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第85話 キングの証言

 

 街の中で冒険者同士が戦ったのに何もないなんて事があるはずがなくて、アーローさんから「早く事務所に来てください」という連絡が入ってきた。

 行きたくねぇ、けど行く以外にないよなぁ。背中に5トントラックを背負った気持ちで転移(テレポート)し、事務所の前まで移動すると、そこに沢山の警察様がおりましたとさ。おしまい。


「君が羽山健人君だね。暑までご同行願おうか」

「は……はい。分かりました……」

「ダメじゃないか。街中であんな事したら」

「はい……確かにそうです……申し訳ない」


 返す言葉もないまま、俺はパトカーに乗


「あの!ちょっと待つので!」

「と、トリガーラッキーさん?」


 もう少しで出発するという時に、事務所の中からトリガーラッキーサマが出てきた。あぁ、救世主、神様……ありがとうございます……


「なんだね君は。なんのつもりだ」

「こちら大事な証拠なので。羽山健人とキングが例のビルで話しているところなので」

「な、なに!?そんなに大事な証拠……ご協力感謝いたします」

「ネットで見つけたので。知ってる人は知ってますよ」


 ビルの中でキングと俺がしたやり取り。それが残っているのなら、そして、それが多くの人の目に触れているのであれば、なんとか上手い事行くかもしれない。

 力勝負になるのかと思ってたらこういう感じか。てか、トリガーラッキーさん居るなら俺たちは無敵だ!


「それではお勤め頑張ってくださいなので!」

「え!?結局ダメなんですか!?」

「私はこれで失礼しますので!私は私の仕事をやるだけです!」


 利用された?今までずっと利用されていた可能性?

 そんな不安を感じながら俺はパトカーに揺られる。前にも警察署行った事があるが、しかし動揺は底知れぬ。まさかこんな事になるとは。

 俺は国家に反逆したとしても約束を……そうか……社会や秩序が無くなればモンスターも自由に生きていける……危ない危ない。

 このままだと危険思想に染まってしまう。誰か助けてー。


「キシシ。大変な事になったな!」


カジノから一時的に戻ってきたゴーパーがそんな事を言う。大変過ぎるよ。本当……


「私語は慎むように」

「大丈夫なのー?羽山健人ー!」

「君、自分がどんな状況にいるのか分かってるのかね」

「申し訳ありません。召喚獣が」

「ちゃんと管理しなさい!そんなんだからこんな事件を起こすんだろ。全く」


 ムキー!国家権力め!

 行き場のない怒りを抱えながら、俺は前と同じように事情聴取されていました。前は有名冒険者という事で本来よりも早く帰してくれたみたいだが、今回はそうもいかないらしい。


 数日の間は、警察署内にある檻のような留置所の中で静かにしていた。侘しい気持ちだ。

 中から外の情報を得る事は出来ず、ひたすら同じような事を繰り返して話すだけ。時々威圧的に迫られる事もあり、恐ろしくも思う。

 俺は、ただただただただ正直に話す。記憶が曖昧なところはゴーパーとかアルダードが話してくれたりもした。証言って召喚獣でも良いんだ……とか思った。使えるかも?とも思った。

 というか、普通にスキルが使えたので、転移(テレポート)で逃げられるような状況だった。良心的な人間で良かったね!俺。


「おい。もう外に出て良いぞ」

「え?本当ですか?」

「あぁ、もう外が大変な事になってるんだよ。お前を解放しろってな」

「へ?」

 誰がそんな事を?

「デモだよ。ネットにお前とキングのやり取りが上がってるだろ?それを見た奴の中でお前は単なる正当防衛だった、って主張するのが出てきてるんだ」

「そのお陰で?」

「それだけじゃないぞ。キング自身が自分から仕掛けた、って言い出したんだ。それに、パーティーの実情に付いても話してくれた」


 キング?アイツが?

 話は出来そうな相手だと思ってたけど、まさかここまで協力的な人だとは。直感ってやっぱり当たるんだな。

 狭くて冷たい留置所の中で、何度も今の状況に付いて考えた。ついでにどんな社会にしたいのかも考えていた。

 やべー。って思う時もあったけど、召喚獣が居てくれたからなんとか頑張れた。あと数ヶ月この場所で過ごさなければならないってなってたら、俺は復讐したいと思うようになっていただろう。これはお互いにとって得だな。


「使っていいぞ。転移(テレポート)。警察署の前は人で一杯だ」

「本当に良いんですか?」

「疑心暗鬼になるのも分かるが、もう許可は出ている」


 そう言われたので、俺は事務所へ行く為に転移(テレポート)を使った。すると、大きな人だかりが出来ていて、みんなが俺を見た瞬間に歓声を上げる


「おめでとう!ありがとう羽山健人!」

「あんな悪い奴らに負けないでー!ヒーロー!」

「君のお陰で悪事が暴かれたんだ!少女を救ったのは君の勇気だ!」


 ありがたい……と思いながら、俺はみんなに手を振って事務所の中へと戻っていく。

 ファンとの交流を持つ機会なんて今までなかったから、こういう普通の冒険者が体験するような事が非常に新鮮だ。

 俺がやってる事は間違いじゃないのかもしれない、と思う。しかし、俺はみんなの為に生きている訳じゃない。

 俺もキングみたいにみんなを失望させてしまわないか心配だ。


「お帰りなさいなので」

「あ、アーローさん」

「大変でしたね。お勤め」

「いやいや、大変ではありましたけど、数日だけだったので」

「しかし大変なのはこれからですよ。実は色々ありましたので」

「色々?」


 この数日の間にも世界は変わっているらしく、アーローさんは椅子を指差し、俺に座るように無言で示した。

 もー!もう良いよー。いや、でもこれが世界を変えるキッカケになるなら、もうちょい頑張ろう。うん。


「まずはブラックさんからお礼が来てましたよ?裏での活動が上手く行きそうなんですって」

「へぇ」

「カジノに金蜘蛛を常駐させる為に必要な裏工作が出来たみたいですよ。警察的にも『始まりの大地』に集まる冒険者には頭を悩ませていたみたいなので」

「成功したんだ……」

「そして、キングが証言した事によってハットの立場が危うくなっているそうですので。次の権力はあの人の物かもしれませんね」


 欲しい物は全部手に入れるつもりだ。あの人も恐ろしい。

 ただ、俺としてはブラックさんが権力を持ってくれた方が理想の社会に近付く事が出来るから助かる。俺も悪どくブラックさんを利用する事にしよう。


「そして、トリガーラッキーさんの提出した案が正式に承認されたそうなので。だから、街中で召喚獣が仕事をしている所が見られるようになると思いますよ」

「あ、そっちも?この数日で?」

「前々から承認に向けて努力されてきた物なので。いきなり湧いて出てきた物ではありませんよ?努力の末です」

「へぇ……そうなんですね」

「そして、最後に大事な話ですので」


 シリアスな面持ちになるアーローさん。もうお腹いっぱいだよ。これ以上どんな話を、問題を抱えないといけないんだ。

 人生に嫌気が差すが、ギリギリローズとの約束のおかげで頑張れる。これ、愛なのか?


「キングが貴方と一対一で戦いたいと申し出てるそうですよ。闘技場で真剣勝負がしたいそうです」

「真剣勝負?なんでですか?」

「さぁ?私にも分かりませんので」

「なるほど……」


 だから俺に有利な証言をしてくれたのか?純粋な闘争心からそれを申し出てくれたというなら、俺はありがたいが、もし仮に裏があるとしたら?

 知るかー!一応、今の俺にとっては恩人(?)みたいな人でもある訳だし、ここはこっちが折れよう。どんなリスクがあるのかは知らんが、それでも向き合ってやるよ。キング!


「それ、受けてください。俺も戦いたいです」

「そうですか。それなら連絡しておきますので」


 付けられなかった決着をそこで付けよう。もう覚悟は出来てるんだよ。コッチには守らないといけない約束があるんだ。


読んでいただきありがとうございました!!

何かトラブルが起こらない限りは毎日投稿をしていこうと思っているので、次話もよろしくお願いします!18時頃更新予定ですよ!

ランキングに乗りたいのでブックマークや評価などしていただけると嬉しいです!他の人に広めてもらえたりなども嬉しいです!


ブックマークや評価等とても嬉しいです!ありがとうございました!

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