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第91話 愚か者

 

 ゴーパーが俺を守る為にキングの前に立ちはだかってくれていたが、巨大な身体から繰り出される鮮やかな、舞うような剣技によって、ゴーパーは倒されてしまった。

 上から斜めに切り下ろした刃はゴーパーに当たった直後に水平方向に変化し、もう一度。

 2回も攻撃を無効化する事が出来たが、水平に切った後、逆手に持ち替えた剣がゴーパーを下から斜めへと切り上げ、とうとうダメージを喰らってしまう。


「キシシ……ごめーん」

「十分回復出来たよ。【鉄人化(スティール)】」


 新体操みたいに綺麗な動きだった。ゴーパーの《運試(サイコロ)》というスキルも何回か発動していたが、結局はほぼ一瞬だったな。

 一瞬だったけど、その一瞬で10万ぐらいは回復出来た。【鉄人化(スティール)】も発動しているし、まだまだ時間は稼げる。


「《白紙(ホワイト)》」

「【俊敏(かけっこ)】」


 相手がアイテムを発動してきたのと同じタイミングで、俺はステージの中央まで走り出す。壁を背にして戦うのは得策じゃないだろうし、時間を稼ぐなら走るのも効果的だろう。

 走っている最中にチラッと観客席を見てみる。そこにいる人の数はかなり減っていた。この強風と豪雨だ。そろそろ身の安全が気になる頃だろう。

 これならそろそろ使っても……ただ、相手の《白紙(ホワイト)》の数も相当減ってそうなんだよな。


 俺は全力で闘技場を駆け回っていたが、身体の大きなキングは当たり前のように足が早く、雨で溜まった水を跳ね飛ばしながら地面を蹴り、バネでも入ってんのか、って思うぐらいにビュンビュンと近付いてくる。

 持久走は得意だけど短距離は苦手だ。そんな訳ですぐに追い付かれ、「【戦車(チャリオット)】」というスキルを使われる。


 キングは走りながらブンブンと剣を斜めに振り回す。走る速度も上昇していて、攻撃をモロに喰らってしまった。何度か無効化する事も出来たが、それでも18万ダメージを受けた。

 残り体力は大体30万ほど。体力が増えているお陰でなんとかなっているが、運が悪ければきっとすぐに終わる。回復のペースも全然追い付いていない。ちょっとの失敗や不運でダメになる。でも、勝てそうではあるな。


「【鉄人化(スティール)】」

「《白紙(ホワイト)》」

「【召喚】」


 俺はローズを召喚した。もはやなりふり構っていられないし、ローズじゃ勝てないと分かっていたとしても、時間を稼いでもらわないと。


「ごめん」

「健人。気にしないで。私は信じてるから」

「【隠者(ハーミット)】」


 キングの影が動き出し、ローズに襲い掛かる。しかし、彼女は自らの身体から湧き出る悲鳴と共に【波紋化(ウェーブ)】を発動し、その影を雨粒と一緒に吹き飛ばした。

 もし本当にヤバくなったらストームをここに呼び戻そう。いや、その前に【破壊雷(ハカイライ)】か?


「健人!!」

「分かった!【鉄人化(スティール)】」


 ローズは【天変地異(リバース)】とかいう、周囲を波動でぶっ飛ばすスキルを発動する気だと思った。

 だからあの時と同じように、俺は自分を鉄人にして、ダメージを喰らわないようにする。流石のキングもアレは喰らうんじゃないか?


「【剛毅(ストレンジ)】」

「ウアァァァ!!!【天変地異(リバース)】!!!」


 ローズの周りの雨や水溜りが吹き飛び、その勢いのまま遠くにある闘技場の壁に穴を開ける。

 僅かな時間ではあったが、雨粒が俺たちの周囲から消えた。しかし、それほどの威力があったにも関わらず、キングはまるで何もなかったような顔をして、ローズに【直撃(ストライク)】を放つ。

 すると、一撃でローズは倒れてしまい、俺の元へと戻ってくる……というか攻撃力高すぎないか?肉体の大きさもステータスに影響を与えるのだろうか?


「ごめんなさい……勝って」

「……」


 一言返したかったが、今の俺は鉄人になって豪雨に超打たれ続けている。キングも雨に打たれているのでスタミナは削られているはずだが、まだまだ全然元気だ。うーん。

 持久戦は得意だ。それに、この勝負は長引けば長引くほど俺に有利なはずだ。しかし、恐ろしいほど強いキングを見ていると、この痛い雨すらも無意味なのではないか?と思えてしまう。


「もう無駄だ。《白紙(ホワイト)》」

「【雷脚(ライキック)】」

「それも無駄だ!!抵抗するのは止めろ!!」


 空中に出現した雷の脚を片手で受け止め、それをどこかに投げ飛ばす。どこかで見た光景だ。

 相手はイライラしてきている。キングの表情は今までよりも険しくなっていて、声も怒号のようになってきている。

 やっぱり向こうとしても、このまま白紙(ホワイト)を使い切ってしまう事を恐れているのか?


「【鉄人化(スティール)】」

「だから……だから!それを止めろと言っておるのだ!!!《白紙(ホワイト)》!!」

「うーん、【俊敏(かけっこ)】」


 相手がアイテムを使っている隙に出来る事が段々と無くなってきているのを感じる。アルダードを召喚してもこの豪雨の中じゃ時間稼ぎになるのかすらも怪しいし、攻撃をしてもキングの大きな身体にはあんまり意味がない。

 だからと言って何もせずに突っ立ている訳にも行かないので、【俊敏(かけっこ)】を発動したが、すぐに追い付かれてしまう。

 スキルの使い方が間違っているのだろうか?全然相手の方が早いんだが……というか、足元の水が行き場をなくして溜まり続け、走る事を困難にしている。

 超大嵐に闘技場の排水機能が追い付いていない。


「【脳震(グラー)】」

「うぉ!コワ!」


 前にメイルさんがシリンを倒す時に使っていた、脳に向かって思いっきり拳を振り下ろして相手を気絶される技を使ってきたが、たまたまゴーパーのスキルで無効化した。

 これ当たってたらシリンみたいに頭の上にヒヨコがピヨピヨ飛び回っていたのだろうか?危うい。


「【鉄人化(スティール)】」

「……分かった。お前がそのつもりなら我もそうしようか。【剣】」


 自分の顔に剣を近付け、キングは何かをブツブツと唱えている。前にこれをやった後、【審判(ジャッジ)】とかいう技を使ってきた。

 今回もそうなのだろうか?大技を使う為の前準備として【剣】を発動しているのだろうか?

 次に白紙(ホワイト)を相手が使ってきたら、その時はどうしよう。

 走っても追い付かれるし、攻撃しても弾かれる。このままずっと同じ事を繰り返すというのなら、無駄に抵抗せずに、ガードをしてダメージを減らすのが1番良いのかもしれない。

 白紙(ホワイト)の後はガード……白紙(ホワイト)の後はガード……


「《白紙(ホワイト)》」

「ガード!」

「そんなので防げるか……【審判(ジャッジ)】」


 雨が降りしきる、降りしきり過ぎている中で、キングは自分の剣を高く掲げる。カッコいい。

 こんなに近くでキングの技を見れる機会なんてそうそうないだろうから、もしかしたら貴重な体験をしているのかも、とか思いながら、その剣先を、雨に濡れた剣をただしばらく眺めていた。


 いきなり振り下ろされた剣は、溜まりに溜まっていた地面の水を打ち、キングの身長に届くほどの水柱へと変化させた。

 ガードをしていた俺だが22万もダメージを喰らってしまう。本当に馬鹿みたいな攻撃力だ。

 前は何にもしてなかったから60万ぐらい喰らったけど、ガードしててもこんなに喰らっちゃうなんてヤバい。


 俺の残り体力は20万ほどで、既に半分を切っている。しかし、もうすでに相当な回数白紙(ホワイト)を使わせている。このままいけば勝てそうだが、本当にキングが持っている白紙(ホワイト)の数は、10個ぐらいなのだろうか?

 これ20個だったら俺は負けちゃうんじゃないか?

 俺はギャンブルをしているのかもしれない……ちょっとカマかけてみようか?体力を22万以上に戻す為の時間稼ぎもしたいし。


「もう無いんじゃないか?白紙(ホワイト)

「……お前は馬鹿だ……愚か者だ……」

「え?【鉄人化(スティール)】」

「無駄だ、無駄だ……無駄なんだ!!!お前がやっている事は無駄だぁ!!《白紙(ホワイト)》!!!!」


 どっちだ?この反応はどっちなんだ?

 もう残りの数が少なくなっているから焦って感情的になっているのか、それとも、本当に俺のやっている事が無駄だから怒っているのか、どっちなんだ?

 ただ、明らかに相手は動揺している……観客も雨で視界は悪いが居ないように見える。そろそろ【破壊雷(ハカイライ)】を使う時なのか?



読んでいただきありがとうございました!!

何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!

ランキングに乗りたいのでブックマークや評価などしていただけると嬉しいです!他の人に広めてもらえたりなども嬉しいです!


ブックマークや評価等とても嬉しいです!ありがとうございました!

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