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6:ヒーロー側【馬鹿な娘の末路?そんなものどうでもいい】と連動

 翌日の昼過ぎ。さっそく手紙が来た。王都観光への日時と、都合はどうかという手紙が。

 仕事が早い男は嫌いじゃないけどさ…気分が乗らない…でも、父が夕食の席で、みんながいる前で返事は出したのかというものだから、逃げられないし、それに…


「えーお姉さまだけずるい~私も行きたい!」

「そうよ、昨日も顔合わせもさせてもらえなかったじゃないの。ケニアも一緒に連れて行っていただけるようお願いいしなさい」

「そ、れは…許可を頂けるか、ラクシュ=ノア=ディベル様にお伺いしてみますわ」


 と、そういって、なんとか満足してもらえたので、良しとしよう。

 妹のケニアは…まあ、あれよね。服のセンスと、この物言いがなければ可愛らしくていいはずなのに。

 …うっかりひとめぼれして、ケニアと婚約してくれないかしら。そうしたら、私は修道院生活を送れるだろうし。婚約の打診という状態だから、婚約破棄とは違うけれど…まあ、似たような物だしね。

 …もしかして、実はこの世界が乙女ゲームの世界で、ヒロインは妹のケニア、とか?いや、ないな。役者と舞台が揃わない。この国は、共学というものがない。完全に男女別だし…そもそも騎士学校は王都にあるけれど、魔術学校は辺境にある。何故かというと、王都では魔術が使えない事と、辺境は外敵…他の国から狙われる可能性があり、防衛の為の装置もあるから。

 そこに魔術学校があれば、魔力持ちが勝手に集まる、という事で。

 だから、よくある攻略対象の、王子、騎士、魔術師、…双子とか隠密とか…そういうキャラが一緒に勉強に励む、なんていう状況が作れないのだ。


 うん、深く考えるのは良そう。私はあくまで将来に向かって進むのみだ。






 手紙を出せば、すぐに返事が返ってきた。せっかく領地からいらしたのですから、ご一緒にどうぞ。と書かれていて、ほっとした。よしよし、このままケニアにひとめぼれとかして結ばれてくれ。

 お待たせするのも悪いからと、予定の時間には馬車止めがある門の前で待つことにした。今日は、街に行くため、恰好は流石にワンピースだ。妹のケニアもそういう恰好をしているから、今日はかわいらしく見えるはず。

 と、思っていたのだけれど…おい、馬車が止まって出てきたラクシュ様に、お前が先に駆け寄るな!


「初めまして、ラクシュ様、私、」


 ああ!しかもなんて事。お名前を呼ぶなんて…ひえっ…表情抜け落ちたラクシュ様の顔、こっわっ!


「名前を呼んでいいとはいっておりませんが」

「そ、そうよ。ルーヴェリア様の…王族の騎士であられる方は、お名前をその方ににお預けしてらっしゃるの。申し訳ございません、伝えては、いたのですけれど」


 なんとかそう、取り繕う様にいうけれど…あ、よかった。ラクシュ様の顔が…笑ってはいないけれど、さっきの表情抜け落ちた顔じゃないから、まだマシ…


「だって、フルネームだと仰々しいでしょう?」

「そういう問題では」


 あああああああ!ちょっともう、お前黙ってて!仰々しいとかそういう問題じゃないのよおおおおお!

 どうしようかと内心あわあわしていると、馬車が走ってくる音がして、はっとした。一応馬車止めになっているから、すれ違う事はできるけれど…家によっては、挨拶をしなければならない。家紋は…ラクシュ様の本家である公爵様の家の紋だわ。爵位的には同じだけれど、どなたが乗っているのかにもよる…


「あれ。ディベルの…ああ、お前か。こんな所でどうした?」


 降りてきた方は、スウェン様だ。公爵様の九男。特に重要なポストについているわけではないから、位としては同等。だから、軽くカテーシーをするに留める。と、本家という事と、おそらく同年だからだろうか。気安く話し始める二人。


「これはこれは、ごぶさたしております、スウェン様」

「よせよ、今じゃお前の方が…おっと、俺がこんな口きいてたらだめだな」

「いえ。健やかそうでなによりでございます」

「ん?あれ。あー…ネルア嬢とケニア嬢じゃないか。さてはケニア嬢、またわがままいってついて行こうとしているな。じゃましたらだめだよ。ほら、俺が遊んであげるからおいで」

「え、でも…」

「どこに行く予定だったんだい?大丈夫、ちゃんとエスコートしてあげるからね。ほら、行こう」

「あ、ちょ…」


 なのだけれど…あっという間にケニアがスウェン様に連れられて、馬車に連れ込まれて行ってしまった。茫然としてしまったけれど、はっとしてラクシュ様に謝罪をする。


「大変、申し訳ございません。あの子に変わって謝罪を」

「いえ、貴方が悪い訳ではありませんしね…気を取り直して行きましょう」


 にっこり。と、笑うその顔は…本当に怒っていないっぽい…でもあの顔見ちゃったら、なあ…


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