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「…わたくしに、縁談、ですか?」
パーティーには王都にあるタウンハウスから通っていたのだけれど、パーティーが終わり、婚約者に選ばれなかったと妹が悔しがってきーきーと泣き喚いてうるさい馬車でなんとかタウンハウスに戻った、その翌日。めずらしく父に書斎へと呼ばれ、縁談が来ていると言われた。相手は、第二王子様の護衛騎士である、ラクシュ=ノア=ディベル様だという。
…接点、あったかしら?あるとしたら、あのパーティーの時だけれど、男性は第二王子様しかいらっしゃらなかったし。と、始終頭の中ハテナマークが飛び交う私を置いてけぼりに、顔合わせをする日が一週間後だと言うだけ言って、準備をしろという。
部屋に戻って、私についているメイドに話せば喜んでいるけれど…護衛騎士のラクシュ様の顔なんて知らないのだけれど。と、メイドに言ったら、メイドもよくわからないらしい。第二王子様と一緒にいる姿は見るけれど、皆王子様に目が行ってしまって、黒髪だという事しか覚えていないらしい。
「ただ、目の色が…第二王子様が、大層気に入っているらしく、良く褒めているとは聞きますね」
「そう…目の色…何色なのですか?」
「冴えわたる金、という話です」
金…冴えわたるというものがどういったものかわからないけれど…きらびやかな黄金、と受け取るなら…その色に近いもので、ドレスを用意したほうがよさそうね。基本、女性はパートナーの色を纏うものだから。まだ縁談のお話だけだけれど、そういうものなのだから仕方がない。けれど…本当に黄金の様にしてしまうと私の色には合わないし、それこそ成金になってしまうから、落ち着いた色がいい。
…それにしても、自分の護衛騎士とはいえ、目の色を褒めるって…まさか王子様、その気があるなんてないわよね…婚約者決めていらしたから、ないとはおもうのだけれど…あ。今そんな事考えている場合じゃなかったわ。
「そうね…それならば、お顔合わせの時は、黄色からベージュの間で良い色の布があれば、それにしましょう」
「かしこまりました。明日にでも布見本を持ってきていただきましょう」
そうして、急ピッチで作られたドレスは、とても落ち着いた…藤黄色だ。日の下では黄色に、屋内ではベージュに近い色だけれど、どちらで着用しても優しい色合いで、満足な出来だ。それに、王都の仕立て屋は手がいいし、仕事も早くて助かる。なんとかその顔合わせに間に合わせる事が出来、そして当日。父からは、天気がいいから東屋でお茶をと言われ…心底、この色にしてよかったと思ったものだ。