7:ヒーロー側【なんだろう。かわいい、な。】と連動
馬車へとラクシュ様の手でエスコートされて、座るけれど…広い車内に、メイドが座っていて、その隣へと座らされた。これは、密室内に二人きりにならないよう避けられるものだけれど…最初、妹との3人になるはずだったけど…あ、そうか。妹共々、っていう場合もなくはないのか…
「そのメイドの事は気にしなくて構いませんよ。石だとでも思ってください」
言われた言葉にえ?と、思う。いや、まあ…気にはしてましたけど、だからって石と思えとは…
「人をからかって遊ぶのはおやめになったほうが良いかと存じますが」
メイドがそう苦言を呈する事は…いいのかしら。まあ、家によってそこら辺は違いがあるものだし、私についているメイドもこんな感じだから…いいのよね。軽い冗談って…冗談、の、つもりなの?
「妹様に関しては、お気になさらないでください。スウェン様は紳士的で優しいかたですので」
「…逆に、面倒をおかけしないか、心配ですわ」
「それも、大丈夫でしょう」
…ラクシュ様が大丈夫と言ったら、メイドが、ふ…と、鼻で笑ったのが聞こえたのだけれど…気にしちゃダメだ。うん。
「それより、王都観光ですが、ご希望はございますか?」
「いえ…王都余り来れませんし…来られたとしてもタウンハウスに滞在するだけですぐに帰ってしまっていまして、全くわかりませんの」
おはずかしい。と、そう言えば、正面に座ったラクシュ様が笑う。
「王都にも綺麗な庭園がありますが…公爵様のお屋敷で、綺麗な庭園を楽しませていただきましたし…買い物を楽しまれたことはございますか?」
「買い物、ですか。領地では、何度かありますわ」
「王都には様々な物が集まります。領地へのお土産としてもよいですし…いかがでしょうか」
「ええ、ではお願いします」
買い物かぁ。確かに日本と違って、その場所限定の物とかあるだろうから…そういうものを領地に持って帰るのもいいかもしれない。修道院で使う布とか、ボタンとかも、いいかもしれない。
屋台とかあるのかな。でも、今回は流石に屋台で食べ歩きなんてできない、よね。領地では、町娘の恰好をしてしまえば、そこらへんは大丈夫なんだけれど…
街につくと、馬車を降りた。馬車で市場を移動する事も可能ではあるけれど、小回りが利かないという理由からのようだ。
「結構歩き回ると思いますが…大丈夫ですか?」
「ええ…お気遣いありがとうございます。大丈夫ですわ」
こちとら領地で色々と駆けずり回っているので。それは言わずに黙っておくけれど。
「疲れたらすぐおっしゃってくださいね」
「ええ。ありがとうございます」
…ずいぶんとしっかりエスコートしてくれるつもりらしい。でも…男性がこんな市場とか、詳しいのだろうか。ほぼ第二王子様についているのだろうに。
「まずはどういったお店がいいですか?」
「…その…布とか、ボタンとか、みたいのですが…」
「大丈夫ですよ。ご案内いたします」
騎士として町の見回りもしてますので。と、言われて…そういえば、第二王子様は、騎士として活動して、その縁で…ジョセフィーヌ様と結ばれる事になったのよね。
なるほど、それなら街に詳しいのも納得だ。人込みでもみくちゃにされる事もなく、綺麗に人を捌いてエスコートしてくれるラクシュ様は…優しい人なんだなぁ。