったら、どうやらメイド内でも話がまわっていたらしい。昨夜、急遽荷造りをして出て行った為に、ケニアについていたメイドから皆に回ったようで、詳しく聞きたいと言う。
詳しく、と言っても、私も余り分からないのよね。
「王都観光を一緒にしているうちに、そういう気になった、ってお父様が言ってらしたわ」
「おめでたいことじゃないですか。あとはネルア様ですね。どうなんですか?実際の所は」
…私に矛先向けて来るの、やめてほしいかな…そう思っていると、顔に出ていたのか、呆れたとため息を吐かれた。
「まだ修道院で働くだなんておっしゃるんですか?騎士様、いいじゃないですか。王子様付の護衛騎士様ですよ。有望株!」
「…身分で、決めたくはありませんもの」
「そうなんですか?でも、騎士様、お嬢様にぞっこんだって聞きましたよ」
ぞっこんって。どこから聞いたのか聞けば、馬車留めや、門兵が見ていたそうで。
「…あれくらい、王都の方でしたら、どなたにでもするのではなくて?」
「そうなんですかねぇ」
そういうのって、土地柄がでるともいうし、他の方なんて知らない…スウェン様は同じ公爵という事で何度かあったことあるけれど…そういう雰囲気でもないし。近所のお兄さん的な感じに近かったから。
「…いい加減、領地に戻りたいわ」
「えぇ…騎士様はどうなさるので?」
「………他に良い人がすぐ見つかるのではなくて?」
「もう、ネルア様ったら…」
なんというか、昨日はちょっと、久しぶりに、こう…恋に恋する乙女っぽくなってしまったのではと思う。そう。結局は、一夫多妻制なのよ、この国は。きっと、ラクシュ様も、いろんな人に甘い言葉をかけまくるんだわ。そして、女の闘いが始まるのよ…嫌だもの。そんなの。だから、やっぱり当初の予定通りに修道院に行くべきだわ。
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「なんだと!?ちょっとお前、今すぐ手紙を書きますから、公爵に届けなさい!」
「それ用の者に渡しますよ」
「なんでもいいので、あ。ちょっと父を捕まえて来なさい。サイン寄越せと言って、ここへ連れて来い」
「はいはーい」
ネルアが公爵領へ戻るつもりである事と、当主であるラクシュの事を全く気にも留めていない、メイドとの会話を一字一句違えることなく伝えたら、案の定、当主がすごく慌てていた。珍しい顔が見れたと笑いながら、その当主の父である侯爵がいる書斎へと向かう。
そうしながら、ぽつりと一言。
「あのメイドじゃないですけど~ぞっこんだっていい加減気が付けばいいのに」
あの兄ぃの事だ。もし、本当にただの結婚相手としてしか見ていないならば、「そうですか」で、済ませる。それが…あんなに慌てて、婚約の手続きを済ませてしまおうとしている時点で、おかしいと気が付くべきで。
「さ~て、兄ぃはいつ気が付くのかなぁ」